提案『植物を知る 木々草花編』

木々や草花の世話をするのは楽しさや新しい発見、季節の移ろいや自然の摂理をも学ぶことができ何より私たちを癒してくれるものでもあります。昔から言われているのが植物を眺めていると大脳皮質の活動が活発になり視覚疲労を解消してくれ、また植物が持つストレス低減作用は心理的にも生理的にも効果があると言われています。またアメリカのカンザス州立大学の研究発表によると外科手術を受けた患者に効果的な補助治療薬として園芸療法を勧めているとも言います。植物や草花を家庭や職場に置くことで集中力や記憶力そして生産性を向上させたとする研究データーも論文化されており、身近に木々や草花を配置することの重要性も科学的に示されています。

植物が子供に与える効果については21021年9月13日『植物を育てる効果』の記事で記していますので、ご興味のある方はそちらも併せてお読みください。今回は植物を学びとして具体的に取り入れる方法について記事化してまいります。




①  木々や草花に触れる

木々や草花には人をリラックスさせる効果があると言われています。幼い頃からその草花に触れて大切なもの、かわいいもの、愛おしいというような感情を持つことで自然と優しい気持ちが育まれ、木々や草花などの植物を通して植物にも生命あるものだと気付くでしょう。動物や昆虫といったものの生命の存在に気付くことが出来たとしても、木々や草花などの生命については疎い場合もあります。実際に触れていなければ植物の生命に気付くことはできません。

1歳のよちよち歩きの頃から道端の名も知らぬ雑草に目を向け、触ってみたり花の香りを嗅いでみたりする経験から木々や草花に関心や興味を持たせるようにしなければ、3、4歳になっても無関心という場合があります。どんなに関心を向けさせようとしても子供自身に経験値が低ければかなり時間を要すことになります。ですから1歳以降の1、2年での親の働きかけが重要なのです。私は幼い子供達に花の香りを至る所で繰り返し嗅がせていました。そして子供達が小学生になるまでは家に花を切らしたことがありませんでした。生花も植木鉢に植えているものでも日々世話をさせたり、世話をしている様子も見せてきました。ある時シクラメンの花柄をとっている様子を子供が見ていて「どうして花柄を摘むの?自然界ではそのままじゃないの?」と言われたことがあります。人間が手を加えずとも自然のままが良いのではないかという考えを持っていたようですが、人工的に植木鉢に植えられたものは次の花芽を出させるためにも必要なことだと話すと、「人の手によるものは弱いんだ・・・」と納得していました。人間の手による人工保育の動物が自然界に復帰することが難しいということと人工的に植えられたシクラメンの共通点を発見した瞬間でした。見聞きし実際に触れて学んだ事柄を別の点と擦り合わせて思考することの重要性を学ぶきっかけになりました。昨今の男児の生徒さんは絶滅危惧種の生物に興味を持っていますが、植物についてもそのような世界が存在することを話すときょとんとしていたり、そうなんだと初めて知る様子が見て取れます。できれば多くの視点で物事を学ぶ機会を植物発信で増える事を願います。




②  童謡や歌を通して草花の存在を知る

日本人は四季の移り変わりや行事を通して木々や草花と密接に繋がっています。そしてそれは生活のみならず文化的な関係性も深いもので、古来からそして現代に至るまで色々な場面で木々や草花について情報を得ることが出来ます。その一つの方法として幼い頃には是非とも童謡を通して花の名前を認知させて欲しいと考えます。そしてそれが季節によって歌う歌をイメージさせておくと花とその季節をリンクさせることが可能です。例えば春には『チューリップ』『春の小川』ですみれや蓮花、『おぼろ月夜』で菜の花、夏なら『夏の思い出』で水芭蕉、『夏は来ぬ』で卯の花、『アマリリス』、秋なら『紅葉』『まっかな秋』『どんぐりころころ』、冬なら『たき火』でサザンカ、『この道』でアカシヤ・サンザシ、『みかんの花咲く丘』などがあります。

また昨今はあいみょんの『マリーゴールド』、秦基博の『ひまわりの約束』『スミレ』、ゆずの『スミレ』、一青窈の『ハナミズキ』、X JAPANの『DAHLIA』、LiSAの『紅蓮華』、また日本人が真っ先にイメージする桜に関するものは多くのアーティストが歌っています。時代を遡れば流行歌の中にもサボテンの花、シクラメン、スイトピー、バラにパンジー、りんごの花などあげたらキリがない程です。幼児期の童謡を逃したとしても流行歌で補えるのが日本の歌文化の良いところです。遅過ぎることはありません、できることから挑戦してみてはいかがでしょうか。




