偉人『ダグラス・マッカーサー No.2 失敗』
我が教室に通う生徒さんはかなり自信に満ち満ち溢れている子もいれば、淡々としている難問に立ち向かう子、負けん気が強くて難問にぶつかると悔しさを滲ませる子、間違えてしまったことに意気消沈するがすぐに立ち上がって再トライする子など、かなり自信を持って何事にも挑戦する生徒さんが多い傾向にある。これは早取りの賜物であるのも事実である。おそらく自分自身はできるのだと自覚しているのではないだろうか。しかしできる子供にも平等に課題や難問がこの先待ち受けているのは間違いない。どのように進めばいいのかを、今回は先週取り上げた偉人『ダグラス・マッカーサー 』を1つの例として考えてみよう。(先週の記事はこちら)ダグラスもまた子供の頃からかなり優秀で、社会人になってからも有能であった。ところがそんな彼も失敗を経験している。彼の失敗談に注目すると、単なる英雄・名将というイメージとはかなり異なり、強烈な自尊心と同時に非常に優れた現実適応力を持つ人間だったことが見えてくる。有能が故にその自信が時に足枷になり、自分自身の立場を危うくし職まで失うことになってしまった。今回は彼のそのような心情や行動から多くのことを学び、子育てに活かして欲しいのである。特に子供が僕・私は他者よりも優れていると考えている節があるのであれば、親はそこに注視し、人生に於いて何が重要なのか、自分らしさとは何か、他者とどのように向き合うべきかを子供に教えなければならない。その動機付けにしてほしい。
1、間違えや失敗を自分の中に仕組みとして入れ込む
ダグラスの失敗といえば最も象徴的なのが、朝鮮戦争で中国軍の参戦を過小評価したことである。1950年国連軍が北朝鮮を押し返し、中国国境に近づくと彼は中国が大規模に介入する可能性を低く見積もった。しかし中国人民志願軍が大規模に参戦し、国連軍は大きく後退したのだ。「自分の作戦なら勝てる」という彼の自信が、敵の能力を冷静に見ることを邪魔してしまったのだ。彼は第二次世界大戦で数々の成功を収めていたため、その成功体験がかえって判断ミスを助長したのだろう。ダグラスの失敗から見えるのは単純な「無能さ」ではなく、成功した人間が陥りやすい過信である。つまり「自分は間違えない」という自信が、判断を曇らせ失敗を引き起こしたのだ。主人がよく言うのだが、「人間は間違いを起こす生きものだ。それも何回も・・・」と言って含み笑いをする。「おまえさん、また何かしでかしたの???」となるが、ダグラスにとって必要だったのは、勝利を確信して突き進むことと同時に、万が一失敗した時のことや戦争であるが故の最悪のシナリオを想定しておくべきだったのではないだろうか。自信に溢れたっていい、ただ人間は間違えるしミスもする。その時にどう立ち回るかを想定して行動を取れるようにすべきである。もし子供たちが自信に満ち溢れて日々を過ごしている場合、親目線で考えると成功を積み重ねて達成感を味わって欲しいと考えるだろうが、実はその右上がりの調子の良い時にこそ、失敗する体験や経験をさせておくべきである。どんなに優秀な人物でも間違えることはあり、失敗することだって普通にあることだ。ただ重要なのは間違いや失敗を悔しがることでも、自分のモチベーションを下げることでもなく、人間は誰しも間違えるものであるという考えを自分自身の中に仕組みとして確認することではないだろうか。そして失敗してもそこか学びを得て立ち上がればいいのである。
2. 「プライドの高さ」を「人の意見を聞くこと」にシフトさせる
ダグラスは軍人として非常に有能だった一方で、自分の権威を傷つけられることを極端に嫌う人物でもあった。朝鮮戦争ではトルーマン大統領と戦争の進め方をめぐって激しく対立し、第三次世界大戦に繋がる危険性を考えたトルーマンは、彼を司令官から解任してしまう。ここから見えるのは、「自分が正しいと思ったことを曲げない」というダグラスの意思の強さが、組織人としての限界を招いたことである。トルーマン大統領の意見に耳を貸さず、公の場で大統領の方針とは異なる主張をしてしまい解任された。もしダグラスに自分と反対の意見をあえて聞くということができていれば、局面は変わっていたであろう。彼のように大きな成功を経験した人ほど、「あなたの考えは間違っている」と言う人が少なくなる。だからこそ本人が意識的に人の意見に耳を貸す必要があるのだ。しかし小さな子供でも自信に溢れている場合には、人の意見に耳を貸すことが難しいのであるから大人はそれ以上に大変難しいのである。
