絵本『こすずめのぼうけん』

各幼稚園や保育園の卒園式が行われる時期となりました。生徒さんも「卒園式だったんだ。どうしてかわからないけど泣いたんだ。」普段は元気いっぱいの男の子ですが、お友達や先生、幼稚園という特別な場所との別れを感じているのだと思います。そう私に話してくれることに優しさと子供らしい素直な思いを育んでいる生徒さんの成長を実感します。今回はそんな生徒さんの1年生になる気持ちに寄り添う意味でこの絵本を選びました。

いよいよ一羽のこすずめが巣立ちを迎え飛び立つ時が来たことを告げてこの物語は始まります。お母さんの「巣の淵に立ちなさい。頭を後ろに反らせ、羽をぱたぱたとし さっと飛び立ちなさい。」「そして石垣の上まで行ったら 今日のお稽古はおしまい」という的確なアドバイスを忠実に飛び立っていきます。

絵本は子供達のものと思いの方もおられるかもしれませんが、私たち大人たちもまた多くのことを学ぶことができるのです。例えばこの場面において厳しい自然界でて生き抜くために親鳥から小鳥はいろいろなことを学びます。その的確なアドバイスの重要性をこの場面から学ぶことができます。

以前ドキュメンタリーで親鳥が飛び立つ様子を小鳥に繰り返し見せ、子鳥たちはその様子を見て真似て学び巣立っていく作品を見たことがありますが、種を超えて親が子に教えるものや伝えるべきものの重要性を感じた経過縁があります。人間の子供の成長にもこのような親の教えによるものが圧倒的に大きく、子供の成長に多大な影響を及ぼすのだろうと常日頃思っています。この場面から親御さんは何をどうお感じになるのかをぜひ育んでほしいと思います。絵本とは子供のものだけではありません。子育てをしている親御さんにも学ぶべき点は多々あるのです。

さてここからはこすずめを我が子とダブらせて読み進めて下さい。

巣立ちを終え自由を得たこすずめは飛ぶ楽しさを感じ、春の野山を眺めながら飛んでいきたい衝動にかられどんどんと遠くへ飛び進めてしまします。さぁ、ここで考えましょう。ご自身のお子さんは自分自身の思いを自由に表現し親から離れていく瞬間はあるでしょうか。前へどんどんと進み出て危なっかしいとヒヤヒヤを感じている親御さん、子供自身が危険を回避しながら進んでいると実感されている方、親になんでも確認をしながら出ないと行動を起こせない子、親が後ろから後押しをしてもなかなか前へ進めない子などいろいろなお子さんのパターンがありますが、どのパターンも親の育て方の結果なのです。


遠くまで飛んでとうとう羽に痛みを感じ休める場所を探すこすずめは、生きる強さを持った子雀であることは間違いありません。こすずめは自分の思いに素直で一見無謀に見える行動をとっているかもしれませんが、親鳥は確りとその様子を見て把握していることが巻末でわかります。人間の親も子供に逞しく行動を起こせるように育て、その先の行動をいくつもの選択肢を頭に入れて予測を立てておく、そしてどの選択肢を選んだとしてもあたふたせずに対応が取れる心算をしておくことが、親という漢字の本来の意味を理解することに繋がるのではないでしょうか。こすずめの親のように最後の着地点がどこにあるのかも読み進めて実感してほしいとも考えます。

話を物語へ戻します。こすずめ痛くなった羽を休めるために様々な鳥の巣を見つけ、休ませてほしいと申し出るのですが鳴き声が違うからと断られてしまいます。行けども行けども種を超えての休憩場所は見つりません。

途方に暮れていると・・・・どんなことが起きてもこすずめの戻るべきところはあることを確りと描いている素晴らしい絵本です。読み終えた時にそっと子供を抱きしめてあげて見て下さい。きっと自分自身の戻るべきところは母の温もり、父の逞しさだと実感してくれるに違いありません。多くの言葉は要らず、絵本の余韻を大切に子供の感じていることにただ寄り添うだけでも最高の瞬間がこの作品では味わうことができるのです。

この絵本を読んでいると今まさに小学校入学へ、新しい幼稚園へ入園する子供達のワクワク感や不安が入り混じっている子供達のことが頭を過ぎります。

この子なら物怖じせずしっかりと受け止めるであろう、またこの子なら不安に感じているだろうな、あの子なら不安があってもどうにかなれていくだろうと想像しているわけですけれど、その子供たちを親御さんはどう見て感じて、多くの選択肢を立てておられるのかも興味深いところでもあります。

つまり選択肢を多くも持っておられることはどんなことが起きても対応可能であるということ。しかしそれよりも最も重要なのは『子供達がいつでもどこでも、どのようなことが起きても帰ってくることができる安住の地が親のもとであるということ』を親御さんがお子さんに伝えきれているかということです。今一度新しい環境に巣立つ我が子にその思いを伝える瞬間をこの絵本の読み聞かせと共に行ってみてはいかがでしょうか。

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