絵本『マリアンは歌う』
以前マリア・アンダーソンの記事を音楽雑誌で読んだことがあった程度で、彼女の歌声も古い雑音入りの音源をみいにした程度の博士に近い状態でこの絵本を手にしました。人種差別や人権の尊厳に関するアメリカ発進の本や絵本は幾度も読んできましたが、この作品は子供向けにわかりやすく差別や偏見に苦しむ一人の才能ある女性が己の前にはだかる高い壁を乗り越え成功していく物語が描かれています。
マリアンの歌声を幾つのも表現に置き換えている冒頭の文章は、彼女の歌声がどのようなものなのか実際に聴いてみたくなるような衝動に駆られます。雨が霧のように細かく降りしきるような繊細な歌声を小糠雨に喩え、徐々にその歌声は燦然と輝くような煌めきを讃えたかと思うと、たちまち雷鳴が轟くような地鳴りのするような声だと表現され子供にもその様子を想像させながら読み進めていくことができます。七色の声を持つ主なのかな?・・・想像を巡らし彼女の人生を描いたオペレッタのような世界観に冒頭から引き込まれていきます。
特別な音楽的才能を持つギフテッドを得たマリアン・アンダーソンの幼い頃からの日常の様子から彼女が好きなことをただただ成し遂げようとし成長していく様子、成功するまでに幾度の困難に会いながらも逞しく成長していく様子と茶系のシンプルな色合いの落ち着いた雰囲気と昔懐かしいアメリカの生活を思い起こさせてくれる絵の世界観が広がっています。
黒人として生まれたがゆえに受ける人種差別、黒人を排除しようとするアメリカの白人社会の歪みは、彼女が生きていた時代から時を経てもなお続いており根深い社会問題でもあります。しかし芸術という世界では実力があればそのような偏見や差別、社会の歪みなどを超越した本物だけが認められるという真実が描かれています。今週は音楽に関する内容が幾つかブログで展開されていきます。お楽しみに。
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