偉人『ヨハン・ゼバスティアン・バッハ』
今回は生徒さんからバッハについて「何が凄いのかを教えてほしい」と依頼が来た。詳しく話を聞くと学校の音楽室からピアノの音が聞こえ、中を覗くと同級生が弾いていたというのだ。きれいな曲だなと思ったので「なんていう曲?」と尋ねると「バッハの何たらかんたら」と答えたらしいが、タイトルが覚えられなくてバッハという単語だけ聞き取ったというわけだ。弾いていた同級生曰く「バッハは本当にすごい人なんだ」と話し「何がすごいのか?」と尋ねると「とにかくすごい」としか返事が返ってこなかったという。興味がない場合には「ふーん、そうなんだ」と終わらせてしまいがちなやり取りだが、彼は興味や関心があまりなくても言葉に対する反応がよく知らない言葉をそのままにできない一面がある。知らないことをそのままにできないその性格は探究心に繋がっている。「バッハの何がそんなにすごいのか、それが知りたいんだ。」とお母さんに尋ねてもちんぷんかんぷん。バッハの偉人伝を読んでみたもののクラシック音楽に知識が無くてよく分からなかったということで私にその解説のお鉢が回ってきたのである。そして彼は私に「とっても分かりやすくブログ書いてほしい」とのリクエストしてきたのである。『おっと、そうきたか』と内心困ったと思ったのだが、生徒にだけ頑張れというのも理不尽なものでこれは私も受けて立たなければと気持ちを切り替えたのである。
とはいえ、クラシック音楽にそんなに興味を持っていなかった彼が「綺麗な曲だ」と初めて関心を示したことを大事にし、さらに興味や関心を持つためにはどのような切り口からバッハの凄さを伝えるのか思案のしどころである。というわけで今回はバッハの発想力の凄さと依頼者の彼が大好きな発想力を有するレゴ遊びをの視点でこの記事をまとめることにする。
ヨハン・ゼバスティアン・バッハは、1685年に現在のドイツ中部にあるアイゼナハで生まれた。音楽一家として有名な「バッハ家」の出身で、父のヨハン・アンブロジウス・バッハは町の音楽家で、親族の多くもオルガニストや作曲家として活動しており、幼いころから自然に音楽に囲まれて育ったのである。しかし10歳で両親を亡くし、オルガニストの兄のヨハン・クリストフ・バッハに引き取られ、バッハはここで本格的に鍵盤楽器や作曲を学んだ。若いころから非常に熱心で、夜中に楽譜を書き写して研究したという逸話も残っている。その後、リューネブルクの学校で学びながら音楽活動を続け、各地の教会や宮廷でオルガニストとして働き、特にオルガン演奏の腕前は当時から高く評価されていた。
バッハはやがて、ワイマール、ケーテン、ライプツィヒなどで宮廷音楽家や教会音楽監督として活躍し、ライプツィヒ時代には代表作のブランデンブルク協奏曲、平均律クラヴィーア曲集、マタイ受難曲多くを書いた。生前は「偉大な作曲家」というより、むしろ卓越したオルガニスト・教育者として有名であったが、死後しばらくしてから再評価が進み19世紀にフェリックス・メンデルスゾーンらによって作品が広く紹介され、「音楽の父」またはバロック音楽を代表する作曲家と評された。バロック音楽とは今から300年ほど前にヨーロッパで流行したヴァイオリンやチェンバロを多く用いた音楽で、宮殿や教会で演奏されることが多くきらきらとして華やかな感じの音楽である。レゴでヨーロッパの宮殿を作るとしたら華やかで煌びやかな宮殿を作るとバッハの音楽が似合うかもしれない。できればクラシック初心者なら『G戦場のアリア』、『無伴奏チェロ組曲』『ゴルトベルク変奏曲』と順に聴いていくとよいだろう。
バッハのずば抜けている凄さは、聞こえない音を頭の中で聞くことができ、その聞こえない音の世界を形にすることができる再現力に優れていることである。幼い頃から積み重ねてきた音楽的知識を頭の中で音源化し、さまざまな発想力と音楽のルールに則って上手に使い美しくて格好いい曲をたくさん作り上げている。よりわかりやすく説明すると、右手は明るい「タータター♪」という旋律に対し、左手は「ドンドンドン♪」という強い別の旋律、さらに低音も独立して入れ込んだり、時には滑らかな別の音を入れ込んだりと一見バラバラのようなことをしていながら、全部が完璧に噛み合うという音楽を作り上げ、音楽界において異次元なことをやってのけた人物である。
このバッハの手法をレゴに置き換えてみよう。レゴを手にしてみるとわかるが寸法精度が正確で尚且つ幾つもの美しい形のものが存在し、それを単純なルールに則り巧みに繋ぎ合わせて無限に複雑なものを作れるという凄さがレゴ遊びには存在する。初めてレゴを扱う場合には、その仕組みを学ぶことから始めると比較的簡単なものを作ることはできるが、大きなものを作ろうとするとそう容易くは作り上げることができない。ましてや頭の中に浮かんだものを作り上げようとするには、かなりのレゴを扱う時間が必要である。レゴでいろいろなものを作る練習をせずに大作を作るなど到底不可能なことである。初心者から中級、上級へとステップアップしていくためには、レゴの組み立て方を理解しパーツの扱い方や接続の仕方を学び、多くの作品を作らなければ大作と呼ばれるものを完成しさせることはできない。何よりレゴが好きで毎日レゴの組み立てをしているうちに、ようやく説明書がなくても頭の中に思い描いたものを形にできるようになるのである。頭の中で思い描いた図面をもとにバラバラの部品をあれこれ入れ混ぜ、一見バランスが悪いものができそうであっても、仕上がった時には超巨大で格好いいものが出来上がる。これがレゴ上級者とバッハの作曲に共通していることだ。
バッハの凄さを一言でいうと「音楽のルールを極限まで美しく完成させたこと」、そして今回比較するレゴは単なるブロックに見えて、「極端に高いレベルの遊びが統合されていること」である。この両者に共通することはそれぞれに基礎固めがしっかりとなされ、発想豊かに頭の中にある事が具現化できる事であり、その事が好きでたまらないという事である。
最後にこう締めくくる。初めて出会うこと、初めて知ることは興味や関心を生む入り口であり、自分自身を豊かにする宝の山の入り口である。初めてを知ることから好きを一つでも増やせるように人生を歩んでほしい。すると自分自身の可能性が広がることになるのだ。
「好きこそ物の上手なれ」「好きは上達のもと」「道は好む所によって安し」「熱中する者は上達する」「好きに勝る教師なし」「好むことは学ぶことに優る」「楽しむ者にはかなわない」「之を知る者は之を好む者に如かず、之を好む者は之を楽しむ者に如かず」(知っているだけの人は好きな人に及ばず、好きな人は楽しんでいる人に及ばない)
自分自身の人生を豊かにしたいと思うのならばクラシック音楽、バッハを聴き齧るのも良いだろう。
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