提案『鉄棒遊び No.1』

原始反射の把握反射やギャラン反射に十分働きかけをした乳児は、1歳を過ぎると鉄棒にぶら下がる能力が驚くほど開花します。この開花した能力をしっかり鉄棒遊びに行かせるよう2週に渡り提案記事を記してまいります。今回は鉄棒の魅力を身体・精神・発達・社会的面からそのメリットを解説し、次回ご家庭での働きかけの提案を行います。

1、身体的なメリット

 ① 腕・肩・背中・腹筋の筋力アップ

鉄棒に掴まる・ぶら下がるだけでも全身運動になります。もちろん乳児の場合は親や周りの大人の補助と低い鉄棒で安全に行うということが前提となります。また回ることで上半身の筋肉とバランスも鍛えられます。


 ② 握力の向上

鉄棒を握って身体を支えるためには、自分の体重を持ち上げても離さない力が必要です。つまり、鉄棒のあらゆる技の「土台」が握力です。その土台はいつのタイミングで働きかけた方が効果的かはずばり原始反射に働きかけを行うことにあります。原始反射は私たち大人が頭で考える以上の素晴らしい力や能力を獲得します。そしてその能力の開花に合わせ促しを続けることが望ましいと言えます。乳児が棒状の物にぶら下がることを始めたら鉄棒をしっかり握ることを促します。すると指先の力や手の使い方も上手になり、のちの指先の器用さ特にボタンをはめ込む時のモータースキルに活かすことや鉛筆を持つ力や書く姿勢の安定にも役立ちます。


③ 体幹(バランス感覚)の強化

体軸とは単に腹筋や背筋の筋力だけでなく、頭から足先までを一直線に保ち、全身の力を無駄なく伝える“姿勢の軸” のことを指します。バランス感覚・姿勢保持・回転制御などに関わります。この力を伸ばすのが原始反射のギャラン反射です。この反射に働きかけをするのには親御さんも強さがあるようですが、特に生後1ヶ月頃に働きかけをしておくことをお勧めします。

鉄棒の練習は体軸(体幹の軸意識や安定性)をかなり効果的に鍛えることができます。重力に対して身体を支えたり、逆上がりや前回りなどは体の軸を保つ必要があるため体幹が鍛えられ、またバランス感覚にも優れます。ただし「どのような動きをするか」によって鍛えられる度合いが大きく変わるので詳細については来週の記事で述べることとします。




2、運動神経・感覚の発達

① ボディイメージの確立

鉄棒のボディイメージとは鉄棒運動(逆上がり・前回り・懸垂など)を行うときに、自分の体の動きや位置を頭の中で正確にイメージできる力、または体の感覚的なイメージのことを指します。自分の体を支えたり、動かしたりすることで身体感覚(ボディイメージ)が育ちます。

例えば逆上がり」を例にすると鉄棒を握ったときに自分の重心がどこにあるかを感じる、膝を引きつけるタイミングを頭の中でイメージする、体が鉄棒のどの位置を通るのか(鉄棒の上か下か)を理解する、回転中に自分の頭は今どちらを向いているか、手の位置はどうかをイメージするなどこうした「自分の体の位置・動きのイメージ」が鉄棒のボディイメージです。実はこのボディイメージを獲得すると、図形などをイメージするメンタルローテーションの力も磨くことになります。


② 運動神経の基礎づくり

揺れたり回ったりする動きで三半規管(平衡感覚)が刺激され、運動神経の基礎づくりになります。鉄棒での運動が三半規管に与える影響として、逆上がり・前回り・逆立ち回りなどで頭の位置や体の向きが激しく変化します。回転技で頭がぐるぐる回ることは三半規管が強く刺激され、逆さになると重力方向の感覚(耳石器)も働き、繰り返し刺激を受けることで 脳が回転や姿勢変化に慣れ適応能力が高まると言われます。この「慣れる」過程が三半規管を鍛え運動神経の基礎づくりとなります。


③ 柔軟性・可動域の向上

鉄棒を上手にそして安全に行うためには、体の柔軟性と関節の可動域が重要になります。柔軟性は筋肉・腱の伸びやすさ しなやかに動けることで力を出しやすくし怪我を防ぎます。また可動域は関節が動かせる範囲 技のフォームを正しくそして大きくするために必要なもので柔軟な筋肉があると関節の可動域も広がりやすくなります。この柔軟性と可動域の向上は乳児期からのボディアタッチメントで子供に体の部位の認識と使い方を教える必要があります。ベビーマッサージなどが効果的ですが日本にも童歌を使用したベビーマッサージに近いものがあるので是非童歌を紐解いてみるのも面白いでしょう。


