提案『科学を好きになるために』

確か2003年頃だったでしょうか理科離れに関する問題が発表され、その問題を解決しようと数年後日本学術協会が小学校高学年に理科専門教員の導入や博士課程修了者の積極的教員採用導入を足掛かりとして様々な対策をとり始めました。実はこの問題は日本だけではなく世界の先進国も同じような問題を抱えており、科学技術の進歩や発達が齎した問題でその時代に誕生した子供達は技術進歩が当然である環境に生まれ、科学への興味や関心が希薄となり理科離れを生み出したとされています。

その後20年あまり経つ現在、専門家などの努力により至る所で科学実験教室が開かれるようになり、我が教室の生徒さんの幼稚園や小学校でも理科実験教室が放課後展開されているようです。レッスンでの理科実験的取組みは幼稚園や小学校での専門家による大規模な実験教室的ようなことはできませんが細やかな理科実験の種蒔きをしています。すると子供達の純粋で言葉が聞こえてきます。「面白い、楽しい、他にどんな実験があるの?どうしてこんなことが起きるの?  こうしたらどうか、こうするとこうなるかもしれない」などの声を聞く度に実験のスイッチの箱作りは容易にご家庭でもできるのではないかと感じています。そしてそのスイッチ作りの精密さやいかなる時でもスイッチをオンにでき確かなものにするためには、家庭での働きかけの頻度や取り組み内容のバラエティさも重要になると考えます。

理科実験教室に通わせたからそれで良いと考えるとスイッチの箱を作っているだけに過ぎず、なんとなくやったことがあるというような感想止まりになってしまいます。もしかするとスイッチを押しても通電させる思考に結びついていないことも十分考えられます。子供自身がスイッチのオンオフをスムーズに実行できるようになるため必要なことは、常に身近にある理科実験的内容に気付かせ思考し物事の仕組みを考えさせ実行させることだと考えます。

この理科的スイッチは子供たちが生まれながらに持っているものではありません。ですから生まれながらにして理科が苦手ということもないはずなのです。しかし小学高学年や中学生の中には理科が苦手と答える子供も少なくありません。ではどうしてそう答える子供が多いのでしょう。それはもう幼児期に深く関係しています。

理科に無関心あるいは苦手や嫌いを生み出すのは幼い頃に理科的内容に触れた経験がないことや理科に関心を寄せるスイッチ作りができていないこと、自然の中での体験が少ない、そして家庭の中でのお手伝いも希薄であるということが大きく影響していると言えるでしょう。

子供達は6〜8歳で自分自身が得意なことや苦手なことを明確にしています。よって幼い頃に理科実験的な経験がなければ食わず嫌いのような状況に陥ったり、勝手に難しいものと思い込んで苦手意識を強くします。しかし子供はもともと好奇心旺盛で新しいことが大変好きな発達を通過し、この時期にしっかりとバランスよく様々な経験をさせておけば食わず嫌いな状況は生まれないでしょうし、無関心ではいられないはずなのです。

日本語には『雀百まで踊り忘れず』や『昔取った杵柄』という言葉がありますが、幼い頃に楽しい面白いと感覚的な修得をしておくと学習期に入った時にその思いを糧に学ぼう・知りたいという意欲が芽生えるのです。時にレッスン中に実験を思い立ってしたくなる生徒さんもいますが、その時にもなるべくその実験の意図を説明してもらい必要あれば学習を中断して実験を優先することもあります。ただし今はそのタイミングでは無いと判断した場合には即却下となりますが、なるべくその思い立ったことは大切にどこかで再現はできないかと考えています。親御さんもできるだけ子供の興味や関心に耳を傾けていただきたいと思います。

昨日『世界でいちばん美しいこども元素ずかん』という絵図鑑を紹介しましたが、医学生の多くは元素の周期表をかなり深く学習している場合が多く、ご父兄の中にも元素周期表を幼稚園で暗記していた方や小学生で身の回りのものが元素の集まりでできていること気付いて感動したなどの話してくださったことがあります。やはり親御さんが科学に興味を持っておられると子供の興味や関心の目を育てることもハードルが低くなり飛び込みやすくなります。先ずは親御さんが理科実験を家庭でできるものがあるのかなにのかを調べてみることから始められることが第一歩かもしれません。

17、8年前のことですが突然生徒さんが「先生は18族が好き?それとも17族?」と質問されたことがあります。単独の1匹狼的元素18族と元素同士結びつきたい17族の質問であることが分かれば子供の言わんとしていることを汲み取ることができます。勿論私は18族ですが、多くの生徒さんと日々17族的化学反応を行うことに徹しているので時にフッ化キセノンのような状況を楽しんでいます。そのようなことを子供達と共有できた時は言葉にし難い喜びと嬉しさが押し寄せてきます。私自身学生時代は化学はそんなに好きではありませんでしたが、我が子と学び直しをすることによりある程度の習得をし直してきました。やはり子供を導くためにはそれなりに親も学習する必要があると考えています。大人になってからの学びは経験値もあるのでものすごく楽しくできるものです。

先週月曜の記事2024年7月29日『ものを並べる秩序性』を記しましたが、元素の周期表を学ぶと地球は勿論宇宙という大きな枠で秩序性を捉えることになるのでこの記事を記す経緯となりました。周期表から学ぶことは大変多くのことがあり、ギリシャ神話に登場する月の女神セレーネに関する34セレン、地球の女神のテルースに関する52テルルがあったりとギリシャ神話に結びつけ枝を広げて楽しむこともできます。また長いこと元素の最後だと思われた92ウランは天王星の外側を回る天体の名前が由来になっているので惑星や宇宙の話に持っていけることもで機、。う考えると科学という間口の広さを感じます。幼児期に於いてどの入口でもいいので一度親子で理科的世界を覗いてみるということが、子供達の可能性を広げる一歩になるでしょう。

是非とも小さい頃から身近にある理科的要素に触れる経験をさせてください。

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