提案『慈しみの先にあるもの』

お母様からのご質問とご要望があり、急きょ内容を変更し『慈しみの先にあるもの』として、私が「なぜ慈しみを育てるべきなのか」と提案しているかの理由を補足してまいります。先週の提案記事『子育てに於ける慈しみ』(記事はこちら)もご参照ください。また予定しておりました『慈しむ見立て遊び』は来週月曜の提案記事となります。

冒頭で子供に慈しみを身につけさせる最も明確な理由について先に述べておきます。

その理由とは

慈しみを身につけることは、子供自身が「他人のため」だけではなく、慈しみの行動を繰り返し取ることにより、「他者から信頼され、助け合いながら安心して生きていける可能性を高めるため」です。慈しみは他者への配慮であると同時に、長い目で見れば自分自身の人生を支える力でもあるからです。慈しみを発動することで他者との関係は、尊重・信頼・共感を基盤とした関係へと変化する可能性が高まります。ただし、その変化は一方的に保証されるものではなく、相手の応答や状況にも左右されますが、慈しみは結果を操作する手段ではなく、自分がどのような関係性を築こうとするかという在り方に関わるものです。そのことを踏まえた上でどのようなことが築かれていくのかを考えてみましょう。


1、子ども自身の幸福になる

子どもの幸せとは「あなたがいることが大切だ」と感じ、ありのままの存在を受け入れられること、そして自分らしく成長でき生きていくことができること、人との繋がりがあること、そして安全安心に暮らせる環境があることなどいろいろとありますが、慈しみということに限定すると、慈しみが自分の幸福につながる理由は、「良いことをしたから報われる」という単純な話ではありません。慈しみのある行動を自然と身に付けて実行することで、人との信頼関係を築きやすくなります。そのことにより他者と温かい関係を築け、孤立感を減らすことになります。また誰かを助けたり支えたりする経験が、自分自身が誰かの役に立てるという感覚を育み、支え合える人間関係を形成しやすくなるので、高い確率で精神的な安定に繋がります。結果として精神的な安定や幸福感に繋がりやすく、自分の存在意義や心の満足感を感じることにもなります。これは多くの心理学や発達研究とも整合しています。




2、道徳や法律だけでは足りない慈しみがある

子どもの世界での決まり事や学校などでのルール、そして公共の場でのマナー、そして成長と共に理解しなければならない法律では、「してはいけないこと」「守らなければならないこと」を示し教え理解を促していきますが、「困っている人を助けるべきか」「弱っている人にどう寄り添うべきか」「どのようにサポートすべきか」までは幼稚園や学校でも細かく教えてくれません。やはり慈しみというものはご家庭でしっかりと考えさせ、教えるべきものだと考えています。道徳や法律は、「何をしてはいけないか」「何をすべきか」という行動の基準を示します。しかし、慈しみは「なぜ相手を大切にしたいと思うのか」という心の在り方に関わるもので、また様々な方法があり答えを限定的に教えることができないため難しい側面があるります。そのため知識として教えるだけでは十分ではありません。私が最も重要だと考えることは、親が日常的に慈しみを示す行動を取ることです。子供はその親の姿勢を見て学ぶことになります。私の父が困った人を放って置けないときに必ず使用していた「ついでだから、いいよ」という言葉を思い出します。わざわざ行動するということを相手が気づいてしまうとお願いしづらいことも、「ついで」と言えば気持ちが半分楽になると話していました。これぞ相手に寄り添うということなのだと再実感することも多いものです。

相手に寄り添う慈しみが育っていると、自分自身の損得やルールだけで物事を判断せず、人への配慮を基準に行動するようになります。私のこれまでの経験からすると、このような行動を取る子供達は他の子供よりも光るものを持っているとも感じています。優しさの光とでもいうものでしょうか、同じ慈愛にみちたアンテナを持っているもの同士が集まります。これは気持ちや性質が同じ者同士は自然と引き合うという意味なのだと考えているのですが、同じアンテナを持つ大人にも気づいてもらえます。世の中には能力はそうでもないのに、人に引き立てて出世する人がいますが、これぞ同気相求むということなのでしょう。つまり慈愛というものは人との結びつきを強化するだけではなく、実はチャンスも広げたりするのです。しかしそれは過度に「人を優先しなさい」ということではありません。自分自身の幸せあるが上に成立するものです。




3、社会で協力して生きる力になる

学校でも仕事でも多くのことは一人ではできません。慈しみがあると、助け合いや協力が自然にできるようになり、集団の中で信頼されやすくなります。慈しみのある人は、困っている人に気づくことができ、相手の立場に立って考えることや見返りを求めずに行動することができます。そのため周囲の人は、「この人は自分を大切にしてくれる」「困ったときに安心して相談できる」と感じます。この安心感が信頼に繋がり、自然と協力し合える関係性が生まれるのです。慈しみとは単に「優しい気持ち」を持つことではなく、相手の状況を理解し自分にできる行動を選ぶ姿勢です。その姿勢が助け合いを生み、学校や職場などの集団の中で「この人と一緒に活動したい」「困ったときは相談したい」と思われる信頼関係を築いていくのです。

