提案『デザート作りで正確性を獲得せよ』

料理やお菓子作りが子供たちの能力を高めることは周知の事実になってきました。

能力を高める目的のために料理をすることが果たして子供の成長に良いことなのか、それは打算すぎる考え方ではないだろうかと何でもかんでも子供の能力に結びつけて行動することの是非を問われるような気もしますが、タイトルに取り上げていることは事実なので否定のしようがありません。

このタイトルに心惹かれて挑戦する方もおられると思いますが、親の計算的な思いや行動は必ず子供に通じてしまいます。子供がさせられていると感じることなく、心から楽しんだ経験が積めるように親御さんの心のスイッチの切り替えをお願いしたいと思います。

さて上記の絵画はフランスの印象派クロード・モネの『フルーツタルト』という作品ですが、絵画に限らず美味しいものにも目がなかったことは有名な話です。コロナ以前は子供たちの取り組みの仕上げとしてアップルタルトを焼くことを実施していました。さまざまな力の育ちを見ることができ、尚且つ成功体験がレッスン時間内で収まり、更に美味しいという子供にも私にもメリットのある取り組みでした。しかし現在はそれが実施できないことが残念です。下の写真は生徒さんが焼いたものです。

単純にデザートを作るのではなく、数年かけて様々な能力の育ちと手先の器用さを鍛え、思考力を高めた力で段取りと実践力で実行し、最後は美味しくいただき達成感を味わうというある種の卒室的取り組みです。またただ行うだけでは当教室の強みは出ません。モネの世界観と絡めて総合的にほんものを知るという域にまで関心を持ってほしいと願っています。


今回は子供たちが簡単に取り組めて精密さを獲得するためにできることとは何かを提案していきます。

何も考えずにケーキやデザートを食して終わりということは勿体無いと考えます。子供たちに多くの道具を扱うことができる手先の器用さの獲得を意識させるよう常々お母様にお願いをしていますが、それは子供の成長を総合プロデュースしている立場だからこそ痛切に感じている重要さです。指先は第二の脳という言葉からも分かるように絶対的に外してはならない働きかけなのです。


1、色々な道具を扱う、道具の名前を把握する

教室での手先の取り組みでは生後間もない子の場合原始反射を活用しお母様の指を握るというシンプルな働きかけからスタートしますが、日々多くのものを扱うセンスを磨くことを実践しています。道具を使うことを実践していくと共にものの名前も覚えるよう努めさせていきます。その道具の数が多ければ多いほど手先の器用さのみならず感覚的能力や思考、判力、観察力など多くの力を底上げしてくれることにつながるのです。何より達成感や喜び、人とのコミュニケーション力など人間力をも培う事になるのです。


2、計量する

デザートを作るにあたって何が重要かというと、正確な材料の計量や適切な段取りを正確な技術で行う事です。子供たちに真っ先に獲得してほしいのは材料を正確に計量することです。なんとくなくこの位という目分量でデザートを作ると失敗します。レシピ通りにどこまで正確さをもって行うかは、今後の学習にとっても必要不可欠な力になります。

計量カップや計量スプーンなどで図ることやスケールを用いてより正確に数字を読んで計量する方法がありますが、どの方法も実践して計ることを獲得してほしいと思います。


3、卵を割る

デザートに必要不可欠になることが多い卵。子供にとり卵を割ることは意外と難しいもので繰り返し経験させることが必要です。卵を単純に割ることだけではなく、上手に割るためにどうしたらいいのかと子供ながらに考えるようになり、万一殻が入った場合どう対処するか、カラザを取るためにどうするなど考え行動することも問題解決能力に繋がります。

一方で卵を両手で割ることを習得した生徒さんの中には、片手で割ることに挑戦し実践して習得したと子もいました。これは意欲的に取り組む姿勢の表れです。


4、解きほぐす、混ぜる

卵を解きほぐしたり、混ぜたりすることは道具を使用しますから格段と難しい動作になります。乳児の頃から手先の器用さを積み上げている生徒さんは、3歳児で溢さずに混ぜ合わせることが可能ですが、一般的にこの動作ができるようになるのは4歳頃です。実際に道具を扱って実行できるようになるには経験が必要で『手慣れる』というレベルにまで持っていけるように機会を設けてほしいと思います。

また混ぜている間にボールの中の材料が刻々と変化していきますからその状態を観察し、変化を判断して次の行動に移るタイミングを見極めることができるようになります。状況判断を自ら下せる力は実行したからこそ生まれるものなのです。


5、火にかける、焼く

真下の写真はカスタードクリームを作る時に火にかけている状態のものですが、刻々と変化する状態を判断しながら玉にならないように手際よく混ぜなければなりませんが、状態を観察する待ちの時間である静の動作が求められます。その力は物事を判断するために必要な忍耐力とも言えます。子供の性質によっては状況変化を待てずにひたすら混ぜている子供もいて課題が見えてくる瞬間でもあります。

またオーブンなどに入れて焼く時にも家電任せではなく、自分自身の目でじっくりと観察し新たな判断を必要とする場合もあります。その時点で対応する力や知恵も必要になりどう行動するかという成長を見る瞬間でもあります。手軽にこれらを判断するにはホットケーキを焼く経験がお薦めです。生地の状態を見ながらひっくり返すタイミングを図ることも観察、判断そして実行する力を磨く機会になります。


6、デコレートする

デザートを作る楽しみの中には飾るというデコレートがあります。美味しそうに見えるという見栄えも重要ですから、いかに美しく飾り立てるかがセンスになります。色彩感覚も重要ですが立体的に対象物を見ることができると上手にデコレートできます。しかし一般的に多くの子供達は平面的にデコレートする傾向があり、普段から料理の盛り付けを観察している場合にはのみ込みも早く立体的に美しくデコレートすることができます。


7、美味しくいただく、心満たされる

作っている工程から一緒に食すとい流れまでをコミュニケーションすることができます。成功も失敗もそれぞれの立ち位置で次はどうしようかという新しい視点での話を進めることができ、1回限りではなく次のやる気に繋げることが望ましいと思います。料理よりもデザートやパン作りは正確さや精密さが求められるために難しさを感じますが、その分やりがいも出て成功した時の達成感は確実に自信につながります。それを後押しする美味しさでさらに満足感があるでしょう。


また日を改めて年齢別にできるデザートを紹介できる記事をまた書き上げたいと考えています。

是非とも2022年10月31日『料理で問題解決能力を高めよ』も併せてお読みくだされば子供にとって素晴らしい経験であることがお分かりになるでしょう。

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