提案『季節の言葉を手繰り寄せて』

子供は肌の感覚を通して真っ先に暑い寒いを感じる感覚的なものとして季節を感じ始めます。しかしその感覚が季節概念として理解でるようになるのは、周りの大人の働き掛けに大きく左右されます。

日本には春めくという言葉があります。この『めく』にはそのように感じられるという意味があり、日本の穏やかな気候が生み出す柔らかな季節感をこのような言葉で先人たちは表現していました。長い年月を重ね人から人へと口伝えで受け継がれた言葉が今も尚息づいている日本語の美しさや日本の四季を取り入れた豊かな生活を身につけないのは大変勿体ないことだと考えます。

冬の朝、冷たい水に声をあげていた子供が「お水冷たくないよ。」と話す時期が来れば「そうだね、もう水が温んできたね。春がやって来たかもね。」「春めいてきたんだね」と春を感じる会話を楽しむことができます。子供の季節感を手繰り寄せるのは、やはり身近にいる大人なのです。

万物の生命がほとばしるのが春です。勢いよく飛出し、沸きあがる力強さを感じる春を子供達に多く与えることを望みます。


この仕事をしていると子供が大きく成長する季節は夏だということを強く感じます。日本古来から夏は万物が大きく成長し広がり伸びると言われています。6月の水無月は長雨に始まり、7月の文月には梅雨明けの爽やかな気候で木々は緑葉の色を鮮やかにし勢いよく茂り、8月の葉月は強いぎらぎらとした日差しが強くなる季節で自然の営みも活発化していきます。私達人間はその自然界の中の一部の歯車として力強く成長しているのかもしれません。


魅力ある夏を取り入れた遊びや行事、伝統文化がたくさんあるのもまた夏です。梅雨には長靴と雨傘で雨を楽しみ、七夕、海水浴、潮干狩り、夏祭り、お盆、虫取り、花火大会・・・とにかく暑い日でも元気に動き回る子供達の姿は自然の摂理にピタッと当てはまっているのです。子供の経験値はその子の意欲や感性、学習や運動あらゆる力に正比例していきます。経験を積ませるほど生きる力が強くなり、4つの季節の中でも夏はその成長がグンを抜いています。


秋は空気がひんやりとし始め夏の終わりに寂しさを感じていく季節ですが、しみじみとした情感を育てるのが秋です。植物や昆虫の世界も、日の長さや太陽の暖かさ、空の雲でさえも夏とは明らかな違いを視覚で捉えることができます。

秋の夜長に月を眺め、虫の声に耳を傾け、草や山も色を変え、万物はそれまでに育ててきたものを集め実らせ熟成させていきます。子供達もまた夏の疲れを癒すかのように眠気が出てきて身体を休めるようになり、レッスンで眠たいと話す子供達が増えるのも秋という季節ならではのことです。

また子供の情感を最大限に引き出せるのも秋。何気ない風景や光景、自然の中に物悲しさや切なさ、儚さを知り優しく慣れるのもこの時期で、全てのことが心に深く染み入るようになり、静かに自分の内性へ気付き成長していく心の成長期でもあります。心の豊かさを育てるにはこの秋という季節を逃してはなりません。

『読書の秋』という言葉がありますが、これは中国・唐の時代の漢詩に由来します。暑い夏から読書に適切な気温の秋には、明かりを灯し読書するのに適しているという内容です。日本でこの言葉をいち早く引用したのが文豪・夏目漱石です。秋の読書週間になると夏目漱石の三四郎が書店のメイン場所に置いてあると、この書店の書店員さんはこの言葉の意味を理解しているのだと深読みしてしまいます。話が脱線しそうなので戻すと、子供達が夏の間に体験したことは、秋の季節に経験値を集結させ身に付けるための整理期間であり、収穫させて自分自身の英知にさせるために書物を読みませ、次の成長期に移行するための知性の充電期でもあります。これらの季節は子供の成長と自然の摂理に適っているため実践した子供は大きく成長していると感じています。もし孫が生まれたら絶対一緒に楽しもう、実践しようと考えている行動のひとつでもあります。


四季の集結・冬、万部が終わり蔵うときです。蔵うと書いて『しまう』と読みますが、春から秋までに経験したことや得たものをしまっておく、修めるということになります。厳しい冬を乗り切るために得たものを定着させ、次の春までにじっくり育てて待つ季節です。

雪の降らないここ沖縄では子供達は雪に対しての憧れを抱く子が多いものです。旅先で雪を経験することも出来ますが、雪に埋もれた生活をしないと本当の厳しさや美しさを感じらることはできません。しかし絵本を通して冷たく美しい自然から与えられる言葉を想像することはできます。粉雪舞う、星冴える、霜柱、根雪、樹氷・・・たくさんの言葉を知りいつの日かその想像が現実になることを期待しつつ深めてほしいと考えます。

季節を手繰り寄せる方法は考えれば考えるほどアイデアは尽きないものだと考えます。実際に自然の中に身を置いて経験すること、絵本の世界で想像すること、童謡で季節を歌うこと、行事を通して感じること、旬の味覚を味わうことと方法はいくらでもあります。

その季節を感じるためには言葉掛けが重要なことは先述した通りです。大人が交わす季節感溢れる言葉を子供は耳にし、語りかけられる季節の言葉で子供達の季節に関する言葉や情感が育ちます。日本に生まれたからこそ知り得る季節や時節の言葉を大切に心に留めていられる子育てを心掛けてほしいものです。

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