提案『花火の仕組みを学びに』

8月になり花火の季節がやってきたと思っていたら、物価高騰と人員不足で花火大会の中止をニュースを耳にし、夏の風物詩が去年と同様減るのかと残念に思っていました。数日後余剰の花火を打ち上げるという花火大会の記事を目にし、花火を心待ちにしている人のためにも、花火業界を元気にするためにも夜空に浮かぶ美しい伝統は残してほしいと願うばかりです。

さて今回はただ綺麗な花火という鑑賞方法だけではなく、花火には人間の叡智が詰まっていることを子供に伝える前段としての記事になります。2022年に提案記事『花火鑑賞の薦め』(記事はこちら)もお時間があればお読みください。

上記の写真は我が家から見える花火大会の一場面です。「大きいなぁ」「きれいだなぁ」「いろんな色や形があるなぁ」という見方や感じ方があると思います。しかしみて終わりというものは大変勿体ないもので、子供達が五感で感じた花火を表現することは子供の可能性を広げることに繋がります。我が家も毎年花火を見ていて「うわぁ〜大きい。きれいだなぁ」という感想から、色や形に関する発言へと移行し、その経験や体験を必ず形にする(表現する)ことを実行させました。花火の絵を描いたり、工作にしたり、詩や作文にしたりすることは勿論のこと、また花火弁当と言ってご飯の上に彩り豊かなおかずを敷き詰めて、花火模様の切り抜きをした海苔を載せるなどし、花火表現を楽しんだものです。ただこのような表現は芸術や国語領域に働きかけることはできても、理科的な働きかけには至りません。これでは学びが止まってしまうということで、『花火の仕組み』を少しずつ子供に教えようということを考え、毎年1つの理科的内容の分野分けてアナウンスをしました。

実は花火には化学・科学・物理だけでなく、数学・力学・工学などの様子も含まれています。つまり花火に多くの学問が詰まっていて「小さな火薬の力を使って、配置を決め、決めた形・色・音を正確に生み出す」という高度な技術の中に理科的要素が組み込まれています。花火は単に「きれいな光」ではなく、化学・物理・工学など様々なものが組み合わさった現象として見ると大変面白くなるということを子供に理解してもらえるように働きかけました。また日本の花火はまさに理・数科的な学問と芸術、日本の伝統や文化が組み合わさった総合芸術とも言えるので、今回はそ夏の風物詩である花火を、将来子供が学ぶであろう学問を切り口に考えていただきたいと思います。

では項目ごとに簡単な説明をしていきます。

1、色は元素で決まる(化学)

花火の色は、化学の「炎色反応」という現象を利用しています。花火は単に色のついた火を燃やしているのではなく、金属元素が熱せられたときに出す光を利用して、夜空を色鮮やかに彩っています。しかしこのような説明では子供達には理解が大変難しいため、「元素ってなぁに?」というところから話を進めることになります。その説明をした上で、「花火の色は、絵の具ではなく『元素が出す光』なんだよ。」「花火が熱くなると、金属の小さな粒がそれぞれ決まった色の光を出すから、赤や青、緑などのきれいな花火が見えるんだよ。だから花火は、化学と物理が協力して作る『空に咲く科学の花』なんだ。」と伝えるようにしました。この説明だけでも子供に説明するのは難しと感じる親御さんもいると思いますので、次回の提案記事『花火の化学』で詳しく解説していきます。そちらも目を通してくだい。




2、大きな球になる理由(物理)

打ち上げられた花火の中には、小さなスターと呼ばれる粒が球状に並べられています。それが爆発すると、爆発の力がほぼ均等に外向きへ働いてスターが全方向へ飛び散るため、結果空中にほぼ球形の光が広がります。地上からは球の一部しか見えませんが、実際には立体的な球になっています。子供達に説明するならば、「花火は、丸いボールの中に入った小さな星たちが、『パン!』と開いて、四方八方に飛び出すから大きな丸いお花に見えるんだよ。」と伝えると、幼児から小学校低学年の子供でもイメージしやすく、物理の「力がいろいろな方向へ同じように働く」という考え方の入口にもなります。厳密にいうと外側から弾け、中心へと爆裂が移行します。すると先述の色の化学を念頭に置けば、色の配列も予測することができるでしょう。その内容に適した写真が見つからなかったため、花火が飛び散る様子をイメージさせたものを使用しています。



3、形や模様は配置で決まる(工学)

子供達にとって工学という言葉を理解することは難しいものかのしれません。実は花火には「色の工学」「飛ばす工学」「形の工学」「安全の工学」と大きく分けることができます。今回の記事では工学を「形の工学」に限定して項目立てしていますが、全ての項目で工学という学問は切り離すことができません。もしかすると大人でも「工学」とは何か?ということを理解していない場合もあるでしょう。よって子供には花火の形や模様のでき方を説明する前に、「工学とは何か」を理解してもらう必要があります。