③  木々や草花の名前を覚える

どのようなきっかけからでも構いませんので花の名前を覚える経験を積み重ねて欲しいと考えます。道端に咲く小さな雑草を見つけこの花の名前はなんだろう?、レストランのテーブルに生けているこの花の名前は?、食べられる花はなんて名前?、絵本に描かれている木々や草花の名前はこんな名前なんだなど五感を使って見つけた花の名前を調べて覚える、教えてもらって確認するなど一つ一つ記憶する喜びの種をたくさん獲得して欲しいものです。先述しましたが日本人は季節の移ろいや行事、文化的活動の中で木々や草花などを切り離して過ごすことはできません。しかし草花とは無縁の生活を送ろうと思えば草花に関心を持たずに無知でいることです。その一方で草花に関心を持って過ごしていれば、草花を取り入れた生活の豊かさに出会うことも自分自身からその豊かさに歩み寄り取り入れることも可能なのです。この豊かさを引き寄せるためにはやはり基本となる情報を持たなくてはなりません。それが木々や草花の名前を覚えるということなのです。




④  木々や草花を育てたり観察しながらその成長を理解する

木々や草花を育てたり日々観察するだけではなく、何気なく毎日見ているだけでも五感への働き掛けが促されます。子供が幼い頃いつも行く公園の池に蓮が自生していました。春には芽を出したばかりの葉が水面に浮いていて、夏の初めには茎を伸ばし葉が水面から伸び出し、花の蕾も膨らみ始め夏の早朝に数日間花を開いたり閉じたりしながら咲き終わります。すると夏の終わりに蜂の巣のような形をした花床の色が白から黄緑、茶色と変化し、秋の終わりには枯れて実を池に落とします。すると池の底に落ちて沈んだ蓮の実がどのようになるのか子供は興味を持ちます。そこから学びはどんどん広がるのです。また蓮の変化とともにそこに集う生き物や池の様子自体も移り変わるのでその場所の環境変化にも気付くことが出来ます。小さな視点で見ていたことが知識を得ることで視点の広がりを得られる経験は全ての子供が景観するかというとそうではなく、経験をした子供にしか与えられない思考の広がりです。

一方自分自身で木々や植物を育てると木々や草花により水のやり方、日光の当て方、肥料の与え方や育て方など全て同じではないことにも気付きます。千差万別いろいろな方法があるのだと気付くことも新たな学びになります。これまでと同じように土や葉、花などの香りを楽しみ、水やりの度に小さな変化に気付くことがあっても植物によって違いがあり方法を変えなければならないのだと新たな学びのチャンスにもなります。またてんとう虫が飛んできた、蟻が茎を歩いていた、トライコーム(葉についている細かい産毛)も成長してきた、花が咲いた枯れた、虫に葉が食べられたなど育てていなければ気付かないことを見つけることにもなるでしょう。この発見は観察眼を育て知りたいという意欲に繋げることが、新たな情報を得て知識の追加し新たな情報知識を書き換えたりすることも出来ます。




⑤  葉・茎・蔓・根などの形・色・大きさなどの特徴を理解する

木々の草花の種類が変われば大きな変化を学ぶことが出来ます。高木もあれば低木もあり、茎を太らせて成長するものもあれば蔓を伸ばし植物に巻き付いて成長するものもあります。また根を真っ直ぐ真下に太く伸びるたんぽぽぽのような植物もあれば、ひまわりのように細かな根を多数持ち下に伸びるもの、クローバーのように横に根を広げていくものなど根に焦点を当てて観察するだけでも多くの違いがあることに気付きその植物特有のものを理解することが可能です。

しかし同じ植物でも日当たりや水、肥料の与え方により同じように育たないことにも気付くかもしれません。同じ場所で同じように育てた同じ種類の木々や草花でも花の色も葉の形や大きさも同じではないことだってあり得ます。そこから子供たちが何かを感じ取ることができ何を学ぶのかを導くこともできるかもしれませんし、また子供自身がそのことに気付くことで新たな思考や行動を起こすかもしれません。物事を理解するということは実際に子供の中で化学反応を起こすことであり、そのことにより多くの刺激を脳に与えることができるのです。



