提案『植物を知る 果物編』

地球上には多くの植物がありますが日々その多種多様な植物も姿を消しつつあります。それはすごく残念なことですが、なぜそのようなことになっているのかを考えることは大人でも意識しなければ考えることすらないでしょう。

地球が誕生して水が豊かなこの地球は水・光・大気という絶妙なバランスの上で成り立っていましたが、そのバランスが崩れ地球温暖化が進む中で自然界の多くの動植物が真っ先に影響を受けています。私が子供の頃から叫ばれ続けている自然破壊の影響が年々悪い方向へ進んでいることからも分かるように関心を持つことが出発点です。避けては通れないこの問題を子供達の時代は更に深刻になると考えられるためできる限り関心を持たせておくことが重要です。幼い頃から植物に目を向け身近なものとして存在させてほしいと考えます。

また修学後の小学校で1年生は生活の教科で朝顔の種まきをし育てながら観察し習が始まります。そして学年が上がるごとに植物の種、発芽、花を咲かせ実を付ける受粉などの植物の体の仕組み、植物光合成と呼吸のなどの働き、植物と今週や動物ひいては人間との関係、自然環境との関わりなどの学習を深め、さらに中学以降ではより詳しい学習を深め積み上げていきます。就学以降は子供の学びの中で長く続く学習でもあり生活の中で花を愛でたり植物を育てたり、食物に関心を持ち果物や野菜を食する生活を身近に感じて考えてほしいものです。

これらの学習の前に幼児期で学んでおくことは先ず身近な果物や野菜を味わって食べることでその果物と野菜に関心と興味を持つことから始められたらと考えます。しかしその関心や興味を子供の中に芽生えさせるには大人の関わり無くしては難しいと言えます。果物や野菜に触れる経験、花を愛でる・植物を育てる経験、食材として頂く経験を意識して子供の与えるようにしましょう。今回は幼児期に於けるその方法を取り上げ提案して参ります。


①  果物の名前を覚える

乳児期の頃から子供達は果物を食べる機会が多くあります。野菜を覚えるよりも果物の甘さを知り名前を覚えるのだと実感していますが、お座りができるようになればりんごやみかんを触る経験をさせてほしいと考えます。手先から感じる果物の触り心地や重さを、嗅覚で香りを、味覚で味をという具合に実際に五感を使用させることが重要です。子供達にぜひ獲得させてほしいのが記憶能力ですが、実体験を伴わせるのとそうでない場合の習得には雲泥の差があります。



②  珍しい果物を知る

沖縄の代表的果物といえばパイナップルやマンゴー、島バナナ、ドラゴンフルーツがありますが、先週は本土のお母様がパッションフルーツに挑戦してあまりの酸っぱさに驚いたお話をしていました。パッションフルーツの食べ頃は外側の皮にシワや凹みが現れたタイミングです。知ると知らないとでは結果が大きく異なりますが、実はこのような失敗に近い体験も子供にとっては大きな刺激となり脳育てには良いものとなります。

またいつも食べている果物とは異なるものに挑戦することも意欲の育ちと脳刺激を与えてくれます。私の最近のお気に入りは森のアイスクリームと言われるアテモヤです。希少でスーパーには出回らないものですがカスタードクリームに似た甘さと滑らかさがあります。このような珍しい果物を知るということは世界観の広がりをもたらす事になります。



③  味を確認しどの部分を食すのか認識する

沖縄にはカニステルという果物がありますが、初めて食したのは母の興味本位から購入し食しお世辞にも美味しいものではありませんでした。柿色になるほどの色となり、ひび割れが出てくると食べ頃ということを知らず、未完熟のまま食べてしまったことでカニステルの印象は最悪なものとなりました。食べたことのない果物を経験するにも知識がなければ美味しくいただけないということです。初めて見る果物には関心や興味を持ち、食する前に調べるということも重要な学びだと考えます。



④  形・色・大きさ・味を実感し認識する

子供にどのような刺激をどのように与えるか、そしてその頻度を多くするか否かで子供の能力さが生まれます。絵本やカードで果物の名前を覚えることに加え、実際に色々な果物を五感で捉えることが多くの刺激を伴い理解へと結びついていきます。またその覚えたことを更に深めるためには同じ果物であっても色・形・品種など多くの思考の選択肢を与える事になります。青森の人々が多くの品種のリンゴ名を知りその味を理解しているそうですから、実体験をもとに色や形、大きさや味比べができる環境を与えるとそれだけ物事を深く知るきっかけとなることは間違い無いと考えます。



