絵本『梨の子ペリーナ』
今回の絵本はイタリア民話を取上げます。この作品にはありとあらゆるエッセンスが含まれています。貧しき少女のシンデレラストーリー、魔女の宝物を王様の命令で取りに行く理不尽な冒険物語、心優しき少女が苦しみに喘ぐ人や物を開放する精神性のある一面と盛りだくさん。
ただし主人公ペリーナの感情表現的内容は少なく淡々と物語が展開されるため、思考と読解力が求まられます。小学生になってからも繰り返し読んでみることをお勧めします。
農民に課せられた梨の年貢、不作に喘ぐ父は梨のかさを誤魔化すために娘をかごの中へ・・・そこからこの物語は始まります。
初めて手にするとどんな物語が広がるのかわくわくしながら読み進めることができます。しかしこの物語を深く読み進めようとするならば想像力を最大限に発揮しなければなりません。少女の素直さ・優しさ・ひたむきさ・人を信じる心・誠実さ、それらに相対する要素の不平等・理不尽・人の妬み・悪意・偏見・排除・苦しみなどに子供が子供の次元で気づくことができるかによって登場人物の気持ちを考えることができるようになります。
日本人の感覚では表現し難いグロテスクさや怖さ、おどろおどろしさがあるものの酒井駒子さん特有の世界観で負の要素が全て浄化されてハッピーエンドで終わる世界観を美しくまとめている作品です。どこまで掘り下げて読解ができるのか楽しんで欲しいものです。
0コメント