偉人『土方歳三』

前回の坂本竜馬が世界を視野に日本の行く末を考えていた立場なら、今回は自らの信念を貫こうと幕末を駆け抜けた人物『土方歳三』に目を向けてみた。

言わずと知れた幕末の幕臣、新撰組の冷酷非情な鬼の副長と呼ばれ、武士以上に武士らしく散っていった人物である。

彼は新撰組を天下一の組織にし、近藤勇の名を世に知らしめ大名にすべく自ら節義ある生き方をした。

ではいったいなぜ彼が身分を越えてまで武士になることを望み、戦いに身を投じたのかを彼の幼少期から考えてみることとする。

歳三は天領地の豪農の十人兄弟の末っ子として誕生した。父母は歳三が幼い時に没し、家を継いだ次男夫婦に育てられ、菩提樹の山門の木に登り、鳥の巣の卵を通行人に投げつけるなど幼き頃は乱暴な少年を表す「バラガキ」とあだ名がつけられるほどだった。

風呂上りに大黒柱で相撲稽古をする子であったことから、かなりの腕力を持て余していたことは言うまでもない。

そんな彼が育ったのは幕府直轄の天領地。しかしその当時の江戸は治安崩壊が急激に起こっていた。自らの土地、家、家族を守るために農民でも実践的な剣術を習得し自衛を迫られていたのだ。今で言う治安維持のための特殊部隊とでも言うべきもの。

武士の学ぶ剣術とは違い、凶悪な者達と対峙するため命を張るため、どんな手を使ってでも相手を殺傷する技を多く学んでいたのだ。

彼の武士よりも武士でありたいという信念を貫く強さは、士農工商の身分を越えて生き抜くために生み出されたものであり、並々ならぬその反骨精神のすさまじさはこの背景があってこそだった。

異国の脅威から国を守るという考えの立場と、あくまでも天領地出身の将軍のために尽くすという立場では見ているものが違う。滅び行く旧幕府軍の行く末も賢い歳三なら感じていただろう。しかしそれでも彼が降伏せず戦い続けたのはどうしてか。

また規律のない烏合の衆をまとめるために厳しい局中法度を定め、身内の粛清まで行う彼のもとになぜ人は惹きつけられたのか。

これまでの経験から現代の子にも息づく彼の心理とは何かを考えてみる。

この仕事をしているといろいろな家庭環境にある子供達に出会う。

結論から言うと困難に直面した子供ほど強く、譲れないものを持っている。

例えばご両親のどちらかを亡くしてしまった子、大病を患った子、経済的に苦労してる子は、物事に対しての光と影を知っているだけあり精神年齢はものすごく高い。

時に困難から逃げ出す大人よりも逞しく、自らの置かれた環境下でベストを尽くそうとする姿が、何を感じどう思っているのかと考えただけでとても意地らしく胸を打たれてしまう。

小さな子供達の心に灯された思いはその子の人生に深く刻まれていく。自らの力では抗えないものを受止めその中でどう生きるかを考える子、深くは考えていないように見えるが何かに導かれているようにさえ感じる子さまざまだ。

孟子の言葉にあるように『天の将に大任を是の人に降さんとするや、必ずまずその心志を苦しめ、その筋骨労す』艱難辛苦を受取りそれを昇華した者だけが、人の傷みを知り、優しさを与えられ、人としての器が大きく成長するのだと確信している。

きっと土方歳三を突き動かしたものは逆境を受入れ立ち上がる強さがあったからであろう。自ら火中の栗を拾いに行ってでも近藤勇に尽くす意志であり、農民の出でありながらも武士以上に武士らしく生き切ることへの反骨精神であり、形勢不利で結果が見えていてもそこにまだ前向きに捉える精神の強さ、優しさに周りの人間は惹かれたに違いない。

どんな時代になろうとも人は逆境を受止めるだけの覚悟があれば、必ず何かを手にできるのだ。そして子供の場合、大人の偏見や筋違いの教えではなく、全うな心の持ち方さえ教えていけば道を逸れることはない。それだけ子供というものは大人以上に強く逞しいものだ。



土方歳三・・・彼は常に逆境から立ち上がる強さを持っていた。

また金や権力、名声、地位・・・人間にとって高みに昇れば欲しくなるものにさえ目を向けず、一心不乱に初志貫徹する強さはお見事だ。

今もなお現代人が彼の虜になるのには、見た目の美しさもさることながらこうした精神性に惹かれるからに違いない。

ただ我が生徒には意志を通すことも重要だが、世の中の流れをよく見ること、そして周りが見えなくなると取り返しがつかない事もあると伝えておきたい。


異国情緒漂う大好きな街 函館。八幡坂から真っ直ぐにのびる道の先に海がある。この風景を見た瞬間、歳三の『武士よりも武士らしく生きる』という真っ直ぐな信念が頭を過ぎった。

彼がもしこの風景を見ていたならば降伏し別の選択肢があったのではないかとさえ思う。

五稜郭タワーからの圧巻の景色は、旧幕府の最後の砦で終焉を感じながらも困難に立ち向かい、激動の人生を生き切った歳三の人生は一体なんだったのかと虚しくもあり、彼を本当に知る人々が語った彼の清々しさえも感じさせる美しい眺めであった。

五稜郭にはソメイヨシノが数千本植えられている。桜の花が散るが如くこの地で武士となり天に昇った彼は、今のコロナ禍の日本を見て何を思うのだろうか。

火中の栗を拾いに行く気骨のある政治家の不在に嘆くのであろうか・・・

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