スナップ『指示行動の賜物』

写真は2歳の生徒さんの数の取り組み風景です。しかし数の取り組みとは関係のない待たせること、しっかりと私の話に傾聴すること、指示のもと的確に行動できることの3つを最優先に取り組みを行い、この3つが実行可能になって初めて質の高い数の取り組みに移行することができます。

私が敢えて教具をゆっくりと準備し焦らすように待たせても、じっとその様子を見ることができる能力は、一見無駄のような時間に思えてもこのような実践あってこそ待つことができるようになり、熟視へと繋がっていきます。たとえ子供の気を引くようなおもちゃが出てきても確りと指示を理解し行動することができるので能力が高くなるのは当然なのです。

「台紙のいちごが幾つあるのか数えてごらんなさい」という誘導で数えさせようよすることは行いません。先ず「これらはなんでしょうか?」「いちごは好き?」という質問から始まります。いちごが好きな子もいれば嫌いな子もいるのでその子に合った切り返しが必要になりますが、そこも無駄なおしゃべりではなく好き嫌いの原因は何かを判断し五感の働きやコミュニケーション能力のチェックも同時に行います。

そしてより知識的な質問を投げ掛けてその生徒さんの実情にあった思考の引き出し方を瞬時に判断します。例えば「いちごが最も美味しい時期はいつでしょうか?春かな?夏?秋?それとも冬?」「いちごは木の仲間? それとも草の仲間?」「いちごのつぶつぶは何かな?いじごの実はどこかな?」などいちごの不思議さの種を蒔くことで関心から興味への橋渡しを行います。

このような季節の概念や理科的知識を少しずつインプットしながら数の取り組みに入っていきます。また「左から数えましょう、その次に右を」という具合に左右の概念の理解もできているのか確認をしながら進めます。写真は指といちごのイラストの1対1対応ができているか、正確に数えることができているのかのトレーニングです。


1つのトレイに数種の小物を入れて数を数える取り組みですが、2歳児になると種類分けをする発達が見られるようになるため的確に分けながら数えることができるかをチェックします。写真の生徒さんは取り組み後に小物で遊べることを理解しているためすんなりと種類分けとその数を数えた取り組みをこなしています。しかし指示行動が習得できない場合には3歳でも取り組みから脱線し遊んだり、最後まで取り組みを行えない子もいます。この取り組みをこなせるか否かの差は、乳児期からのアイコンタクトを行っていたかにかかっています。アイコンタクトの質が高ければ指示行動は通りやすくなります。


数字の取り組みも開始しているため数字を見てその分だけおはじきを数を並べる概念の取り組みです。2歳の子供がおはじきを前に遊ぶことをせずに指示に従うのは、大人が考えている以上に難しい行動で遊びたいという衝動を抑えて指示行動に従う高度な行動です。生徒さんは本当に小さな頃から上手にこの点を習得しています。「北極の氷の上の白熊さんに青いお花をあげよう」と言って配置並べをしてくれました。


最後に数概念の増減を理解してもらうためにシール貼りを行いました。シールの色を見ていただければわかりますが、2歳特有の色の秩序性がちゃんと出現しており発達は順調であることを確認しました。

生徒さんはシール貼りの後に「おだんごだぁ〜」と嬉しそうに食べ真似をして、お裾分けを私にもしてくれたので人に分け与える優しい気持ちが育っています。

アイコンタクトを確りと構築した場合には指示行動が実行できるようになります。そしてその指示行動が実行できるからこそ様々な取り組みと連動して能力の質を上げ、様々な関心や興味を広げることや深掘りすることができるのです。まさに指示行動の賜物をどんどん獲得できるようにすることでさまざまな力が開花することになります。

最後のに申し上げておきます。特定の取り組み能力だけを獲得させることは小手先の力の獲得であって、全ての根幹に通ずる事ではなく一部の能力獲得の枝葉にしかすぎません。子供の能力を最大限に伸ばすには、待つことを覚える、確りと見る、傾聴するそして考えて行動するすることが全てのベースになるのです。

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