提案『議論と討論することの重要性 第1弾』
以前から自分自身の意見や感想をしっかりと述べる子供が少ないように感じています。自分自身の感想でさえも言葉にすることがない子供や「楽しかった。面白かった。すごかった。」など一言だけの感想を述べて終わる子供も少なく、その他に「忘れた。分かんない。」などの感想にもいたらない子供も残念ながら存在しています。親御さんは子供自身が自分の意見を明確に伝えることができるであろう3、4歳になって初めて言葉にする能力の育ちに気付きあたふたしてしまう現実も目にしてしまいます。
実は自分自身の意見を言えるのはいつなのかを遡って考えると言葉を自在に扱える3、4歳が始まりではなく、言葉を聞き始め自分自身の意見を言う思考の始まりのスタート地点が乳児の頃であることに遡ってしまいます。当教室では生後半年までは視覚と手指、粗大・微細運動を中心にトレーニングを行いますが、その後はカードを見せながら多くの言葉に触れさせていきます。つまりこの世の中には多くのものが存在し、それぞれに固有の名前を持っているのだという事を知らしめることも追加していくわけです。それはものの名前を覚えさせようという意図ではなく、言葉の音に触れさせるだけでなく多くの名詞の音を捉える体験に厚みを出していくということなのです。最終的ねらいは乳児自身が「この言葉聞いたことがあるぞ、なんだったけな?」という思考に着地させるということです。
この名詞を音で捉える経験はその後意味のある言葉なんだと理解が進み、多くのものを見ては「これ知っている。どこどこで見た。」「僕これ持ってるよ。」「食べたことがある。」など言葉を発することができない乳児でも内言語化がどんどん進んできます。そして言葉が出てこない乳児に「リンゴはどれ?パンダさんはどこ?」と質問すると指差しで教えてくれるようになります。1歳のお誕生日を迎えた頃には自分自身の気持ちや感想を発言させる促しを始めます。リンゴの絵を指差して「リンゴ好き?」とと問えばこくりと頷く子もいれば首を振る子もいます。「リンゴとバナナどっちが好き?」と問えばバナナを指さします。そして2歳以降は好きなものを指し示して「どうしてこれが好きなの?」と質問します。すると「好きだから」と自分の思いをおうむ返しに伝えてくれるようになります。この取り組みがスタートした頃は好きだという思い自体を言葉にできない子供もいますが、代弁してあげる取り組みをしつつ発語を促していくと『好きという思い』を明確に伝えてくれるようになります。そうなれば後はどこが好きなのか、どのように感じているのかなど明確な答えを返せるようになってきます。そして次に出させるのが「だって」「だから」という理由付けの言葉です。
これら一連の流れはそう易々と一朝一夕には育ちません。しかしその地道で弛まぬ働きかけを数年掛けて行うことで、私はこう思う、僕はこう感じる、こう考えるという意見が述べられるようになるのです。ご家庭の中でご両親が意識して育てなければ自分自身の意見や考えを述べる子供には育たないということです。実は親御さんの働きかけが希薄でも子供自身が自分自身で物事を感じ思考している稀なケースはありますが、それでも言葉を発するということに関しては的確な言葉の構築がなされなければ表面化するのは難しいと考えています。
実は途中入室の3、4歳以降の生徒さんの多くがこの道を通っていないのでほぼ言葉で思いを表現することが難しい状況にあると考えています。ところがこの時期だからこそ子供達が物事を考え独自の発想で意見を述べることができる機会が今まさに到来しています。
それがサンタクロースの存在です。
先日一人の生徒さんが「どうしてサンタさんは寝ている時にしかこないの?」という疑問符を私に投げかけてきました。よくよく話を聞いてみるとその風貌や顔が見たいというのでならばどんなサンタさんだと思うのか質問をすると、やはり絵本の中に存在する恰幅の良い白髭を生やしたサンタクロースでした。その後に「どうして起きている時にサンタはやってこないの?」と話すので「どうしてなのかな?」と質問を質問で返すとかすぐに「分かんない」と一言。質問を質問で返すと子供は考えようとしません。しかし「もしサンタさんの顔を子供たちが知ったら・・・?」と投げかけるとその生徒さんは「ん・・・」と言いながら考える様子を見せてくれました。分かんないと答えていた子供が思考する様子を見せてくれたら大躍進です。
前段の流れからお気づきかもしれませんが、乳児期からものを見て言葉の音に触れて思考をしてきた子供達とそうでない子供たちの差が3、4歳で白日の元にさらされます。思考をしていた子供たちは自分自身の意見を発言します。たとえその内容が稚拙であっても自分自身の意見として話しているのですから、次に繋ぐために思考力をさまざまなものとの関係付けて深めればいいのです。一方思考もできず発言もできていないからといって落胆する必要はありません。そのような場合は思考の種蒔きをすれば良いのです。「もし・・・だったら」「こんなことは考えられない?」「ママはこう思うんだけで、あなたはどう思う?」と少しだけ思考の間口を開けるお手伝いを親御さんがすればいいのです。それと同時に思考の選択肢を増やすという考え方でサンタクロースにまつわる絵本を多読してください。子供たちは姿を見せず自分自身の要望を聞いてプレゼントを贈ってくれるサンタクロースのことが大好きで、一度でいいから会ってみたいという思いを抱え想像を膨らませています。その想像を育んで思考に結びつけていけば自分自身の思いを口にすることは他の事案よりも効果覿面です。
サンタクロースに詰まっている不思議だと思うことを思考に結びつけ、自分自身の意見が述べられるようになるためにご両親とご兄弟姉妹や従兄弟姉妹、お友達と想像を巡らせて話をする事を実行してみてはいかがでしょうか。
0コメント