提案『いただきます』『ごちそうさま』

年度の始まりということもあり子供たちに教えておきたい日常の大切なことを数度にわたり提案して参ります。今回はまず手始めとして『いただきます』『ごちそうさま』の挨拶と感謝、食事に関するお手伝いについてです。この2つの日本語は日本独自の文化が生み出したものでもあり、四季折々の恵みを自然からいただき日本独自の精神性と相まって命を頂くことに感謝の念を捧げ食事を粗末にしない、また勿体無いという精神に繋がっています。私たちは食事の始まりと終わりに感謝を述べる日本文化に誇りを持つべきであり、しっかりと子供にこれらのことを継承すべきものであり、子供の教育に率先して取り入れ学びやお手伝いへと促していくべきものです。それではここにみていきましょう。



1、感謝を言葉にする「いただきます」

『いただきます』は『頂く』と書き、食う、飲むの謙譲語で敬意を表す言葉なので自然と手を合わせることになったと考えられます。では子供の教育にいつからこの『いただきます』を取り入れるのかということですが、スタートは乳児の離乳食が始まると同時にお母様が手を合わせて言葉にして頭を下げるという一連の流れを見せるということが重要になります。乳児は生後9ヶ月には見た事を真似ようとする知恵が開花していきます。その発達期に真似が出てくるようにするためにはやはり離乳食を開始する生後5、6ヶ月くらいには親が『いただきます』に関する行動を見せる必要があることを理解しておきましょう。

ここで注意を促しておきたいことが一つあります。お箸やスプーンを手にしたまま「いただきます」と言わずにしっかりと両手を合わせて言葉を発するようにしましょう。




2、感謝の意味をしっかりと考えさせる

『いただきます』の言葉には感謝の意味があることを子供たちに伝える必要があります。その感謝には大きく分けて2つあります。

1つは食材に感謝することです。私たちは自分自身の命を生かすためには自力で生命維持に必要な栄養素を生み出すことはできません。必ず植物や動物の命を頂かなければ生きることができないのです。食物の命といえば野菜、果物、穀物などがあり、子供の中には植物に命があることを理解できていない子供もおりその成長プロセスを知ることにより植物にも命があり尊きものであることに気付かさなければなりません。また動物の命を頂く話については注意が必要です。動物好きな子供にとって動物の命を頂くという事を強調してしまうと動物への憐れみから食すことができなくなるケースもあるからです。

2つ目は食事するまでに関わった多くの人々への感謝です。子供達が陥りやすいここでの感謝は料理を作った人に対する場合が圧倒的に多く、それ以外の感謝すべき人々の存在に思い至らない場合があります。食材を生産をする人々、販売する人々、物流事情を考え多くの人々が関わり食卓テーブルに食事が上がる流れを教えることも必要になります。世の中の仕組みを考えさせる学習にも結びつけ思考の広がりを促し深掘りして知る機会を増やしてほしいと考えます。




3、配膳の位置を学びぶ

食事に感謝することができるようになれば後は日々の食事に関する子供の自立とお手伝いをさせることを考えましょう。まず子供たちが簡単にできることといえば食器やカトラリーの配置のお手伝いです。そのお手伝いは和食や洋食によって大きく異なりますが、日本人ですから先ず和食の正しい配置(並べ方)を理解する事を行ないます。主食のご飯と汁物、主菜、副菜、箸の位置がどこに置くかを理解できるようにします。レッスン内でこのような学びができる子供たちもおりますが、この学びをするまでは配膳や和食にはどのようなも括りがあるのかを理解できていない子供もいます。幅広い意味での食育を促すためにも和食膳の位置を理解できるように最低でもしておきましょう。

和食膳の位置をマスターした後に洋食のテーブルマナーを理解するように進めてみてはいかがでしょうか。教室では就学前の幼稚園時代にそれらに関するおもちゃを使用して遊びながらの学びを行うことをお勧めしています。




4、配膳のお手伝いをする

配膳を学ぶためにはまず子供たちにカトラリーを並べるお手伝いをさせましょう。我が家では子供がカトラリーを取りやすいように容器を準備し、その中に使用するカトラリーを家族分入れ食器棚の中の所定の位置に入れておきました。最初は食器棚からカトラリーを取り出していたのですが手が滑って落としたりと洗い直しの作業が発生するので容器を準備し出し入れをしていました。所定の位置にお手伝いの道具があれば毎回行うことが同じなので子供たちも動きやすくなります。これはモンテッソーリー教育に繋がることなのでものに所定の位置を与えることは全ての道具に通じます。配膳がマスターしたらおかずの盛り付けにも挑戦してみてはいかがでしょうか。




