偉人『エミール・ガレ』

ガラス芸術の天才と呼ばれたシャルル・マルタン・エミール・ガレは、フランスのアール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家であり工芸デザイナー、陶芸家、家具デザイナーとして活躍し、その独創的で美しい作品は今もなお人気がある。今回はそのエミール・ガレの幼少期を通して希少で100年を経ても色褪せない芸術の真髄はどこにあるのかを紐解いていきたいと考える。

1846年5月4日、フランス東部のロレーヌ地方の古都ナンシーでガラス製品の製造をする父シャルル・ガレとオランダ系商人の家系の母ファニー・レーヌメールの間に誕生している。彼の育った古都ナンシーでは古から高級ガラス製品の製造が盛んで、父シャルルはナポレオン3世から注文を受けるほどの腕のある職人として記録が残っている。また母ファニー・レーヌメールは教養豊かな女性で母の文化的背景や芸術への理解がガレの感性を育むうえで大きな影響を与えた。エミール・ガレはまさにガラス工芸の盛んな街、父の仕事、母が与える教育的環境、そして遊びまわる自然環境から影響を受けている。

彼は幼い頃から花に囲まれて育ち、街には植物園があり野菜を売る露店も数多く、植物や昆虫に触れるだけではなく鉱物などから自然科学への興味も育てた。つまり彼の作品には植物や昆虫のデザインが施され、科学的なアイディアが投入されているのはこうした環境が大きく影響しているのはいうまでもない。古都ナンシーは現代はアール・ヌーヴォーの土地として近代的な香りがするが、体の弱いエミール・ガレ少年が120年前の自然豊かな土地を駆け回り多くの刺激を受けていたことが作品の中にも息づいていることに感慨深く、幼い頃に育まれるものが人生をも左右することに確信を持った。

エミール・ガレの作品と性格はかなり密接に結びついている。単なるガラス工芸家ではなく時に『深い思想を持った芸術家』や『自然と対話する詩人』と高く評価された。彼の作品を手元に置き、彼の作品集を見ていると彼の作品を通して色々なものが見えてくる。

結論から言うと作品のハードは父から強い影響を受けた。父シャルル・ガレは自然科学や文学哲学にも関心を持ち、息子エミール・ガレに幅広い教育を与えたと言われ、また父の経営する工房がエミールの創作活動の土台となり、工房の陶器製造を通じ陶芸の技術と素材への深い理解を見様見真似を繰り返していたのである。

一方彼の性格も含めたソフト面は母からの影響である。芸術家の中には破天荒さや自虐的な人、掴み所が無い人、猪突猛進的など周りがしんどくなる人物が多いような気がするが、エミール・ガレは一言で表すことができない多面性を持った人物なのだ。感受性の強い人で孤独を好む一面もありながらユダヤ人差別に対しては強い反対行動を起こす信念があり、倫理的な問題にも敏感で「芸術は思想を表現すべきである」と信じていた。孤独を好むのは肺の病が幼い頃からあり虚弱であったことが影響し、倫理的な行動を強く表明したことは母が与えたプロテスタント的価値観である誠実さ、道徳的意識、禁欲、個人の自立、識字と仕事への邁進という概念が深く影響している。つまり母ファニー・レイノーはドイツ系プロテスタントの家庭で育ち教養のある女性であったとされているからこそエミール・ガレの人格形成がその路線を辿ったのであろう。

エミール・ガレの人となりは信仰心の深い母の影響を大きく受けているが、プロテスタントはキリスト教の中でも識字率が昔から現代に至るまで大変高く、聖書を読むことを基本としているため宗教に関係のない本を読むこともまた知性を身に付ける環境を有していたのである。エミール・ガレはボードレールやヴィクトル・ユゴー、ゲーテの文学や詩を愛し、作品に引用することも多かったのはこの識字を重要視していたことが大きく関係している。また文学だけではなく彼が植物学、鉱物学、哲学、言語学など幅広い知識を持っていることも彼の育てられた環境が知性や教養深い人物に成し得た所以である。

そして彼の感性は読書を通して知り得た知識で磨かれた一面もあるが、虚弱体質でありながらも子供のころから自然に触れ植物や昆虫を採取し観察しスケッチすることに結びつけ磨かれちったことが影響している。まや鉱石を観察・収集していたことも多くの刺激を受け学びを行ったことがガラス工芸に反映もされた。

ここまでくるとかなり活発な人物で太陽的な明るさのある人物のように感じてしまうが、感受性がとても強く内向的であった一面もあり孤独を好んでもいた。この内向性はおそらく肺を患っていた幼少期からの影響を受けているのではないかと考えるが、虚弱で思うように駆け回ることができない時間を憂える感情を持ち精神的に繊細な性格を作り出してしまっていたのではないだろうか。しかしそのマイナスな部分が静かに療養しながらもスケッチができることや時間があるからこそ考えを巡らすことにも至ることができた。体の自由が効かないと色々なことを想像し思考を巡らし、普段考えも思いもしないことを深いところで考え感じてしまう経験が彼の人格や興味関心を持つものへの深い思考になったのは間違いない。

つまり彼の作品から感じる深いものや多面的なものが滲み出ているのは、彼の生い立ちや健康的課題、育てられた環境がなせる技なのだ。彼の作品を手元に置いて彼の深い精神性や卓越した技術、作品を生み出す詩的で文学的な一面、幼い頃から磨き上げた観察力と表現力、そして父から学び取ってきた科学的で向上的精神などが複雑に絡み合ったからこそのこれだけ人気のある芸術家となり作品が出来上がったのではないだろうか。

今日のまとめ。子供が大きく成長することができるのは、何よりも重要なのはエミール・ガレのように誠実で真摯的に物事に向き合うという精神を持ち、真面目に素直にそして楽しく取り組んでいる子供ほど伸びていると感じている。あの子も、この子も・・・。みんなそうであってほしいものである。











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