提案『是が非でもさせたい砂遊び』
タイトルにもした通り砂遊びは乳児期から幼児期にかけて是非とも、そして存分にさせておくべき良質の遊びの一つです。子供の遊びには身体を動かして行う粗大運動を主軸にしたものや手先の動きに特化した遊びがありますが、砂遊びはその粗大運動と手先の巧緻運動の両者を含むばかりではなく、子供の発達と密接な感覚統合や適応能力に働きかけ脳を育て、忍耐や落ち着きいて対応することに関する精神性や集中力を伸ばし、お友達との関わりの中で社会性も育みます。
1つの遊びでこのような子供の心身脳の発達や精神面に同時に働きかける遊びは数えるくらいです。とはいえ砂で汚れることや日焼けに抵抗があり砂遊びを選択しない方もおられると思うのですが、砂遊びに含まれる幾つもの遊びを複合させた効果は宝の山という考え方ができます。宝の山に入るか入らないかは選択自由がありますが、対策をしてでもやるべきものだったと実感ができると私は考えています。
それでは砂場遊びがいかに素晴らしい遊びなのかを詳しく解説していきます。
1、感覚統合と適応力を獲得できる
砂には大きさの異なるサラサラやザラザラとした触覚のもの、乾いた砂に湿り気のある砂、水を多く含んだドロドロとした砂、暑い砂に冷たい砂、白に灰色やキラキラ輝く砂などいろいろな感覚を砂遊びは得ることができます。砂に触れることが苦手な場合もあります。特に乳児期は発達上必要な感覚統合を実行させなくてはなりません。嫌がるからといって諦めてしまうことは脳での感覚統合をさせず脳を育てるチャンスを失うということになります。子供の脳育ての研究が進めば進むほど自然界からの刺激を手指や足裏、体全体に受けて脳育てを行うことが望ましいということが明らかとなっています。高額な教材をを揃えて映像的教育をすることが脳育てと言われている時代もありましたが、追跡調査が行われ自然教育をした方が良質な脳育てをすることが明らかとなっています。するかしないかは親の選択権の中にあり、砂遊びは生まれてきた子供が平等に得られるものではないことが残念で仕方ありません。
また乳児の頃から砂に触れる経験を与えることが望ましく腰が安定しお座りができるようになれば砂の上に座らせたり、手や足に砂をかけて砂の感覚を味わい慣らしてから砂の上に立たせてみましょう。室内で過ごす経験が多いお子さんの場合には砂の上にいきなり立たせると嫌がることがありますので、砂の感触に慣れるという準備を怠らないようにする親の配慮が必要です。また乳児期はなんでも口に入れてしまう口探索行動が出てくればこの砂遊びも気をつけなくてはなりませんので目を離さないようにしましょう。
2、手指の刺激を促し器用さを獲得する
砂の状態が多種あることを先述しましたが、乾いた砂と湿った砂あるいはドロドロ状の砂を手で触る、掴む、すくう、指でなぞるなどいろいろな刺激を手指から受けます。サラサラな砂を軽く握ると指の間から滑り落ちていくことを学んだり、湿り気の多い砂をぎゅっと握るとある程度固まることやその固まったものを放置しておくとホロホロと崩れていくことを見ることになるでしょう。このような状況が変わることを遊びの中で実験を行い、様々な発見や新たな遊びを生み出すことになります。つまり砂の状況に応じて自分自身の手足や体を動かすことを行うことにより手先が器用になるのは当然のことで手指の巧緻性を高めているのです。
砂遊びによって獲得した手指の巧緻性は日常生活での道具を扱うことに応用することができます。箸を持つことや身支度をすることなど多くの道具を扱う動作が楽に行えるようになります。
年齢別に少し補足をしていきます。
0歳児は砂に触れるという点で砂の上に座ることからスタートしてほしいと考えます。ビーチでの砂遊びには波が来ない波打ち際から少し離れた乾いた砂の上で行うのが望ましいです。但し真夏のビーチでは直射日光を避け水分補給をこまめに行って下さい。
1歳前半は口探索行動が多く行われるので砂を口に入れないように目を離さないことが重要です。また道具を扱う発達を迎えるため小さな型抜きやペットボトルやゼリーやプリンの容器を道具として砂に押し付けたり、砂を容器で叩くなどの遊びを行います。
