提案『童謡を子育てに取り入れる理由』

乳児が生まれて初めて耳にする音楽は母の歌う子守唄です。やがてその子守唄から童謡、子供向けのアニメの主題歌、就学後に学ぶ唱歌、流行りの歌謡曲、海外の音楽などと成長と共に楽しむ音楽が変化していきます。この音楽の変遷を考えると童謡は期間限定的な音楽であることは間違いありません。今回はこの童謡が子供の発達とどのような関係があるのかを年齢別に見てみましょう。


子供が真っ先に触れる直接的な音楽とは母が歌う子守唄でであることを提示しましたが、母親や保育者によってもたらされる子守唄を全ての子供が歌ってもらえるわけでもありません。音楽的要素に触れている母親であれば積極的に音楽を取り入れるでしょうが、残念ながら母親自身が幼い頃に童謡に触れていなければ子供に歌って聞かせる行動に出ることは少ないといいます。そのことからも分かるように生まれた直後から童謡に触れることができるか否かは、母親や保育者次第といえます。ではその童謡を歌ってもらえた場合のメリットを子供の発達と絡めて考えてみましょう。

子供は生まれた直後から耳に問題がなければ聴覚が発達しています。その他の器官が未発達な状況で日々発達を促す必要があるのに対して、聴覚の発達は他の器官よりも優れているため刺激しながら言語性や音楽性への働きかけをすることで脳発達を促すことができます。乳幼児にとっての言葉の獲得は実は音なのです。子供達が初めて言葉の意味を知り理解し発するのは擬声語や擬態語です。例えば犬を理解した子供が「いぬ」とは言わず「ワンワン」、車を「ブーブー」など音を楽しみながら言葉を獲得していきます。よって童謡を通して言葉を音として捉える聴覚と脳刺激を鍛えることになるのです。


1歳未満の乳児に子守唄や童謡を歌ってあげていない、聞かせることが少ないということはせっかく授かった聞く力を伸ばすことに繋がらないことを意味しています。童謡を通して聴覚や脳刺激をうこなえるばかりではなく、母に抱かれて心地よい情緒の安定も促すことができます。乳児が最も獲得すべき母子の愛着形成にも役立つとも言えるのです。乳児後半期には音に合わせて体を左右に動かす様子を見ることができます。


また2語文が出始める1歳半前後の幼児にとっては、童謡の音やリズム、抑揚が言語習得に直結し、繰り返し聞くことにより言語習得のスキルも上がっていくのです。音を通して短く簡潔な言葉の意味を理解し、語尾を発声する真似っこから童謡を楽しむことに繋がります。この時期には他社の目を気にすることなく自分の世界に入り歌う様子を見受けることができます。

2歳前後では歌うことを楽しみに言語や学習、コミュニケーション力も上がりますが、何よりも歌うことを体全身で表現することができるようになり、歌を覚える記憶力、歌の意味を考える思考力、集中して音楽に耳を傾けるリスニング力が上がります。童謡絵本を活用して歌のイメージを理解できるようにゆっくりと歌いながら絵本を楽しむことを行いましょう。特にこの時期は一人舞台に上がって歌っているような自己満足型の表現が見受けられるようになります。

3歳になれば言葉も明瞭化し第三者を意識して歌うことを行うようになります。まだまだ音程が取れない箇所もありますが格段に歌うことのスキルは上達しています。我が家では3歳になればミュージカル形式で言いたいことを歌ったりセリフのような形で表現してもいました。おしゃべりが苦手、歌うことに抵抗がある無口な子でもミュージカル風にすればスムーズな表現をすることができます。このミュージカル風が楽しくなれば一気に家庭の中がパーッと明るくなります。絵本で読んだ作品を暗記して自作の曲にセリフをのせ表現する遊びは、自由な開放感ある世界へと子供を誘ってくれます。物語を繰り返し楽しんだり、元々の作品に創意工夫をし楽しんだり、新たな作品を生み出すために図書館で作品選びをしたりと音楽から文学の世界へと積極的になったのもこの時期でした。

今回のまとめに入ります。

童謡を歌う時期には期限があります。乳幼児の0から2歳までは手指のモータースキルを集中して長時間鍛えることができない代わりに、童謡を聞かせることで耳を鍛えることになり、音を捉えることが言語習得に繋がり、やがて童謡を通して音楽を聞くことから味わう聴くことに繋がり、音楽を理解するための言語習得に変化していきます。

さらなる童謡に取り組んだ場合の獲得できることについては来週2023年8月7日の子育てサジェスチョン記事で取り上げます。そちらも併せてお読み下さい。

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