提案『大きさを測る No.5重さ』
生後3ヶ月ごろまでは痛さや痒さという感覚はとても乏しいものです。原始反射である掌握反射への刺激を送り、触れる、握る、触られるという感覚を数多く経験させていくことにより手指の感覚が敏感に働き始めます。そして乳児から幼児へと成長する段階で物を手にして重さを実感するまではモータースキルの精度を上げますが、子供が「重いよ」と発語できるようになるまでには時間を要します。物を手にして歩き出し、重いものをずるずると引きずったり、肘に袋を掛けて持ち運んだり、リュックに荷物を入れ背負わせてからやっと重さを実感し重さの比較ができるようになります。
それでは本題に入ります。重さ学習も学びに入る前段階として様々なステップを踏ませていきます。
1、物をもつ経験をさせる
昨今は子供に荷物を持たせずお母様が代わりに持つことで子供達の重さを理解する経験を奪っている実情があります。今でこそ笑い話ですが我が家では子供が買い物袋を持ちたいというので持たせたら、重かったのでしょう袋を引き摺り出し袋が破れ買ったものが1つ、2つと歩道に点々・・・と。後ろから私が拾って歩くということがありました。いつになったら荷物が軽くなっていることに気がつくのだろうと放っておくと案外早い段階で「あれっ?」と軽さに気づきました。多くのお母様は1個荷物を落としたら慌てて対処するかもしれませんがそれでは勿体無い。どうせ重さを経験させるのだから軽いも経験させれば良いと思うのです。その時買った物は傷みますがそれに変えられないくらいの印象を子供の中に残せるので失敗も大きな宝物です。重いものを持たせることはどんどんとさせましょう。
2、シーソーや鉄棒遊びを
子供に「重さ(質量)」を教えるには体験を通して感覚的に理解させることがとても大切です。そこで楽しく遊べて学習に繋がるのがシーソー遊びや鉄棒のぶら下がりです。シーソーは一目瞭然重さの比較ができます。「パパとどっちが重いかこのシーソーでわかるよ。実験だぁ。」と声掛けをしてスタートすると良いでしょう。
また鉄棒のぶら下がりは自分自身の体重が手や腕にかかるので重さをすぐに実感できます。この遊びの種蒔きを重さと結びつけた声掛けを行いながら実行していただきたいと思います。レッスンでは「ぎっこんばったん」と遊ぶおもちゃを使用することも1歳児で実行します。
3、絵本を活用しよう
シーソー遊びを行った後は絵本を活用し遊んだ経験を視覚化して理解を深めていく方法を取ると実体験したことがよりリアルに子供達の思考を深めることに繋がります。さらに絵本の内容によっては想像を掻き立ててくれるので、次に行うシーソー遊びをより楽しい感覚にさせてくれるでしょう。
4、身近なものの量の有無で比べる
子供は抽象的な数値をアナウンスするよりも実際にものを持つ体験をさせてから感覚的に「重い・軽い」の比較をさせると理解できます。
まずは明らかに重さの違うものを用いて「どっちが重い?」と聞きます。例えば500mlの飲料の入ったペットボトルと空の同じ大きさのペットボトルを持たせて違いを感じさせます。つまり有る無しの体験をまず行い『有る』=重さを感じる、『無し』=空っぽで重さをあまり感じないという経験を植え付けましょう。
5、量の比較をさせる
抽象的な数値を視覚で認知できるものを使用して行います。これも先ずは同じ入れ物に数量を変えた明らかに重さの比較ができる分量を入れて持たせます。1人では持てないけれど2人でなら持てるものや同じ大きさのペットボトルに量を変えた水を入れて一人で持たせるのも良いでしょう。視覚判断と持った時の手の感覚の重さの違いを体感で理解してもらいます。
また大きさの異なるペットボトルでの重さの比較も面白いものです。つまりここで理解してほしいことは「重さ=力が必要」と体で覚えることです。
つまり重い軽いを感じる遊びで身近なペットボトル・野菜果物などを用いて「どっちが重い?」「どっちが軽い?」と比べる体験を存分には行いましょう。
