絵本『オムライスヘイ!』

子供たちの大好きな料理の一つであるオムライス。私も幼い頃デパートのレストランで食べるオムライスが好きで、オムライスの上に立ててある国旗がどの国のものであるか毎回楽しみにしていた記憶もあります。また子供が父親のために作りたいと言った料理もオムライスでした。今週は子供が作る料理をテーマにブログを綴る予定です。併せてお読み下さい。

子供たちが昨日・今日・明日と時系列の区別がつくか否かは個人差がとても大きいように思います。入室にあたり面談をするのですが年長児でもこの区別がつかない子供もいれば、年少児で明々後日、先一昨日まで理解できている子もいます。この差は何か・・・それは日常生活の中で時系列を多く処理することができているかです。この時系列を理解するきっかけ作りとして料理を経験させるのもいい必要です。ではこの絵本の内容を見ていきましょう。

この作品をオムライスを作る工程が書かれているだけの絵本と評す方もおられ、内容に深みが感じられないというご意見でした。しかしその見方を子供の思考の発達目線で読み解くと魅力がたくさんあるのです。ではその事を紐解いていきましょう。

さて初めてオムライスを作る子供に視覚情報なしに材料を挙げてみるように促してみてください。注意力のある子供で普段からオムライスを注視している子供は大体の材料を答えることができます。しかし注意力がない子や食べる経験がない少ない子は列挙できません。ですから経験値を上げる働き掛けを行う必要があるのです。

この絵本の魅力は短い言葉がキャプションのように散りばめられており、簡潔に何を言わんとしているのか分かりやすく、まるでラップを楽しんでいるかのようなリズムを楽しむことができる構成になっています。最初はゆっくりと読み、回数を重ねて内容が理解できるようになってからラップ感覚で読んでみてもいいかも知れません。子供たちにとって時系列を理解するためには、一つの事柄を自らの思考で次々と展開させ、形が変化していく様子を理解させる練習が必要になります。その時系列の思考を多く経験させればさせるほど思考発達が伸びてゆくことになり、時系列の獲得に繋がります。

それぞれのアクションを起こす場面では状態が変化することであたかも経験しているかのような気持ちになります。絵本で刻々と変化する状況を楽しみ実際に作ってみたいと思うようになります。それが意欲の芽生えになるのです。

実際に卵を割ってみると案外難しいものだと気づくことができたり、殻が入ってしまう経験をし、それを取ることに苦労したなど絵本では描かれていない生きた経験ができるはずです。この経験こそがこの絵本の最終着地点のような気がします。絵本を通して未体験が体験になる。このような絵本が果たして単なる工程が描かれている絵本として評するにはあまりにも勿体無いと思うのです。是非一度楽しんで実際に絵本の通りに作り進めてみてははいかがでしょうか。

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