5、好きな食器やグラス、カトラリーを選ぶ

子供の食器は親御さんの考え方によって用意するものが違うと思います。私はものを大切に扱う事を目的に子供が小さい頃から陶器やガラス食器を使用させていました。一般的な陶器は重さがありますが子供用の陶器やガラス食器は一般的なものほど重くもなく比較的扱いやすいものもあります。その反面薄いので割れる確率も上がりますが、割れたらその対処法を学ばせればいいと割り切ってハプニングに備えたバケツや雑巾などのアクシデント道具も所定の位置に設置し、転んでもタダでは起きない精神を発動してもらいました。

食器は我が母が好きだったこともあり、子供の頃から器を愛でる習慣があったため我が子にも陶器やガラスを使わせ目で愛でることを選択したのです。よってプラスチックを使用選択肢は歯磨きの時ぐらいでした。割れるものを慎重に扱う動作はおもちゃや文房具、習い事の道具や絵本など全てにおいて丁寧にものを大切にする心が育ち、それが学習面などにも活かすことができたので孫にもそのような選択をさせて欲しいと思います。まだ孫はいませんが・・・

お茶碗や味噌汁茶碗は子供の手が大きくなる度に食器を買い換えることになりますが、旅先で器を選ぶ事も旅の目的になり親子で楽しみ器を愛でることも子たちに継承することができたのです。何にでも興味を持つと外食先でも器を見て刺激をもらうので脳には大変良い刺激になったと考えます。




6、いつもと違うカトラリーや食器を使用してみる

銘々皿におかずやサラダを取り分けて出す方法もありますが、大皿に盛り付けたものをトングやレードル、ターナー、ピザカッターなどを使用して取り分ける得楽しみもあって良いと思います。道具の扱いをマスターするファインモータースキルの獲得を目的にした日があっても良いでしょう。




7、美味しく頂くためにテーブルセッティング

数十年前の日本の食事は黙って黙々と食べるというスタイルでしたが、食事のスタイルも変化し楽しいものでなくてはならないという考え方が主流になっています。テーブルクロスやテーブルセンターを掛けたり、ランチョンマットを季節や料理など合わせて変えてみたり、テーブルフラワーを準備したりと変化を楽しんでも良いでしょう。




8、食材について話をする

食卓に上がった食材や料理の話などをしながら食事を楽しむことができる機会を設けても良いでしょう。このタイミングで旬の材料が使用されていたら季節感の学びが行えます。また多くの食材がどのようにして育てられ輸送され販売されて食卓に上がるのかを確認することもできるはずです。




9、調理の手伝いをする

調理は包丁やピーラーを用いたり本格的な調理をすることだけではありません。レタスやキャベツ、白菜を手で千切ったり、もやしの根を手で折り切る、ゆで卵の皮を剥く、苦瓜のわたとタネをスプーンでくり抜く、インゲンの筋を剥く、煮干しの腑を取り除く、ゴマをする、調味料を合わせるなど子供の年齢や手先の器用さに合わせたお手伝いをさせることも調理の一つです。できることから楽しさを味わいつつお手伝いから調理へと結びつけることができます。毎週水曜の手仕事のブログ記事も参考になさってみてはいかがでしょうか。




10、感謝を言葉にする『ごちそうさま』

『ごちそうさま』という言葉を持つ国はあまり耳にしたことはありません。この言葉の意味には食事を作るための食材集めが深く関わっています。今でこそ料理を作るための食材入手は簡単になりましたが、食材がなかなか手に入らない時代に生まれたのが『ごちそうさま』であり、食材を手に入れるために馬を走らせたり自分自身で狩りをするなど奔走するという行動からくるのがの『ご馳走様』です。食材を入手することが困難な時代に生まれたこの言葉の意味を考えるとき、食事を準備してくれた人に対しての感謝の意味を込めて「ごちそうさま」とお礼を言う形になったことも子供に伝えましょう。意味を考えると漢字も書けるようになる副産物も獲得できますよ。




11、食後の後の片付け

食事を終えたら自分自身が使用した食器を下げること、テーブルを拭くなどをさせましょう。自分の使用したものだけを下げる行動は後片付けの意味を持ちますが、もし家族のものまで片付けることができればお手伝いや人のために働くことの意味を理解する土台作りにもなります。手伝いはお母さん一人がするのは辛いこともあります。家族みんなが関わることで家事の負担も軽減され、早く終わり家族の時間に充てることもできますし、何より子供に多くの学びを与えることができるので参加させることも必要だと考えます。

昨今はファミレスや大衆的な場所での食事をすることはなくなってきましたが、子供が小さい時にはねだられていくこともあり、すると後片付けのされていないテーブルを見ると食器が一塊にされていたり、食器を重ねておられるテーブルを見ると日本人らしい気遣いを感じましたが、海外旅行をするとひどい食事後のテーブルを見るとき文化の違いを感じました。ある国で食事後のチェックをお願いしているとホールスタッフが、日本人のテーブルは美しいが同じアジアの国でも中国人のテーブルはひどいものだと話していたことが思い出されます。我が家ではお店のスタップの片付け方を見る機会があればそれに近づける片付けを子供にさせていました。立つ鳥跡を濁さずがとても重要だと考えています。

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