偉人『勝のぶ』

『勝のぶ』彼女の息子は勝海舟である。勝海舟を語る時父小吉の破天荒ぶりと同様母のぶの豪快なエピソードはセットで伝えられることは多い。勝海舟は両親から多くの影響を受け育ち、坂本龍馬を弟子に持つほどの先見の明を持ちで江戸幕末から明治維新後にかけて活躍した人物であったが、取り分け母の影響を強く受けているように思う。

冒頭で述べておくが勝海舟が幕末から明治維新の波乱の時代で、歴史の大転換にもなろうかという土壇場で何ものにも動じない精神力で豪胆に対応できたことはまさしく母のぶ譲りのものである。今回は豪放磊落な母を持つ親譲りの豪胆さが子供に受け継がれることを確認し、のぶのような生き方を真似できずとも子供を豪胆に育てるためにはどうすべきかを考えていく。その所以は豪胆という物事に動じず落ち着いて対応できる能力というものは人間を大きく成長させるからである。

勝のぶは徳川家康に支えていた江戸幕府成立時に貢献した三河国出身の譜代の家臣であり名門の家柄であった。のぶ5歳の頃、後の夫となる小吉が養子に迎えられ、のぶが16歳になるのを待って祝言を挙げた。良い家柄の武家の娘として育てられたのぶは大変寡黙な人物で和歌や書を嗜み、夫の小吉の放蕩さに手を焼きつつも貧しい家計を切り盛りし、物事に動じない大変気丈な性格であったと言われている。豪快で愛情深い父小吉に対して、母のぶは気丈な肝の据わった人物でありこの両親二人の子供だあったからこそ勝海舟という人物が育ったのであろう。


さてこの母のぶについては必ず語られているエピソードがある。

ある日夫である小吉がある武家の女性に想いが募りそのことを妻のぶに打ち明ける。その時点で『小吉アウト』であるが妻のぶは「そんなにその女に惚れたのであれば私が身請け話をしてくる」と言い放つ。私ならちゃぶ台をひっくり返し猛抗議そこそこに反乱を起こす事件であるが、のぶは本当に豪胆な人物だ。そしてこう続ける「しかし相手も武家の家柄であるので話の持って行き方を間違えると私が切られるか、自害をさせられる方向へ話が進むやもしれません」と伝えた。小吉は妻のぶに対して「そうしてくれ、よろしく頼む」と返答する。冒頭からして小吉の頭はどうかしているのかと思うのであるが、そうしてくれとは何事かである。その話はそれで終わりではない。夫婦で話がついたと思った小吉が街を歩いていると顔馴染みの人相見に出会い、「女難の相が出ている」言われ踵を返し家へ吹っ飛んでいき妻のぶに平謝りをしたという。

婿に入りながら家を急落させるほどの放蕩ぶりの夫小吉に対し、のぶは武家の娘として誕生し婿を迎えなくてはならないという生い立ちが、他の女性とは類を見ない程の度胸と物事を捉え判断する豪胆無比が形成されたのではないだろうか。のぶがどのようなことが起きても慌てふためく事なく気丈に対応がでたことは息子勝海舟にも受け継がれている。海舟が尊王攘夷高まる中、開国の必要性を説き、江戸城無血開城で多くの人命を救った時勢に流されない冷静沈着な判断を下せたことは母のぶから受け継いだものである。この母子間の精神性の受け渡しは子供の思考に深く刻まれるため精神性だけではなく能力にも影響をしてくる。親の考え方や行動全てが環境であり、父子よりも母子の影響が強いことは言うまでもない。


しかし全ての人が親になり精神性が高いかと言えば私も含めてそうではない。

人間は歳を重ね小さな頃の成功体験を基盤に成長し、若い情熱を持っての成功体験のみならず若気の至りでの失敗とを繰り返しながら熟年期を迎え、様々な経験を通して肝が据わり度胸がつき物事に動じず対応できるようになるものであるが、わずか5、6歳で精神性がものすごく高い大人顔負けの子供に出会うことがある。これが俗にいうトンビが鷹を生むということであろう。両親がそのような傾向がある場合には納得いける話だが、時にどう考えても親子逆転して子供の方が精神性が高い場合があり、その精神性の高さはどこからきているのだろうかと長い間考え辿り着いた結論を私なりに持っている。

その結論とは『大人ほど経験値は無くとも1つの経験から色々な見方や捉え方、思考分析を自分自身の力でやってのけている地頭の良さがある』ということである。そしてその子供たちに共通することが多くの本を読んで世の中には様々な意見があることを学んでいるということである。これは私が行き着いた考え方であって筋が通っているかは不明ではあるが、そのような子供達が成人し子供を持てば勝のぶのような子育てをすることは可能だと考えている。地頭の良し悪しの話をすると天賦のものだとすぐに諦めてしまう親御さんがいるが、子供の柔軟に適応する能力を以って信じて働きかけを行えばその域に近付くことは可能である。ただ環境を与えるためには親のフットワークの軽さや親自身が繰り返し多面的に物事を捉えることが必要であり、その努力をできるか否かに掛かっている。


勝のぶのように肝の据わった豪胆な母親でありたいのであれば思慮深く冷静に物事を判断できるような理性が必要になり、海舟のような柔軟な考え方を持ち臨機応変に対応ができ時に物事を恐れず思い切ったことができるような判断力を持つ人物に育てるためには、狭い視野での思考ではなく、世の中にある多種多様性を受け入れるための経験を育むべきだと考える。

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