偉人『パブロ・ルイス・ピカソ』

ピカソには人生で何度も衝撃を受けている。小学生の頃アフリカお面のような人間の顔に『なんだこれは!』と衝撃を受け、高校時代には国際通りの球陽堂で彼が15歳で描いた写実的作品に驚き、社会人になりご縁会って川崎の岡本太朗美術館を訪れグッとピカソに近付いた。そして子供に絵画絵本を読み聞かせ彼の名前が寿限無のように長いことを知り、子供と向き合う仕事を通してまた彼の創造力の凄さを知ったのである。

パブロ・ルイス・ピカソ・・・鬼才というべきスペイン生まれのパリで活躍した画家である。

彼の作品は一度見ただけでは理解しがたく、そのインスピレーションの源泉は友人であり愛した人々であったと彼自身が語っているが、その土台は彼の育ちにある。

父は絵画教師でその授業を覗いてはデッサンや油絵の技法を学び、受験資格の無い年齢であったが受験し見事に合格を勝ち得て特例入学をし、知識と技術を身に付けた。その後マドリードの王立美術学校へ進むも退屈な授業に耐えられずプラド美術館へ通いつめた。そこでエル・グレコの華麗な色彩感覚や炎のように揺らぐダイナミックな人体表現に大きな刺激を受け、19歳でパリへと向かう。読み書き計算はからっきし駄目で彼のインスピレーション(創造力)の源泉は幼年期の描くことでスキルアップしていったのだ。

しかしピカソのような非凡な画才が無くとも子供は本来インスピレーションに溢れている。なぜなら乳児の遊びの中にその多くの原石が存在することを私は日々見ているからだ。その一方でそのインスピレーションの原石が(創造の芽)がいつの間にか姿を消している子がいる。甚だ残念であるがその多くは親が遊びを教え込もうとあの手この手を使って掻き消しているのである。

では子供の持つ本来の創造力を維持させ更に質の良い創造力を身に付けさせるにはどうすればよいのか。今回はピカソの創造力とそれを身に付けさせる6つの事項をリンクさせながら話を進める。

創造力を身に付けさせる6つの事項の1つ目《実行する・チャレンジする》

ピカソが生きた時代は美術館に作品が所蔵されるために多くの画家が自分自身の絵画を生み出そうとし、彼もまた自分だけの表現を捜し求め一日に何時間もひたすら描き続けていた。生涯創作した油絵1万点その他の作品を合わせると14万点とも言われている最多作品を有する画家でもある。一つの作品の習作が100枚以上と言うから驚きだ。ピカソは誰もが思い描くだけの想像で作品を表現するのではなく、描くことを繰り返し行い『つくる』創造力で本物の画家になった凄さがある。しかし彼のような突出した才能が無くとも人間は想像から思いついたことを創りあげる実行でピカソのような生き方はできる。

例えば大きなブラウン管を有するテレビが薄型で壁に取り付けられるようになり、持ち歩きに不便な携帯電話がコンパクトになればいいと誰もが口々にしていた時代から、改良を重ねてきた技術者らの創造力の駆使により超薄型のアイフォンとなり、それがカメラやビデオ機能のみならず音楽が聴けて、気付けば支払いまでできる1台で何役もこなせる画期的なものに進化している。薄ければいいな、コンパクトであればいいな、これもあれもと誰もが考えていたことが、誰かの手によって実現する。これは想像から創造を生み出したピカソ級の創造力である。

これからの時代を生きる子供にはどんなことでもどんな形でもいい、先ずは行動し研究し、失敗を恐れず思い描いたことを貫くことが必要なのだ。だからこそ閃いたことを大切にし小さい頃から手や指を使い体を動かし小さな科学者、実験者、創造者として成長して欲しいと願う。


2つ目《自由な表現を行う、既成や固定概念にとらわれない》

ピカソの作風は生涯を通して変化し時代によっては作風はガラッと変わり、写実的な作品、青の時代、バラ色の時代、キュビズム、シュルレアリズムなど富に富んでいる。

新しい自分なりの作品を生み出そうとひたすら描き創り新芸術を完成させた。しかし自信に溢れた新しい芸術は画壇や仲間、一般人にも受入れられず落胆したが、ピカソの固定概念に囚われない創造溢れる作風を認めた人物二人が彼を後押しすることになる。たとえ否定されようとも自分自身の中にゆるぎない思いで打ち込んできたものはやはり本物だと本人自身が分かっている。だからこそ突き通すことができるのだ。

私達親は子供が何かを表現するときにどうしても経験上の固定概念を押し付けがちになり、子供の自由な表現を遮りがちである。どんな表現をしたっていいじゃないかという捉えができないのである。先ずは子供が何を感じ表現に至ったのかを知ることが大切である。ありのままを受入れることは子供の自由な表現を創造性に結び付けることになるのだ。