⑤  縦横の断面を実際に切り見て理解する

私がこの世界に飛び込むときに恩師から言われたことは、毎日同じことをしなければならないことでも違う刺激を子供に与えるようにと指導を受けました。そこでいち早く取り入れたのは毎朝子供に出すデザートのアレンジです。りんごを普通に剥いて食べさせることもあれば、フグ刺しのように薄くスライスして花びらのように皿に並べたり、サイコロ状に切ったり、ウサギや船などの飾り切りをしたりと色々な方法を実行しましたが、2歳以降になると子供の前でりんごの皮を色々な方法で剥いてその様子を見せてきました。子供が包丁を持てるようになると縦横の断面切りに始まり様々な角度で切らせて断面を確認できるよう実行させました。断面を切ることは小学校3年戦の円の学習に繋げる事になり、様々な角度からものを見る図形力にもつながります。また観察力をつけるきっかけにもなり種の色形大きさ、花が受粉し実を付けることも想像することができ思考を深める事にも繋がります。



⑥   果物がどのように成長し実を付けるのか成長過程を理解する

果物に興味を持ち始めたら果物がどのように実をつけるのかと疑問を持つように絵本や図鑑などを活用するように仕向けることも現代に於いては必要かと考えます。バナナが身をつける様子は探せばすぐに見つかりますが、りんごが実を付ける様子を実際に見ることが難しいのが沖縄という立地です。旅行先でりんご農園に出かけりんごの木のオーナーになった生徒さんもおられます。すると毎年その気が身をつける様子を動画で確認したり、送られてくるリンゴの箱を開けるとリンゴの香りが広がり、スーパーで買うリンゴとは明らかに違う蜜量に驚いた経験や農園の方の配慮で枝と葉と実が付いているものを送っていただき思考の幅が広がったとも話されていました。このような経験以外にも子供の学びは深めることができるはずです。ご家庭に合った方法をできる範囲で行うこととすれば良いかと考えます。レッスンではそれぞれの果物がどの場所に実を付けるのかなどを写真やおもちゃ、フィギュアなどを用いて確認しています。


      

⑦  種・葉・茎・蔓・花・木などの特徴を押さえる

果物を比較観察することは少ないと思いますが観察力を身につけるためにはこのような学びも大切です。昨今は種無しの果物が増えて種の形や大きさ色などが分からない子供が増えてきました。食する側としては楽な反面子供の成長には負の遺産となっている一面があります。また果物だけを見ている子供達の中には葉の形にも様々な種類があることや葉脈があることを知らない子供や茎や幹の言葉の意味や違いもわからない子もいてどうしたものかと残念に思うこともあります。我が家では幼い時から植物の葉や種、花びらの形を絵に描く遊びをたくさんさあせていました。特に女の子は4歳以降に多色を用いての色塗りにはまっていくのでそのタイミングで描かせて色塗りをさせると良いかと思います。フランスの画家ドミニク・アングルが線描写の重要性を唱えていますが、線描写はシンプルな形を捉える観察眼に磨きをかけることができます。是非ともこの取組みを時間のある幼児期に行ってほしいと考えます。



⑧  果物の旬や生育場所がどこなのか理解する

日本の諺に春は苦味を食べ消化を助けよ、夏は熱を逃して水分を多く摂る、秋は食物繊維を多く摂り、冬は体内で熱を生み出す食材を摂るよう語り継がれています。そして春夏秋冬にあった果物には栄養価が含まれるとともにその季節にあった効果を促す働きがあります。よってその旬を迎えるタイミングの果物を知っておくことが体を整える知識を得る事になります。また生育場所がどこなのかを知ることは 日本の地理を理解することにもなり、世界に目をむけるきっかけにもなるかもしれませし、地球規模で色々なものが見えてくるきっかけにもなるでしょう。学習で言えばその果物の代表的な生産地や地域を覚えることで地理的学習の手助けにもなります。幼児期という成長段階は今後の人生で学ぶべきことの土台作りとして大いに楽しむことが重要だと考えます。



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