絵本『いっぽ、にほ・・・』

今回はお母様やお父様にお勧めの作品です。この絵本の素晴らしさに気付くのは子育てが一段落した場合ですが、この作品の琴線に触れるべきは今子育ての真っ最中にある人。しかし子育て中の場合、あまりの忙しさに子供のゆっくりとした行動に歩調を合わせようと思ってもそう容易いものではありません。だからこそ読んでいただきたいと考えています。



ストーリーは小さな女の子とお母さんが散歩に出かけます。すると女の子は小さな黄色いクロッカスを見つけます。お母さんに促されて歩を進めますが、直ぐにあたらしいものを発見しなかなか前に進みません。いっぽ、にほ、さんぽ・・・と何かを見つけてはまた同じように立ち止まる。いっぽ、にほ、さんぽ、よんほ・・・次々とあたらしいものを見つけては立ち止まることを繰返しあてどないぶらり散歩が続きます。

いつも親の目線で通る道や親の都合で急ぐ道とゆっくりと子供と歩みを進める道、いつもと同じ道を通っているはずなのに子供の目線で歩いてみると意外と新しい発見があります。また一緒に歩くことでゆっくりとした時間を設けることができ、楽しい親子の会話を楽しみ思い出を紡ぐことができます。

小さなアリや細い小枝も、葉の色や形の違いや空に浮かぶ雲だって話題にすると同じものを見る分かち合いができます。またそこから子供らしい表現に感動や感心することもあります。そんな経験を肌で感じることができた親御さんは、その時間のきらめきや重要性を感じぶらり散歩の時間を設けようとします。一方この経験をしないまま日常の忙しさに追われているとせっかくの子供の成長や感性を育てる機会を失いかねません。

この絵本には子供の成長に欠かすことのできない要素が沢山詰まっています。以下に記すことだけではなく副産物もあるでしょう。

1、何かを発見する喜びを経験すること

2、人と歩調を合わせること、同調すること

3、人と同じものを見て共有する楽しさを味わうこと

4、会話をする楽しさや言葉の獲得、表現の広がり

5、歩き続けることの練習、我慢して歩くことで忍耐の獲得

6、新しい物事への挑戦、勇気を出しての冒険

7、自分の住んでいる町の敷写しができ社会性に目を向けるようになること

8、親子の良好な関係や親への思い出のギフト、


「ほら、歩いて」「急いで、時間ないよ」「そんなもの拾わなの」「ゆっくり見るのはまたあとにしようね」など、忙しなさで心の余裕をなくす経験を優先させて、あの時どうしてそんな言葉を掛けたんだろうと後悔しないように、ゆっくりと歩を進める心と時間の余裕を持ちましょう。子育てを終えた者から言うと、あの幼子と共に歩いた陽だまりや風の香り、冬枯れの木立がアンティークレースに見えたあの美しい瞬間に時を戻したいと懐かしく思うものです。どうぞこの絵本で心の栄養剤、心のワクチンを打ってみるのはいかがでしょうか。



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