④ 姿勢の維持や改善

鉄棒運動は背筋や腹筋が鍛えられることで普段の姿勢が良くなることが期待できます。背筋・腹筋など体幹が鍛えられ、肩甲骨まわりの柔軟性が高まり、バランス感覚を保ちながら体を支えるため正しい姿勢を取る感覚が養われます。姿勢維持に必要な筋肉の「使い方」が身につき姿勢の基礎づくりにとても良い運動であることは間違いありません。

一方姿勢改善には単に鉄棒にぶら下がり背中・肩が伸び、姿勢のリセット効果があります。1回30秒〜1分を1日数回行うと良いでしょう。また前回り・逆上がりは背中・お腹・腕・脚を総合的に使い体のバランスを整えます。

鉄棒の上でバランスをとるつばめの姿勢は背筋を伸ばす練習になり、「良い姿勢」の感覚を体で覚えられます。最後に無理な姿勢や反動を使うと腰や肩を痛めることがあるので、正しい姿勢で丁寧に動くことが大切です。




3、精神的・発達的なメリット

① 挑戦心と達成感を育てる

鉄棒をスムーズにできる子供はやはり原始反射に働きかけをし、1歳半前後から目まぐるしい成長を遂げている場合がほとんどで、多くの子供達にとってハードルが高い鉄棒遊びが容易にこなせます。つまり「辛い、できない、怖い」というところからスタートすることはなく、無識のうちに獲得した能力を発揮することになり挑戦する心を育み、挑戦することに何の抵抗も感じなくなります。「できなかった技ができるようになる」というチャレンジも嫌がらずに前向きに捉えるのが原始反射への働きかけを行った子供達の特徴でもあります。

一方でできないという印象から入った場合でも握力をつけ体の使い方を学び、挑戦し続ける努力を怠らなければ結果を出すことになります、すると自信ややる気に繋がりチャレンジ精神や集中力が育ちます。


② 集中力・注意力の向上

鉄棒運動は腕・体幹・脚など全身を使い、バランスをとりながら体をコントロールするため集中力の向上に効果がある可能性が高いと言われています。鉄棒には脳の前頭前野や小脳を活性化する効果があり、「身体の位置感覚(=固有受容感覚)」を鍛えることで、脳内の情報処理がスムーズになり、集中力や落ち着きが増し結果として集中力・注意力・判断力の向上につながると考えられています。原始反射に働きかけ鉄棒の能力が開花した子供たちに共通して言えるのが習得能力の高さなので、集中力の高さが確実に身についていると実感しています。


③ 恐怖心のコントロール

鉄棒の動きは地面から離れて回転したり、逆さになったりと、日常生活ではあまりしない姿勢が多くなります。私たち大人は経験を通して鉄棒遊びが容易に想像できますが、子供達にと高いところや逆さになることへの恐怖、落下やケガの不安などから生じる心理的な恐怖反応が3歳以降の子供達には感じますが、乳児には全くないのでその点は注意しておきましょう。

恐怖心とは逆上がりや逆立ちなどで 体が宙に浮いたり逆さになる瞬間や手が滑って落ちそうになる、または実際に落ちた経験がある、周りの友達が上手にできて自分だけできないことへのプレッシャーや恥ずかしさが子供達にとっては恐怖心になります。鉄棒の怖い体験を安全に繰り返すことで恐怖心を克服する力が身につきます。つまり鉄棒は反復することが重要なのです。




4、社会性・遊びの広がり

 友達と一緒に鉄棒遊びをすることで学校や公園で自然に仲間との関わりが増えます。また順番を待つ・協力するなどの社会的ルールを学ぶことが子供達の最終習得目標であり課題だと考えています。保育園や公園での遊びがより楽しくなり運動への興味も広がり、友達と教え合ったり競ったりすることでコミュニケーション力や協調性も育ちます。つまり鉄棒は単なる運動遊びではなく、子どもの社会性の発達にも関わる活動です。昨今は公園から遊具撤去が続いていますが、鉄棒だけは残してほしいものです。

① 協力や順番を守る

鉄棒は1本に一人しか使えないことが多いため、順番を守る・譲り合う経験が生まれます。友だちと「次やっていい?」「どうぞ」とやり取りする中で社会的ルールを学びます。


② 助け合い・模倣

上手な子の動きを真似したり教えてもらったりすることで、他者との関わり方や相互支援の経験が育ちます。教える側も「どう伝えたら相手にわかるか」を考えるため、共感性やコミュニケーション力が養われます。


来週の提案記事は今回の鉄棒のメリットを理解した上で、具体的な働きかけを提案してまいります。

Baby教室シオ

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