絵本『空想化石はくぶつかん』

石になりし生物の生きた証を読み解くために研究や調査を行う博物館にスポットを当てた空想物語。

鉛筆や色鉛筆の緻密な描線で画かれたこの作品は、派手な印象はないものの並んでいる絵本の表紙の中でも群を抜いて目立っていました。では絵本の世界を覗いてみましょう。

「あれ、こんな 所に  こんな  たてもの  あったかな。」

数億年も眠りについていた化石たちが女の子の来館で目覚めはじめるのでした。

女の子の来館を待ちに待っていた恐竜の化石が、生きていた頃を空想して欲しいと声を掛けてきました。

化石たちが復活するのは彼女の空想の世界だけ。シーラカンスの化石を見ていたかと思えば、「あたしゃ  シーラカンス。」と話しかけられ、たちまちそこは1億年前の海の中に。

羽毛恐竜アンキオニムスが鳥に進化する様子を空想したりと自由自在に空想の世界を変化させます。

絵本の世界を大切にするためにもここまでの紹介に留めます。この先どんなストーリーが広がるのか空想してみるのもよいかもしれません。

空想を楽しみながらも実際の研究結果が画かれているこの絵本は、オリジナリティを楽しみながら知識を獲得していくリアリティのない世界にリアリティを落としこんでいくような不思議な作品です。自由に想像してもいいけれど研究や調査結果はこれからも続くというような余地を残した部分が、鉛筆画の色味となって表現されているようでもあります。いろいろな解析から近い将来本当の恐竜の世界の色味が解明されるかもしれません。

明日は子育てサジェスチョン『博物館・科学館の薦め』です。併せてお読みください。

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