絵本『おさんぽおさんぽ』

これは子育てをした経験がおありの諸先輩方は共感していただけると思うのですが、この作品の1ページ1ページに子供の輝ける瞬間が散りばめられ本当に素敵な作品だなと思います。

子供の読解力を上げるための講座を受講したお母様方はすでに私の言わんとしていることがお分かりだと思いますが、子供の読解力は経験の上に知識や知恵を持って強化されていくものです。この福音館出版の絵本は対象年齢が0〜2歳となっていますが、幼稚園生でもこの作品を十分に楽しんで活用することができます。『読解力を上げるために』と記載すると教育にご関心のおありになる親御さんは飛びつきますが、そもそも絵本というものは読解力を上げるためにあるものという位置付けよりも、人生を豊かにするためのものとお考えになって親子で読書を楽しむというスタンスで取り入れて欲しいと思います。

表紙の青い長靴はきっと小さな男の子が履いているのだろうと想像することができます。しかし昨今は青色を好む女の子も増えてきたので、青色=男の子はもはや固定概念の産物かもしれません。

ページを捲るとどこにでも生えているかたばみの葉と黄色の花、花茎をすっと伸ばしたオオバコが生えている脇に小さなダンゴムシ。日常お散歩や自然に触れる経験をしている子供であれば、植物の名前が言えますし花や葉の作りについて親子で会話をしているでしょう。また御祖父母さんと生活をしているならばかたばみの葉で10円玉を磨くと輝きを取り戻すことを知っているかもしれません。私は父にオオバコは車全草だと教えられていたのでなぜそのような名前がついたのかを会話していました。

また誰かが手折ったのか、はたまたかみきり虫などによって自然と折れたのか桜の枝が落ちている横を通り過ぎようとしています。足元しか描かれていないので想像の余地を持たせている場面構成にしているのではないかと思うのですが、ダンゴムシをツンツンと一通り観察した後に男の子ならきっとその枝を拾い上げて手にし、先を振り振り回しながら空間認知を楽しながら歩を進めているでしょう。

日常の生活の中の気付きや会話の内容を絵本の世界で楽しめるか、または絵本発信で日常を観察して知り得るものを増やすのかはご家庭やその内容によってさまざまだと思うのですが、この絵本を0〜2歳までのものとするのは大変もったいないような気がします。

ずんずんと歩いていくうちにアリの巣を発見したというような驚きの足の動きなのか、子供の「あっ、ありさん」「穴の中に入った」「どこにいくのかな?おさんぽ?」「きっとおうちに帰るんだね」「中から出てきたよ」というような一文は一つも書いていませんが、足の内側に向く様子やハット開いた手から想像できる余白がたくさんあります。素晴らしい絵本というものは子供達のみならず大人もその世界に引き込んで空想の世界へ誘うことができるものなんです。


またどんなに時代が変わろうとも子供たちは水が大好き。私も雨が上がると階段に溜まる雨水を撤去しにいくことがあります。なぜならレッスンに来る小さな子供たちはその階段の小さな水たまりでさえもあそびに変えてしまうからです。乳幼児教育の立場からすれば本当は残しておきたいのですが・・・梅雨時期になると葛藤する事案です。それほど水たまりは子供たちにとって最高の遊び場なのです。


自分自身が子供の頃も雨上がりや雨が降っている中での水たまり遊びは、母の目をこっそり隠れて靴をいかに濡らさずに水たまりの中で遊ぶかを考えたり、週末の靴洗い時には思いっきり靴の中に水を入れて履きチャプチャプ、タップンタップンと水の感触を楽しんだものです。親御さん自身が子供の頃に遡り思いを巡らすと、この絵本の指し示すページごとの子供の様子がいかに好奇心マックスの状態なのか容易に実感できると思います。


生きる力のある子、創意工夫して自信を持っている子の多くは自然体験の中からの学びが多いことは明らかです。都会の生徒さんが夏休みにレッスンを受けにこられるのも都会では体験できないことをさせるためでもあります。少し行けば海や草原がある場所に住んでいる強海を生かして子供の本能に働きかける子育てをして欲しいと思います。

雨上がりに長靴を履いて街の中へ出掛けていく小さな足の躍動感あふれる世界を実体験と絵本で堪能してはいかがでしょうか。

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