偉人『マイヤ・プリセツカヤ』

20世紀最高峰のバレリーナ・マイヤ・ミハイロヴナ・プリセツカヤ。彼女の『瀕死の白鳥』はバレエに縁の無い人であっても見ておくべき作品である。舞台上に何もない、彼女ただ一人が白鳥になり踊る姿は美しくもあり、死を予感しながらも生きようとする姿は不遇の人生を経験したから彼女だからこそ表現できた名作である。

2015年89歳でこの世を去った人物であるから偉人に適するかという点も気にはなるのだが、彼女のバレエ人生と不遇に逞しく立ち向かい、世界から賞賛され人物であることから精神面の高き人物として子育てに於けるヒントは多くあると考え取り上げることとした。

1925年モスクワのユダヤ人の芸術家庭に生まれ父はエンジニア、母は元映画女優、伯父叔母はボリショイバレエ団の踊り手という中で育つ。当時はスターリン体制下である日突然両親が連行された。父の兄がアメリカにいるという理由でスパイ容疑をかけられ父は銃殺刑に、母はカザフスタンへ下の弟共に流刑された。幼くして両親を失った彼女は母方の叔母であるバレリーナのスラミフィに引き取られ、上の弟は伯父に引き取られた。

とてもやんちゃな幼少期で彼女の運動能力の高さに気付いた両親が、8歳でバレエ教育を受けさせることを決断した。その後紆余曲折あり踊りたくても踊れない環境下で過ごし逮捕覚悟で舞踏学校へ戻り、18歳で名門国立モスクワ舞踏学校を卒業した。それから国立ボリショイバレエ団に入団し65歳までソリストとして活躍する。父の消息が分かったのは50年余り過ぎてからである。子供の目の前から親がある日突然姿を消し生死も分からず過ごす日々。無力の子供が何を糧に生きるか、生きていけるのか考えてみてほしい。なんと恐ろしいことか。


モスクワ舞踏学校で頭角を現し、ソリストとしてソ連国内で最高のポジションを常に維持し演舞するも海外での公演に参加することは敵わなかった。なぜならスパイ容疑をかけられ無実の罪で粛清をされた父の子として亡命するのではないかと海外公演に参加を許されなかったのだ。また常に共産党の秘密警察に監視される生活であったにも拘らず、強く舞台の上で自分のなせることを成した逞しい表現者である。

彼女の人生は私達が想像できないほどの戦いの連続であった。実力がありながらも理不尽な待遇を受け華々しい活動ができず、ようやく海外での活動が許されたのは34歳になってからである。すると絶賛の声が各国で上がり彼女の代名詞である『瀕死の白鳥』は高い評価を受け世界的なプリマドンナに一躍のし上がったのである。長くしなやかな手の動きで死に行くことを覚悟しながらも尚生きようとする白鳥の姿は、まるで政治的弾圧で翻弄されながらも強く生きようとしたマイヤそのものである。

マイヤの想像を絶する幼き頃から長年続く苦悩、彼女の持つ美しさと憂い、力強さと儚さ、情熱と冷静さから我々は何を学ぶべきかを考えてみる。

人間は誰しも何らかの逆境を与えられているように思うが、それらを乗越える人には3つの大きな特徴があり、最低この3つを獲得すれば精神性の強さを獲得できるそうだ。子育てのヒントとして取り入れてみてはどうだろうか。


1、全てを学びと考える。

どんなに辛い経験からも学ぶことができ、自分自身を成長させてくれるものだと切り替えができる強さを持つことが、逆境を乗越えられるかの大きな鍵を握る。このような考え方に行き着くことが出来るためには、子供の頃からの困ったことやできないことへの対応を経験させる必要がある。


2、自分の運命は自分で決める

どのような環境に置かれようとも自分自身の力で決めて行動することによって、自分自身の運命は変えられると考えている。幼い頃から自分自身で決めることができる環境を与え、少しずつ自立の形を教育の中に取り入れていくことが重要である。全てが親のお膳立てや指示によって子供が行動をするような環境では、自分自身の人生でありながら人に頼って生きることになってしまう。これほど愚かなことは無い。子供が自身で決めてよいことは子供に決断をさせてほしいと考える。但しその子供が選択する決断は躾という土台なくしてはただの我がままに振り回されることにならぬよう注意が必要である。


3、相反する考え方を柔軟に行う

人間は立ちはだかるものが大きければ大きいほど、重ければ重いほど悩み苦しむものだ。しかしそれを乗越えられる人物は相反する考え方を持っている。例えば悲観するようなことが起きてもやがて悲観を悲観で終わらせず、ある意味悲観を楽観に切換え立ち上がる。人間の二面性のようなものでもあるが、人によっては悲観が悲観で続き終わる人もいるのだ。この考え方も子供の頃からの環境因子が強い。マイナスの出来事をマイナスで終わらせない、プラスに転じさせるためにはどうすべきなのかを子供の頃から導く必要がある。


マイヤ・プリセツカヤ生涯現役の最高峰のバレリーナである。彼女の人生を考えると人間性が捻じ曲がり世の中を恨んで生きていてもおかしくない厳しいものであるが、彼女はバレエを通し人として成長し、苦境をバネんにし表現の中で生きた。大きな壁がそそり立つ度にこの状況下で何ができるか、何をすべきなのかを実行した逞しい女性である。


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