1歳半以降では道具を自分の手のように上手に動かすことで思ったことや考えたことを形にしようとする発達段階を迎えます。小さなバケツにスコップ、シャベルなどの道具で遊ぶことが増えてきます。我が子は砂浜の上を歩き回って松林の松ぼっくり拾い砂と一緒にバケツに入れてひたすら混ぜることをしていました。砂で山を作っても海水を汲んで砂山にジャバジャバと海水をかけても一見しただけで目もくれず、ひたすら砂と松ぼっくりをかき混ぜていましたが今覚えばあの時に集中力を獲得しかけていたのかもしれません。その砂遊び後の室内遊びが劇的に集中して取組んでいたのが印象に残っています。
2歳以降は道具を上手に扱うことが増えてきます。砂を容器に入れて手でぎゅうぎゅうと押し固めて上手にひっくり返し、それをいくつも作り一列に並べ始めるという秩序性も見受けられるようになります。
3歳以降は具体的な表現を形にすることができるようになりますが、それは砂遊びを繰り返してきた場合に限ります。初めての砂遊びでは一気に表現したものが溢れてくることは少ないかもしれませんが、遊びの経験値が多い場合には自発的に失敗を繰り返しながらも楽しむことができるでしょう。
3、運動能力を鍛える
砂遊びをするには不安定な砂の上に立たなくてはならずバランスをとりながら立った座ったりを繰り返すため自ずとバランス感覚と筋肉の動かし方を学び粗大運動を獲得することになります。また年齢が上がれば砂地を走る飛び跳ねるなどという動作でその運動量が増え運動能力も高くなります。スポーツ選手がビーチでトレーニングをし足腰を鍛えるという話を耳にすることもあると思いますが、身体発達の途中にいる乳幼児が砂地で粗大運動を行い獲得する力は、ある程度の身体骨格や筋肉が形成された年齢よりも吸収する力は格段に大きいことは容易に想像がつきます。
4、集中力と忍耐力が高まる
砂遊びはもろく崩れやすいという扱いが難しいため無心になって行動を楽しむ傾向があります。持参したおもちゃを活用して自由に表現して遊ぶことでより時間を忘れて集中することができます。
例えば砂遊びの代表的な砂山にトンネルを掘るなどは、硬く固めた砂山に慎重にトンネルを掘るためには最新の注意を払わなくてはなりません。集中力と手先の動きだけではなく、全身を使い一挙手一投足に注意し慎重に動かしていても少しの体のブレで壊してしまうこともあります。このハラハラドキドキとした緊張感の中で集中し何度も繰り返しチャレンジする忍耐力はそう簡単に経験できるものではありません。例えばドミノも似たような緊張感を強いられますが、砂遊びほど物の形状が変わることはないため発想豊かに遊ぶことは難しいといえます。
砂遊びには短い時間で何かを作り上げる集中力や注意力、やり遂げようとする意欲、時に失敗しても再チャレンジをするなど子供自身が夢中に慣れるからこそ獲得できる力の宝庫が砂遊びです。
5、想像力が高まる
おもちゃや遊具などは遊びに限界がありますが砂遊びは自由度が高く子供が想像してものを自由に表現できるという特性があります。砂浜での遊び以外にも幼稚園や保育園でお友達と自由に想像を膨らませて遊ぶことができます。砂を固めたり盛ったり、穴や溝を堀ったり、町や道路、山やケーキに見立てたりと自由な発想で遊ぶことが各年齢で行えます。具体的なイメージを形にする力が鍛えられ表現する喜びを得られ豊かな発想や閃き力を鍛えることにも繋がります。
6、社会性を身につける
子供同士一箱の中で砂遊び表現する場合にはお互いが意見やアイディアを出し合い擦り合わせて遊ぶことが必要になります。それぞれが遊びにあたってのルールを守り道具の貸し借りや役割分担をしっかりとこなさなければなりません。砂箱の中で小さな社会性を経験し協調性を学んでいくことになります。
この砂場遊びがスタートできるのは外遊びするほどの体力がない乳児の頃からお散歩として取り入れることをスタートさせ、年齢ごとに応じた砂遊びをしっかりとさせてほしいと思います。少し車を走らせると白い砂浜が待っている環境を大いに活用し、子供達が豊かに逞しく生きる力を獲得させ、ひいては沖縄の未来に貢献できる子供の能力を開花させる砂遊びに興じてみてはどうでしょうか。
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