提案『文字抵抗を減らすために』
子供に備わる様々な能力はそれぞれに伸びるタイミングがあります。その中に文字を学ぶタイミングも含まれ、その波(敏感期)に乗せることが望ましいと考えます。しかし子供を預かりレッスンを行なっていると、文字に敏感で覚えたいと意欲的な子もいれば、年齢的にも読み書きに興味を持つタイミングでありながらも全く興味を持たない子もいるのです。
その違いは一体何かということを分析してみると、生活の中に文字に触れる機会が少ないことがわかりました。単に絵本を読むという経験値が少ないばかりではなく、絵本を多読している子供であっても文字よりも絵に興味や関心があり絵ばかりを視覚的に捉えている場合は文字に興味や関心がわかないこともあるようです。後者の絵を捉える子は促し方法により関心は芽生えるのですが、前者の絵本に親しんでいない子供はどうしても文字抵抗が生まれます。特に親御さん自身が本を読無姿を子供に見せていないご家庭は、環境が活字離れを起こしているため文字抵抗を危惧しています。
一方あるご家庭ではご祖父母が書を練習する姿や写経を行う様子を見ていて文字に興味を持った子やご兄弟姉妹の習字で興味を見出す子もいます。モノクロの文字を形で捉える場合に絵本を多読している子供は絵本から児童文学への移行も容易にできますが、同じように絵本を多読している場合でも色彩感覚を全面に出している作品を好んで読んでいる場合には、児童文学へと移行が難しく絵がないからつまらないと敬遠してしまう子もいます。児童文学移行が難しい原因は視覚的な問題の他に語彙力や想像力が関係していることもありますが、視覚優位の子供にとっては単調な文字の形よりもカラフルで視覚認知が容易い絵本を好むのです。絵本から児童文学に移行する時期の文字に対する敏感期にしっかりと文字に取り組む環境設定が重要になるのです。
しかしその文字に対する敏感期が訪れるまでに何もしないで良いのかというとそうではありません。人間は生まれながらにしてモノクロ対比を本能的に身体発達上行なっている時期があります。それが新生児の頃で白や黒のモノクロを凝視し認知しようとする時期があります。そのタイミングを逃さずにその都度モノクロの絵や文字や数字を意識的に見せる取組みも行います。しかし生後半年までにこのモノクロや単調な文字や形を見せず一気に色彩豊かな絵本やカードを見せていると子供自体にモノクロを受け入れが難しくなり見ない傾向が強まります。
よって乳児の月齢が関係してくるので生後6ヶ月までにタイミングを測りながらモノクロの文字や数字、記号などを見せ、文字の視覚認知の種まきを行ないます。但しその見せ方は高速フラッシュのような脳発達に強烈な刺激を与えることはせず、ゆっくりと見せることを重要視しています。決して文字を覚えさせるためのものでもなければ、頭をよくするための能力開発のためのものでもありません。色彩溢れる世界観とモノトーンな世界、明瞭な世界と線描的なシンプルな世界を対比しそれを受け入れる力を作る種まきです。日本語には『昔取った杵柄』という言葉があります、若い頃に経験したことは老いてからも会得出来るという意味ですが、新生児から首すわり期までの視覚的捉え方と首すわりの促しが密に連携していなければなりません。そのことについては直接レッスンでの取組みとなります。
さて子供にとって最も重要なことは教育であり子供の置かれている環境であることを常々記事にしていますが、本を読まない子供の環境下について話を伺うと、親御さんが読んでいない場合が多く子供にだけ読書を要求することは甚だおかしいことであることに気づいておられないようです。活字がその家庭の中にどれだけ浸透しているかは子供に読み聞かせする頃からすでに始まっています。読み聞かせをする場合には耳にする文章と目にする絵を合わせながら楽しみ、年齢が上がっていくと同時に文章が多くなる作品を取り入れる意識が親には求められます。
平均的に文字に敏感になる時期は必ず発達段階で出現しますが、そのタイミングを逃してしまうと文字を読み書きする小学生で苦労することになります。特に男児の場合には書くことが苦痛とする子も比較的多いためそのことを念頭に入れて策を練ることも必要です。
この文字の認知を促すことばかりを今回は記しましたが、実は絵を描くにあたって単色でのスケッチ力がある子供は鋭い観察力や図形の認知力も高い傾向にあり、文字を書くことにも長けています。このことについてもいずれどこかで記事にしたいとは考えていますが、一見絵と文字は別物のようにも見えて、形を捉えることは文字にも通ずる共通点があり文字のはねや止め、はらいなどの細かい部分への注視力と深く関係していることから物の見方や捉え方が共通していると考えます。よって乳児には絵だから文字だからと隔てて見せる事は不要だと経験上考えています。
文字への抵抗は不慣れということから生じよって幼い頃から見慣れる環境を作ることが望ましいとだけ申し上げておきます。
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