6、重さに関する言葉を使う
重さの取り組みがスタートすれば普段の生活の中で「重い」「軽い」「どっちが重い軽い」と声掛けを頻繁にかけるようにします。子供たちへの声掛けは一度や二度で意識が向くことはありません。もし残るとすれば強烈な印象があった場合のみです。よって日頃の声掛けが重要なのです。
「このおもちゃ重たいね」「どうして重いんだろう?」「この箱重いね、何が入ってるのかな?」「お弁当箱軽いけど残さずに全部食べたのかな?」「重い水筒が軽くて片手で持てるね。全部飲んだんでしょう?」など色々な言葉をかけながら思考へ結びつけてください。つまり重さの概念を言葉と感覚で結びつけるということの実践を行いましょう。
7、天秤ばかりの重さで上がり下がりで認知
レッスンで重さの学習は個人差もありますが2歳を基準に考えています。いきなり数値を読み取るようなものではなく、明らかに重いと下がる、軽いと上がるという感覚遊びに似たシーソ遊びのような重さを視覚で比較できるようにします。できればこの時に物の大きさの比較と数量の働きかけを同時に行います。どうしても天秤ばかりを使用すると子供達は喜びが優ってしまい遊びになってしまいますが、その遊びもまた観察していると発見があります。子供達が何を楽しんでいるのかを観察してみましょう。
8、はかりの数字を読む
実際に物の重さを測って数字を読んで重さと数値化を感覚で結びつけます。デジタルとアナログ両方のキッチンスケールを使用していろんな物の重さを測ってみましょう。重さと数字との関連を学ぶことにポイントを置きます。デジタルのスケールが主流になりつつある現代ですが、レッスンでは写真のはかりを使用して計量させてもいました。またプリント学習では計量できる最大量も変えて学習を促すのでより複雑なメモリを読む学びも控えています。よってできるだけデジタルではなく昔ながらのアマログ測りを読む練習を行なっておきましょう。
9、 料理を通して単位を学ぶ
料理は本当に色々な学びができる取り組みです。料理では大さじ小さじという表現が出てきますが、基本大さじは15g、小さじが5gという重さを図り覚えておくなどしても良いかと思います。我が家では足し算をしているときには大さじ2杯は15+15で、掛け算を覚えたら15×2で計算をさせてからスケールで計らせていました。そしてデジタルのスケールが主流になりつつある現代ですが、レッスンでは上記の写真のはかりを使用して計量させています。また材料の重さを手で持って理解できるくらいの回数をこなしていると「100gってこれくらいなんだ!」と実感でき、重さの感覚を身につけることができます。また料理工程では複数の材料を一緒に量ることも行うので大きな計算もこなせるようになります。薄力粉100g、強力粉350g、水200gなどと計算の練習にもなります。実生活の中で応用できる経験を数多くしましょう。
10、単位を学ぶ
1〜9までの取り組みをしたら本格的に重さの学習を行います。もちろん条件としては足し算引き算、場合によっては掛け算ができるようになればこの重さの単位学習に入ります。
mg (ミリグラム)、g(グラム)、kg(キログラム)、t(トン)の単位を使い始め、具体的な重さの感覚を感じ取りながら問題を解く方向に進めていきます。またこの学習では「単位の異なる重さの比べ方」「特殊な測りの読み取り方」「単位変換や換算」「文章問題」などもこなすことになります。単位の変換や日本では使用しない単位も知識として入れておきましょう。
キログラム(kg) 質量のSI基本単位
グラム(g) 1/1,000キログラム
ミリグラム(mg) 1/1,000,000キログラム
トン(t) 1,000キログラム
ポンド(lb) 約453.6グラム(米国など)
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