工学とは科学で明らかになったことを使って、人の役に立つものや仕組みを作る学問のことですが、子供が理解できるように「科学は『どうして?』を調べる勉強。工学は『どうやったら作れる?』『どうしたらもっと便利になる?』「どうやったら人のためになるのか」を考える勉強なんだと伝えるようにします。その上で今回の「花火の工学」については、ハートや星形、魚、花、笑顔や輪が重なったような形や模様を『どうしたら思い通りの形になるかな?』を考えて、本当に作れるようにする学問で、花火師さんは夜空に絵を描くための設計図を考えているんだよ。」と伝えるとイメージしやすいでしょう。




4、音が遅れて聞こえる理由(物理)

この花火に関する音と光の関係は物理学です。物理学とは「自然界で起こることのしくみ」を調べる学問で、力・運動・重力・熱・電気・磁石などの学びがありますが、その中に花火や雷に関する音や光の学びがあります。子供達の中には親が教えなくても「どうして花火は光った後に、音が遅れてやってくるの?」ということに気づく子供がいます。これは雷を通した気づきに関係していると思われますが、1歳の頃に自然事象に働きかけをしっかりと行っていれば、獲得が容易である能力でもあります。

光の速さは約 30万 km/sですが、音の速さは空気中で約 340m/sです。花火が1 km先なら、光はほぼ一瞬で届き、音は約3秒後に届きます。そのために見えてから「ドン」と聞こえるということを子供達に理解させるには、やはり実際に花火大会に足を運ぶことが重要です。よって花火を見ながら説明すると、子どもはとても理解しやすくなります。レッスンでは我が家から見える花火の爆裂の動画を見せながら、光の後に音が届くことを確認させることもあります。




5、なぜ上空で爆発するのか(力学)

力学とは物が動くしくみや、物に働く力の関係を調べる物理学の分野ですが、いきなり力学といってもわからないので、『どうして物は動くのか?』『どうしてものは止まるのか?』『どうしてものは落ちるのか?』を調べることが力学であると伝えます。例えばボールを投げること、ブランコが動き徐々に速度が落ちて止まること、自転車が走る、花火が空へ飛ぶなど、『物がどうやって動くのか』を調べることを意識させます。

実は私の経験でも花火では上向きの勢いで空へ飛び、重力が下へ引っ張り、一番高いところで開くように作られているということを説明しても、きょとんとした表情をする子供は多いもので、うまく理解できていないんだと感じることがあります。ですから、よりイメージしやすい言葉にしてあげることが重要です。「花火は、ボールを空へ投げるのと同じように飛んでいくよ。上に飛ぶ力と、下に引っ張る重力があるから、一番高いところで開くように工夫されているんだ。これを調べるのが『力学』なんだよ。」と説明をすると、子どもは「ボールを投げる動き」と「花火が飛ぶ動き」が同じ物理の考え方であることをイメージすることができます。ただ重力が下へ引っ張るということの理解は難しいと言えます。まずは日常の中で繰り広げられていることと照らし合わせながらわかることからイメージすることが重要だと考えます。




6、形が変わる理由(空気抵抗・風・重力)

爆発直後はきれいな球でも、空気抵抗や風、重力の影響でだんだん下へ流れたり、形が崩れて消えてしまうのが花火の儚さです。日本人であれば、その儚い姿もまた美しいものだ、味のあるものだ、趣があると感じてほしいと考えます。よって子供達には「花火は最初に決めた形で飛ぶけれど、空ではいろいろな力に押されて少しずつ形が変わる」と伝えて観察してほしいものです。

空気は見えないものであり、実は物が進むのを少し邪魔する力があることも理解しなければならず、花火の光る粒も空気の中を進むので、少しずつスピードが変わり形が変化すること、また風があると、光る粒が横に流れる丸い形が少しゆがむこと、また地球には重力という物を下へ引っ張る力があることを伝え、花火の粒も最初は横に広がるが、少しずつ下へ落ち最後は消えるという動きになることを理解してもらいます。その上で「花火は、最初は計算されたきれいな丸い形になっているけれど、空では空気の邪魔する力(空気抵抗)、風、地球が引っ張る力(重力)が働き少しずつ形が変わることを実際に目で見て実感してほしいと考えます。

花火を見るときの「科学チェックリスト」

次に花火大会へ行くなら、次のことを観察してみると科学的な視点が深まります。化学、科学、物理・・・との学びを知識として入れる前に、このチェックリストを活用して実際に目で見たことをそれぞれの項目に照らし合わせて理解を深めてほしいと考えます。

① 色ごとに使われている元素を予想する。

② 爆発してから音が聞こえるまでを数え、距離を見積もる。

③ 球がどれだけ対称か観察する。

④ 風でどちらへ流れているか見る。

⑤ 同じ色でも明るさや燃え方の違いを比べる。

⑥ 火花が尾を引く花火と、一瞬で消える花火の違いを観察する。

こうして見ると、花火は単なる娯楽ではなく、化学(発光)、物理(運動・音・光)、材料科学(火薬や金属粉)、工学(設計・安全性)が一つの作品として融合した現象だと分かります。科学の視点を持つことで、「なぜあの色なのか」「どうやってあの形になるのか」といった疑問が増え、花火の見え方が大きく変わります。そうなると単に「大きい、きれい、美しい」などの見え方から思考をかなり深め学問に近づくことができます。

今年の花火は子供の思考力を深める味方に繋げてみてはいかがでしょうか。

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