ではどうすれば良いのか、大人は自分自身の責任で考えてもらうとして、子供の場合には乳幼児期から「できない」「失敗をした」と子供が訴えてきた時にこそ、「こうしてみるとどうかな?」「他にどんな方法があるのかな?」「こんな方法もあるかもよ」と子供の前で色々な提案をすることで、自分とは違う見方があるのだと気づけるはずである。このようなことを繰り返しているうちに、人の意見に耳を貸すことができるようになるはずである。
3. 相手の思いを気遣えるようになれば
ダグラスは朝鮮戦争では頑固さが大きな問題になった一方、日本占領では非常に柔軟な現実主義者として振る舞った。彼は敗戦した日本を徹底的に破壊・報復するのではなく、日本の統治機構を利用しながら改革を進め、さらに戦後日本の安定のため天皇制を利用することも選択したのである。これは彼が自分が何をしたいかということより、「日本をどうすれば安定させられるか」を考えた。つまり彼はプライドが高いにもかかわらず、目的のためなら意外なほど現実的になれる人物である。この二面性が非常に興味深い人物ではあるが、この二面生で失敗した話もある。アメリカの国会で敗戦国ドイツのことを聞かれ、「ドイツは大人である。我が国が科学・芸術・文化などにおいて45歳ならばドイツも同等であるとし、日本については歴史こそあるが12歳である。」と発言してしまったのである。それまで日本での活躍が日本国民に認められつつあり、マッカーサー記念館が作られる話が浮上していたがこの答弁をきっかけに一気に日本国民の思いは冷めていったのである。しかしその発言は日本を批判するアメリカ人から日本を守るためだったとされている。彼なりに日本の立場を擁護する発言をしたつもりであっても、そうは思われなかったのである。もし彼が日本国の文化や歴史をもう少し深く理解しようとする行動ができていれば、彼の評価はまた違ったものになったのではないだろうか。相手を気遣える人物になれるかどうかも幼い頃からの心育てに深く関係している。おそらく彼の受けた身内からの教育は、彼の心よりも理想育てに重きが置かれていたからであろう。
4. 長所と短所は紙一重
ダグラスの失敗を追っていくと彼には強烈な自信がある一方で、自分の判断を本当に疑ってくれる人間を遠ざけやすい危うさが見えてくる。成功している人ほど「自分についてくる人」と「自分に反対してくれる人」を区別しなければならない状況に置かれてしまうが、そこには必ずと言っていいほど相手を見極める冷静さが必要で、ある程度の距離感を保たなければならないことを理解しておく必要がある。しかし彼の場合には後者との関係が悪化したことが、朝鮮戦争での判断にも影響したと考えられる。これは現代の組織でも非常に重要な教訓で、自らを英雄だと信じるほどの自信を持ち、その自信によって大きな成果を上げることができ、その同じ自信によって大きな失敗も引き起こしてしまったのだ。つまり彼の魅力と弱点は実は同じ根から生え、長所を裏返すと強烈な自信は過信に、決断力は頑固さに結びつき、理想を追う力は現実の過小評価、強いリーダーシップ は独断、自分を演出する力は自己顕示欲、信念の強さは他人の意見を受け入れにくい、戦略的思考は自分のシナリオへの固執となり、彼の成功と失敗は表裏一体であると言える。つまり長所と短所は別々のものではなく、同じ根っこから生まれたものである。これはダグラスに限らず、大きな成功を収めたリーダーほど注意しなければならない人間心理でもある。
子供を育てていく上で我が子の長所はこうであ理、その長所の裏に隠れている短所は何かを考えた上で、短所を消滅させていくことを親が理解しなければならないと考える。
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