絵本『まっている』

今回取上げる絵本をは像力を持ってどこまで読み解けるか、感じることができるかを問われるグレードの高い絵本です。なぜなら五感を研ぎ澄まして想像する力と認知した情報や経験を通して言葉や絵から読み解こうとする思考力、未経験や未知識を知りたいという意欲を活用して初めて楽しむことができる絵本です。もし手にして読んで感性に触れないのであれば、それは前述した何かが不十分なのだろうと考えます。

村上康成氏の絵本の特徴はシンプルなデザイン的絵の中に短い言葉や文章があり、その言葉を通して存在する世界の奥深さを感じ、考え、体験ができることにつきます。

私が個人的になぜ好きなのか・・・それは村上氏の意図する余白、1センテンスの言葉、シンプルさを追求した絵に見る事ができる『間』が私の想像力を掻き立て、知識や経験を織り交ぜ堪能することが存分にでき、尚且つ自分自身の記憶という宝箱を開けて作品の中に自身を投影できる絵本だからでしょう。

幼い頃に親が与えたくれた環境に感謝し、子供を育ててからは思い出の中に愛らしい姿を蘇らせ、まだ見ぬ孫と体験するであろう楽しさに思いを馳せることができる絵本の世界は、世代を超えて受け継がれるべき心の栄養そのものです。

では前置きはそれくらいにしてこの絵本の魅力を紐解いてみましょうか。

中表紙の緑一色で樹木生い茂る森林をイメージし目を閉じ耳を澄ませましょう。日常の生活の中でこんな経験をすることはとても新鮮で子供達の五感に多くの刺激をもたらします。

どこからか聞こえて来るアカショウビンの鳴き声。全身赤く、これまた大きな赤いくちばしを持ちこんな鳥がいるのかな?調べてみようと思うだけでもよいのです。野鳥の自然観察会などに参加すると鳥に関心が生まれ読むことができるでしょう。

この絵本の全頁を通して自然界に存在する『待つ』ということの奥深さが描かれ、蜘蛛や花、蝶や蜂、川の中や土の中海や草原のそれぞれの場所で描かれています。

日々の忙しい世界に生きている私達に、自然界の営みはゆったり、のんびりと待つことが当たり前のように行われ、それでいて力強く生きることの意味をぐっと掘り下げることができる一冊です。今の時代だからこそ人間も自然回帰を行うべきだと教えてくれているようです。

このように限りなく読み手の数だけ捕らえ方ができるような絵本は、子供達が楽しもうとすると経験や知識が必要となります。実体験で経験値を上げ、絵本で様々な知識や思考を上書きし多くの引き出しを持てるように育てましょう。

いろいろなスタイルの絵本がありますが、繰り返し読むことでいろいろなことが上書きされることや深く考えさせてくれる絵本、感動で心が震える作品、楽しくて何度読んでも笑ってしまうものなどいろいろあるでしょう。いろいろな切り口の絵本の世界を子供の感性に触れるためにどうすべきかをこの絵本で感じていただけたらと思います。


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