⑥  花の色・形・大きさを知る

木々や草花を楽しむには花を愛でるということが何より好まれます。一年を通して木々や草花が一斉に黄色や白、淡いピンクの花を咲かせるのが春です。そして気温が安定しさらに多くの花を咲かせ植物にとっての恵みの梅雨を越し、一気に夏になると太陽にも負けぬ色鮮やかな花々が咲き誇ります。春に比べ花の種類は減りますが南方の花々が咲き乱れることに気付くことができるかもしれません。そして残暑が厳しく残る秋になるとシックな色合いの花々が咲き出します。秋の花々の他にこの時期は葉の色も黄色、赤、オレンジ、茶色と色をかえ花と葉が咲き乱れます。厳しい冬を迎える時にも白や赤のクリスマスカラーの花が咲き、街を色とりどりに飾り、新年を迎える頃には多幸を願う縁起の良い生花を飾る風情を堪能することもできます。春のチューリップという括りで見てみると色とりどりの花色があり、花びらの形もストレートのものもあればレースを纏っているものもあり、大きさにも違いがあり多様さを確認することができます。日本人のイメージする桜も多くの種類があります。その違いに気付いた年からは桜の品種に目を向ける経験が始まり、新しい知識を手に入れることで情報がスキルアップして捉え方感じ方にも変化が生まれ学びの深さを実感していくことになるでしょう。知識の深さとは短時間でできるものではありません。日々書き換えを行い蓄積していくものなのです。




⑥  種か球根か

この地球上で動物の種の保存をすることも大事ですが、実は植物の種の保存を各国が行っていることをご存知でしょうか。北極から1300kmの地点にある永久凍土の山の海底130mの場所に世界各地の種子100万種類を保管しているのです。その施設は『スヴァールバル世界種子貯蔵庫』と呼ばれビル・ゲイツ氏が中心となって建設された施設です。

この施設の外観は地球滅亡に備えたスペクタクル的建造物の入り口のように見えるのですが、自生地での種子の保存がなされない場合に備えて遺伝情報を保持するための施設だそうで、空気中に水分がほとんどない環境だそうです。地球温暖化による気象変動や植物の絶滅の脅威から守るという点からも子供の好奇心を刺激することができるかもしれません。また身の回りの植物の種子や球根はどのようなものがあって、どのように芽吹き命を結実させ、次の世代にバトンタッチするのかということも含めて関心を向けることができれば思考が深まることでしょう。

これは私の思い出ですが夏に植えた大きなひまわりから種を取る事を地道に行ったことがあります。立ち枯れしてから1ヶ月ほど成熟させ、どのくらいの数の種が取れるのかを父と部屋中に広げた和紙の上に一つ一つ種を並べる気の遠くなるような作業でした。予想以上の種の数の多さと大変さに根を上げていた記憶が残っていますが、その時父に「ひまわりのように真っ直ぐに太陽を追っかけていれば必ず道は開かれる」「どんなに大変な作業でもその一つ一つにフォーカスを当てて淡々とこなしていれば、全体像を見て心れるよりもずっと早く物事を終えることができる」と言われたことがひまわりも見る度に思い出されます。そして秦基博氏の『ひまわりの約束』を初めて耳にした時にぽろぽろ落ちてくる涙を止めることができませんでした。『ひまわりのようなまっすぐな優しさを温もりを全部・・・』という歌詞があまりにも自分自身にリンクする経験を父からのメッセージとして受け取っています。こんな私のように色々な視点で物事を捉えることも人生の指針になることもあるのです。父との経験がなければ『ひまわりの約束』に出会うこともなかったでしょう。人生に偶然はないと言いますが関心や興味というアンテナを張り巡らせ続けていると多くの学びを得ることができると実感しています。




⑦  絵本や図鑑を活用する

ある程度興味を持ち始めたら図鑑へすんなりと移行することが出来ますが、まずは絵本を用いいて絵本の中に木々や草花を見つけることができるように目を向けさせましょう。そしてその年齢が1歳ごろからの読み聞かせに取り入れることができるよう意識を向けさせましょう。そしてその経験をもとに実際に木々や草花などの植物に触れる経験をさせておけば自ずと関心や興味が育つものです。その関心や興味が育つと同時に多くのこと学ぶことができる絵本や図鑑を子どもの知識量より少しだけバージョンアップさせたものを準備することにより学びが深くなります。最初から難しそうな情報量が多い図鑑を一冊与えることよりも子どもの成長にあったものをその都度与える方が無理なく知識を得ることになります。




 ⑧  芸術に結びつける

音楽に結びつけることを先述しましたが音楽だけではなく、絵画や文学そして研究などの芸術的文化的学術的など多方面でも木々や草花などの植物はしっかりと存在しています。子供達が自分自身の得たものでその多方面なものの見方を感じたり試行したり表現できたりすることができる事を心から望みます。


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