絵本『ピアノはっぴょうかい』

モノクロの世界観に赤色の挿し色が主人公のももちゃんを引き立て視覚効果の強い作品です。ピアノ演奏の出番を今か今かと緊張しながら舞台袖で待つももちゃんの緊張感が読み手にもその思いが伝わってきます。

心の中で(だいじょうぶ だいじょうぶ)と唱え緊張感がマックスに達することどこからか「だいじょうぶ だいじょうぶ!」と励ます声が聞こえると大きな場面展開が起こります。

絵本の最大の魅力は実際に起こりえないことが起こること。こねずみが姿を現しねずみの世界の発表会へと誘われます。

『不思議の国のアリス』を思い起こさせるような異空間に身を置いて予想外のねずみのたちの発表会を目の当たりにし、緊張が吹き飛ぶくらい堪能したねずみたちの世界から魔術でもかけられたかのように空間を越えて、いつの間にかピアノの発表会のホールに戻っているお話です。ピアノの演奏会が成功したかどうかはブロンズ新社出版のこの絵本でご確認ください。

はるか昔ですが自分自身が経験したピアノの発表会のホールの大きさは覚えていますが、緊張していたかどうかは定かではありません。しかし子供の演奏会や発表会は親として緊張していたことが懐かしく感じます。もしそのときにこの絵本が出版されていたなら緊張を解くために会話の中でねずみを登場させ空想の世界を親子で楽しめていたかもしれません。

大舞台で緊張を取り除く方法はそれぞれあると思いますが、手の平に人と漢字を書いて飲み込む真似をするよりもはるかにロマンチックな空想で乗り切ることができたかもしれません。そんなことを想像するだけでも面白く緊張感を楽しむことができるのではないでしょうか。

子供達がそれぞれの大舞台でどのように緊張を認識し乗越えて成長していくのでしょうか。その緊張を味方につけることができれば子供自身が持っている力を最大限に引き出すことができるのでしょう。大舞台に立つ前に読んでみてください。

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