偉人『グレゴール・ヨハン・メンデル』

グレゴール・ヨハン・メンデルは今年生誕200年を迎える遺伝学の祖と言われる自然学者である。2021年4月18日の記事として絵本『グレゴール・メンデル』で軽く取り上げたが、今回はメンデルの『知りたい』という欲求がいかなる困難にも負けず、なぜ生涯を通して研究に打ち込むことができたのかを幼少期から紐解いていきたいと考える。


1822年7月20日オーストリア帝国(現在チェコ)ヒンツェのシレジア村という小さな農村で誕生する。父アントン・メンデルは小作農でありながらナポレオン戦争などに徴兵され、8年間もの間多くの土地へ出兵し、兵役の傍ら農夫としての視点で出兵地やその土地の風土、農作物などの知識を身に付けていった。帰還するとこれまでの古い果樹の育て方や家の作りを改め、勤勉で倹約家の父は小作農でありながら貯蓄をするまでになっていた。メンデルの研究に必要な好奇心や実行力は父ヨハンから受け継いだと考える。

一方メンデルの性格は母ロジナによく似ていると言われている。母は気立が良く物静かな人物で彼の性格はこの母の影響が大きいと言われている。事実彼が死亡したときには多くの修道士やその土地の権力者に混じって弔問に訪れたのは大勢の貧しき人々で、困難な彼らの状況に心を寄せていたメンデルであったことが記録として残っている。

ではメンデルはどのような子供であったのか述べていく。今回は一度取り上げた絵本の挿絵を用いて話を展開するので、併せてBL出版絵本『グレゴール・メンデル』を読んでいただければと思う。

父をはじめとして農夫は土地を領主から借り受けていたため、農作に必要な馬を領主のために貸し出し、農夫も領主のもとでタダ働きをしなければならない日が一週間のうち三日ほどあった。そのため自らのために働く時間が足りず生活は楽ではなかったのである。しかし多くの農夫たちはこのような困難の中にあっても自然から多くを学び、果樹の生産を上げるための工夫や養羊の毛質を上げるための工夫をする様子をメンデルは幼くして目の当たりにしてきたのである。幼きメンデルは父の仕事を手伝いながら「その理由を知りたい」「なぜそうなるのだろうか?」と考える子供でその思いを抑えることができず、2種類を掛け合わせると優性になる自然の謎に心惹かれ、いつの日かその理由を突き止めたいと願うようになっていた。


メンデルのそうした好奇心は生まれた時からの神童といいよりは自らの生活の中から学び、父の話や周りの農夫からの影響を多大に受け、大いなる自然の中で育まれた物であると考える。

これまでの偉人と言われる錚々たる顔ぶれの多くは自然からの享受を受けて偉業を成し遂げている人物が多い。彼もまたそうである。ではメンデルがなぜ幼くして『知りたい』と強く願う子になったのか、それは乳児期から幼少期にかけての視覚重視の種まきの土台の上に、5、6歳以降の思考を伸ばすための発達の波に上手い具合に思考を鍛える事案が多く目の当たりにできたのである。

メンデルは父に連れられ幼い頃から畑仕事や果樹園の農作業をしていた。父アントンは徴兵されていた時代の知識をおそらく息子メンデルに教えていたのは間違いないであろう。これは私がこれまでに出会った優秀な生徒さんにも共通していることだが、親が子に、祖父母が孫に思考を植え付けているであろうと思われる発言を生徒さんから聞いたことが印象的に残っている。これは賢い子供を育てる最強の武器になる技だと認識している。もちろん孫が誕生すれば私も諸先輩の技を真似て惜しみなくその技を繰り出そうとさえ思っているのだ。先週とある生徒さんがパパイアの実ができるメスとオスの木の見分ける話を祖父と交わしたと耳にした。この話もまた思考を育てるに値する価値のある技なのだ。メンデルも常に父からこのような刺激を受け、自分自身で考えることに至ったのだと思うのであるが、それもまた農夫の父の工夫する仕事ぶりから学んだのだと考える。


ではメンデルのような物事を突き詰める好奇心や探究心を育てるためにはどうするか。今回は乳児時期に限った年齢での働きかけについて提案しておこう。

まず視覚重視の乳児には多くのものを見せるべきである。よく乳児が特定のものに強い反応を示すからといって、好きなものばかりを見せる親御さんがおられるがそれは既に親によって与えられるものが選別されている。私は乳児期だからこそ多くのものを見せてその裾野を広げておくべきと考える。多くの言葉を獲得するためにものには名前があることを属性に限らず知らせることが必要だと考える。

またいつのことをあらゆる視点から見せておくことが思考を深めることになる。乳児に何を言っても何を見せても反応が弱いからと言って結果を求めるのではなく、いつのことをあらゆる視点から見せておくことが思考を深めるのである。例えばリンゴを見せる場合に、本物のリンゴもあればおもちゃがあってもいい、また書き手の異なるイラストのリンゴをたくさん見せるのも良し、リンゴの木に触れさせるのもありである。その先を一歩進めるならばリンゴの皮むきや切る様子を見せたり、すりおろしリンゴやカットしたシャキシャキを食してもいいだろう。

親が時間や労力を惜しまず働きかけることは、乳児のあらゆる土台作りにおいては重要な時期であり、メンデルのような好奇心や探究心の目を育むのはこの2つの働きかけによるものである。

最後にメンデルは生前名を挙げることができなかったたが、後世に多大なる偉業を残す人物になった。晩年は研究者として思うように結果が出せなかったが今では彼の功績を知る人が多く存在する。残念ながら彼の偉業を当時は評価されていなかったため資料などがわずかしか残されていない。こう考えると彼のように歴史上に名前が残されたのは奇跡に近いのかもしれない。

メンデルから学んだ親御さんが多くのことを思考できる子供を育てる活躍を心待ちにしたいものだ。

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