絵本『タツノオトシゴ』
なんて美しい版画絵本だろうと手にしたこの『タツノオトシゴ』には副題(ひっそり くらす なぞの魚)と記されています。想像豊かな物語性の強い作品であってほしいと願いつつ開いてみると科学絵本でした。タツノオトシゴを知るという点に於いては大変興味深い作品です。
子供の頃父のデスクの書類の上にタツノオトシゴ標本のペーパーウェイトがありました。ガラス製のそのペーパウェイトの中の標本はまるで小さな竜が閉じ込められているかのようで不思議な海洋生物に魅了されたものです。
馬に似ている顔をし、猿のような長い尻尾、オスのお腹にはカンガルーのような袋を持ち・・・と見た目の不思議さを子供にもわかりやすい表現で文章化しています。レッスンで子供達に教えている知識がしっかりと詰まっているので生態を知る上では興味深い作品です。
捕食者から身を守るためにカメレオンのように身体の色を変え擬態し難を逃れる様子やオスと雌がどのようにして出会い、交尾しタツノオトシゴならではの特殊な産卵を行います。
産み付けられた卵はオスによって大事に守られやがて何百匹の子供達が大海原へと旅立ちます。
タツノオトシゴのオスとメスが出会い新たな命が生まれ、その命がまた新たな命を育むんでいく様子を描いた科学絵本でありながら、芸術性の高い美術絵本のようでもあります。
夏の暑い最中はタツノオトシゴに出会うために水族館に出掛けてみるのもよいかもしれません。勿論この作品を読んでから生きているタツノオトシゴを観る経験が子供達に新たな発見をさせるかもしれません。
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