つまり慈しみ → 相手を理解する → 思いやりのある行動 → 信頼が生まれる → 協力できるの流れで子供は大きく成長を遂げます。ただし、慈しみだけでは十分ではありません。社会で協力して生きるには慈しみに加えて、自分の考えを伝える力、相手の話を聞く力、約束やルールを守る力、感情をコントロールする力なども必要になります。慈しみは、それらの力を生かして良い人間関係を築くための重要な土台と考えられています。教育や発達心理学でも、幼い頃に安心できる人との関わりの中で思いやりが育つことは、友人関係や集団生活への適応、協力行動につながることが多くの研究で示されています。愛着形成がしっかりと育つことが社会で協力し合い生きていくことになる土台であることを再認識してほしいとも考えます。




4、暴力やいじめを減らす

子供が暴力やいじめを行う場合には愛着形成がなされる家庭環境に多くの問題があることが多いのですが、周りに流されて加担したり、傍観してしまう場合も私は問題があると考えています。しかし乳児期から慈しみを育てる遊びや躾、教育を施せば、相手の苦しみや痛みを想像できるようになり、「傷つけても構わない」という考えを持ちにくくなります。全てのいじめを防げるわけではありませんが、加害行動を抑える要因の一つになります。つまり相手の気持ちを考えられるようになると、相手を傷つける言動を控えるようになります。また慈しみを持つ子供は相手を自分と同じように大切な存在としてみることができます。そのため力で支配したり、仲間れにしたりする行動が減ります。相手を尊重するようにもなります。これは私の経験でもありますが、いじめは周囲が見て見ぬふりをすることで続いてしまうことがあります。よって思春期だから、いじめる側には大きな問題があるからという理由や今は忙しくて対応が難しいなどと大人が様子を見守るなどと考えるのはどうかと思います。我が子にはいじめられている子供がいれば、火中の栗を拾うつもりで助けることに意義があると教えました。それは子供自身にいじめを阻止する能力があると感じていたからできたことかもしれませんが、火中の栗を拾う勇気がなければ、誰の目にも触れないように慈しみを発動する勇気を持つことの重要性も教える必要があるのではないでしょうか。慈しみを持っていると被害を受けている人を助けたり、先生や大人に相談する行動に繋がり、困っている人を助けようとします。大人は子供達のこのような行動をやはり汲み取ることはどんな状況でも持つべきだとも考えます。

慈しみがあると相手を傷つける前に「相手はどう感じるだろう」と考えられるようになります。また、困っている人を助けようとする意識が働き、そのような行動が増えるため暴力やいじめが起こりにくくなります。つまり、慈しみは一人ひとりの思いやりの行動を生み、それが安心して生活できる学校や社会をつくることに繋がると考えます。




5、人間関係を築きやすくなる

相手の気持ちを考えられる子は、友達や家族との信頼関係を築きやすくなります。慈しみとは単に「優しい気持ち」を持つことではありません。相手の状況を理解し、自分にできる行動を選ぶ姿勢です。その姿勢が助け合いを生み、学校や職場などの集団の中で「この人と一緒に活動したい」「困ったときは相談したい」と思われる信頼関係を築いていくのです。たとえ対立が起きて相手を傷つけたとしても、解決策を探そうとする姿勢が育ちます。自分自身が悪ければ謝る勇気や歩み寄ろうとする姿勢を見せることもあるので、人間関係を紡ぎ直そうとする力も育まれています。慈しみを育てると人間関係を築きやすくなるのは、相手との関係を大切にする行動が増えるためです。人間関係は「気持ち」だけではなく、その気持ちが行動として表れることで深まっていきます。

具体的に説明すると次のような流れが生まれます。

慈しみのある人は相手を理解しようとするようになります。「この人は今どんな気持ちだろう」と考えようとします。そのため、相手に合った接し方ができ誤解や衝突が減ります。次に相手が安心できるようになります。優しく接してもらったり、話をよく聞いてもらったりすると「この人は自分を大切にしてくれる」と感じます。安心感は、人間関係を築くうえでとても重要です。そして思いやりのある行動が続くと「困ったときに助けてくれる」「約束を守ってくれる」と信頼されるようになります。信頼は良い人間関係の基盤になります。このような流れになると最後は協力関係を気づき出します。つまり慈しみは相手を尊重するので自分の考えだけを押し通さず、お互いに譲り合ったり助け合ったりできます。その結果、一緒に活動しやすくなるのです。皆さんも経験があると思いますが、公園で遊んでいる子供が転んだ友達を見て「大丈夫?」と声をかけたり、自分自身が持って使用しているおもちゃを相手の子供に貸したりすると、その相手の子供は嬉しそうに遊びます。その結果で一緒に遊び始めたりすることも少なくありません。実際私も子供が1、2歳の頃からこの方法で友達との関わりを経験させてきました。このような経験が幼い頃から繰り返されていくことで友情や信頼関係が育ち人間関係の基盤が構築されます。つまり、慈しみは「人間関係を築くための心の土台」であり、その土台の上にコミュニケーションや協力、信頼といった関係性が育っていくのです。


これまでに類似記事も配信しているので参考になされてください。提案『子供の思いやりと優しさについて』(記事はこちら)、提案『人の役に立ちたい思いを育てる』(記事はこちら)、提案『優しさの育み方』(記事はこちら


Baby教室シオ

ほんものの学び。今必要な学び。乳児期から就学期までを総合プロデュースする沖縄初の乳児のためのベビー教室です。