絵本『やまからのてがみ』

千世繭子さんと高野紀子さんの柔らかく温かみのあるシリーズの中の1冊をご紹介します。

柔らかく美しい色使いの風景や光景にリアリティ溢れる写実的動物たち、そしてファンタジー溢れる物語です。

会津雄国山麓の山や森がこの物語の舞台。秋色に染まる天高い空を郵便係りのカラスがツキノワグマに頼まれてたくさんのお手紙の配達に出掛けます。

このような可愛い絵本は女児は年齢を問わず好みますが、男児は特に乳児の頃から可愛い作品に触れさせておくことが肝心です。乗り物や冒険物を好む年齢になる前に読み聞かせをし絵本の許容範囲を広げるようにしておきましょう。では少し絵本の世界を覗いてみましょう。


最初に届けた先はアナグマ家族のもと。「大きなおまんじゅうがならんでいます。」という表現に思わずクスッと笑う子供達。秋だからいくらでも食べられるという一文にどうして??と疑問が湧く子や今食べておかなきゃだめなんでしょうと話す子と反応は十人十色。ほのぼのとした作品のイメージを崩さない程度に間もなく訪れる厳しい冬に備えた話をする必要もあるかもしれません。それにしても可愛いぽんぽこお腹です。

カラスはお手紙を配達中に1通落とし紛失してしまいます。時に忌み嫌われるカラスですが、手紙を失くしてしまったと項垂れる表情がなんとも切なく感じます。

カラスは配達をしながらそのお手紙を見かけなかったかと山や森の動物たちに尋ねますが・・・

ツキノワグマが出した手紙の内容は何だったのか、そして失くした手紙は誰のものか、受取った動物たちはその後どのような行動をとるのかなど、その展開が気になることでしょう。

この作品は会津雄国山麓が秋色に染まる素朴な風景と動物たちの世界の一体化が美しく描かれ、まるでおぐにっぷの山を歩いているかのような感覚に陥ります。巻末には絵本に出てきた動物や植物の解説があり、秋の山に溢れる植物や動物の生息地や体の特徴、なぜ動物たちにとり秋という季節が重要であるか、食物連鎖さえも想像させる内容が補足されています。

このような美しい作品を読む度に自然を壊さず人間は生きていけないのか、次世代に大人の私達が残すものの責任を痛切に感じてしまいます。美しいからこそ今が見えてくる、そしてその先の自然環境を想像してしまえる作品でもあります。どうぞ秋深まる絵本をお手元に。

Baby教室シオ

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