3つめ《自信をもって行動しやり抜く》

『アビニョンの娘たち』で新しい彼の作品は認められず、ピカソを唯一認めた画家仲間のジョルジュ・ブラックと共に新しい道へと進んでいく。そして斬新な彼の作品はロシア・アメリカ・ドイツなどで売れていった。

ピカソの根底に流れているのは父から受け継いだ才能と芸術的環境とその非凡な才能を裏付けた少年期の自信がある。どんなに否定的評価を受け心折れた時期があったとしても幼少期の成功体験は自己肯定感を生む。またこの肯定感は簡単に築けるものではないが一度獲得すれば生涯失うことは無い。同時に自信をもって行動しやり抜く力はも早々簡単に備わるものではない。いろいろな意味でじっくりと育むべきものである。

子供に自信をつけさせるためには成功体験と失敗体験の両方が良い方向に作用し、『自分はできるんだ、これでいいんだ、次に進もう、もう一度チャレンジしよう、絶対にやり抜こう』と思えるような言葉掛けや態度で子供と接することだ。


4つめ《体験・経験・知識の獲得》

ピカソは祖国での幼年期の成功体験、生きてきた激動の時代、友人や愛する人から得たインスピレーション、死や戦争、祖国への思い、貧しき洗濯船での芸術仲間との交流、優雅な晩年全てを芸術に活かし花開かせた。

では私達親は子供にどのような体験や経験、知識を与えるべきなのか。私はこう考える。

乳児期は何を於いても愛情である。それなくして人格形成は成り立たない。愛されたという経験こそが全てのものを獲得する土台になるのだ。そして身近なことから興味を持たせ、そしてあらゆることに関心を持たせるように広げ育て、着実に獲得できるような日常生活の経験をたくさんさせ、社会に目を向けたいろいろな経験や体験を積ませることだ。特に手や指の器用さは是非獲得して欲しい。また同時に体を動かすことも必要である。このことは1つ目の行動することに結び付く。


5つめ《どうしたいか、どうなりたいかを思考させる》

ピカソの人生や作品を見ていると類稀なる才能はあったがそれだけで大成したとは思えない。画家の初期時代は新しい自分なりの表現を模索していた.。それ以降の作品は『自分自身がやりたいこと』を追求しどうしたいか、どのように表現したいかを考え描き創りそれを実践していたことで作品が変遷していったと思われる。飽きっぽい彼がなぜ絵画だけは数時間もぶっ通しで描けたか。これは育ってきた環境だ。彼が最初に覚えた言葉は「ピス」スペイン語で鉛筆を取ってくれと言うラピスである。鉛筆を手に描くことを幼い頃から集中して行っていた。

そう私達親ができることは子供に「どうしたいの」「どうなりたいの」と問うことではなく、子供が安心して集中できる環境を整え、集中できる何かを見つけられる選択肢を与えることだ。ただし闇雲のに何でもさせればいいということではない。子供の性格や素質、関心ごとを見極める必要がある。そして好きなこと夢中になることを深めていけば自ずとどうしたいか、どうなりたいか、何を欲しているかを子供自身が決定していく。


6つめ《良き理解者の存在》

彼の奇抜で不評だった作品には理解者が二人いた。同じ芸術家で彼と共にキュビズムの推進者となったのジョルジュ・ブラックと彼の作品を世界に高額な値で売り捌いた画商ダニエル・ヘンリーである。時代を先取りし過ぎた画家を本物の画家であると見抜いたといえる。

では親として子供の良き理解者となるということはどういうことであろう。

子供が乳児であれば手助けが必要なことばかり、1歳を過ぎれば補助をしながら成功体験を積ませ、2歳を過ぎれば子供自身でできるように補助をここぞという時にだけ行い、3歳以降はからは見守ることだ。本来子供は自由な発想でいろいろな創造性発揮していく。しかし環境設定の不備で経験が少ない場合や過度な親の関わりで自由に行動できない子がいる。受身ではなく自分の思い描くことを形にできるように見守ることも親の責任である。

また独創性を親が追及するあまり模倣や真似を許さないという場合もあり残念に思うばかりである。日本がアメリカの猿真似といわれた時代から日本人ならではの発想で多くの優れたものを開発している。真似から多くのことを生み出すチャンスが存在することも親は忘れてはならないのだ。

創造力とは何か一つをさせたから身に付くことではなく、経験・体験・実行させ、関心を持たせ伸ばすことで総合的にいろいろな力が関係し花開く。そしてかなりの時間をかけて育まれるものである。じっくり、ゆっくりとした時間の中で子供がどう考え、どう感じ、どう実行しているのかを自信の手を止めてでも観察し、子供がじわじわとした実感を得られているかを見極め、共にその感覚を共有し感じてあげることが親の役目だと考える。レッスンを受けている方なら私がお子さんを凝視している様子がお分かりだと思うが、まさにその時私は子供の行動の中に創造力や感じ方、発達などの総合力を見極めようとしているときなのだ。

是非親の創造力を発動して子供が自由に羽ばたくために何をすべきかを考えて欲しいと願う。


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