提案『童謡は最高の子育てツール』

1918年に児童雑誌『赤い鳥』で童謡が掲載されたことからその年が日本に於ける童謡誕生の年とされ、今年は日本で童謡が誕生して105年を迎えました。その以前に童謡がなかったかといえばそうではなく『わらべ歌』が主流で江戸時代にはすでに童謡があったとされています。明治時代になると西洋から近代音楽が入ってくる唱歌がたくさん作られるようになり、大正時代になってようやく鈴木三重吉により子供向けに芸術的香りの高い歌を創作することを目的に童謡というジャンルが確立されたのです。

今回はなぜ童謡が最高の子育てツールなのかを紐解きながら、童謡が子供たちに与えるメリットを記します。この記事で取り上げる童謡は私がお勧めする曲ばかりです。お子さんと共に是非歌い楽しみ世代を越えて受け繋いでで欲しいと考えます。


『うみ』は子供達が夢や希望、将来への期待に胸を膨らませる心情を歌い上げている作品す。私自身が幼い頃に海外の様々な国を見たいと感じていた頃に戻り気持ちが高揚します。

写真は講談社にほんのうたえほんより『こどものうた』より。


では童謡のメリットを考えていきます。

1、子供の発達に則して作られた理に適った童謡

童謡というジャンルが生まれるにあたり子供向けで芸術性の高い作品を目的に作られたという経緯があります。よって童謡には幼い子供が理解しやすい言葉をテーマとして取り上げ、歌詞に含まれる言葉は発語しやすく、子供達が好む擬声語や擬態語、擬音語を多用し、情景が思い浮かべやすいという特徴があります。

乳幼児発達の特徴として一つのことを何度も繰り返しその言語や意味、動作を習得するという発達があります。それを上手に活用しているのが童謡で同じ言葉やメロディをリフレインすることが単純明快で乳幼児の言語発達を促すには最適な方法であり理に適ったことなのです。


『ぞうさん』は歌詞の通り象の特徴を幼児もイメージしやすく、尚且つ母子の心の通い合いという愛着の形成が主軸の作品で子供の発達に直結しています。



2、美しい日本語を力をつけよう

童謡には日本人で良かったと思わせてくれる美しく心ときめく言葉が溢れています。その言葉は遥か昔から口から口へと語り繋ぎそして時代が変遷しても消失しなかった言葉と言えるものもあれば、童謡の中だけでひっそりと止まっている言葉もあります。それら全てが朱雀の言葉なのです。その美しい言葉を乳児の頃から耳にするということは豊かな言葉の土台を作ることになります。

現代の言葉にはない様々な言葉に触れ、やがてその言葉の意味を理解しようとする3歳過ぎになると多角的に言葉の意味を捉え理解することができるようになります。しかし童謡を歌っていなければ美しい言葉に触れることもなく、また言葉の変遷や言語を多角的に理解することは難しいものです。日本語を理解することを絵本などの読書からとお考えの方は多いと思いますが、実は絵本と同等の位置付けにあるのが童謡であると言われてもいます。しかし童謡は絵本よりも選り好みをすることが少なくすんなりと受け入れることが多く、物事の受容することを学ぶ最善の策なのだとも感じています。

先日生徒さんのお母様からお子さんが童謡を歌いながら知らない言葉を文脈から想像し、言葉の意味を推測していると伺いました。その言葉が「蛇の目」できっと北原白秋の『あめふり』の歌詞だろうことや「じょじょ」は相馬御風の『春よ来い』の草履の事なのだろうと想像していますが、このようなお話を耳にすると生徒さんが語彙力のみならず読解力が進みつつあることも判断できます。いずれは親が子を思う心情を歌っている童謡であることを読み解くのではないでしょうか。童謡を歌い言葉をキャッチするアンテナを作りましょう。



3、耳で身体で音を捉えることができる

幼児が童謡を歌う様子を観察していたら気付くことですが、体を左右に揺らしたり軽い屈伸運動のように膝でリズムを取ったり、くるくると周り出したり手を叩くなど自然と体を動かしてリズムを取る様子が見受けられます。幼児は先ず童謡の音を捉えそのメロディラインに合わせて体を動かします。そしてその童謡を繰り返し聴くことで言葉を単語として捉え発声しますが、明瞭に歌うことはできず語尾だけを捉えて発声し繰り返すことで全てを上手に歌うことができるようになります。

やがて歌詞を理解し上手に歌いながら歌詞の内容を体で表現する楽しさを獲得していきます。例えば『めだかのがっこう』の歌詞の「そっとのぞいてみてごらん」をあたかも川の中を覗く仕草をしたり、めだかがお遊戯している様子を身体で表現したりします。

童謡のを耳にして以来音を楽しみ歌詞を理解し、やがて歌に振り付けを加えて身体で表現する力を身につけることができるようになります。また日本人にとって馴染みやすい旋律であることも童謡を音で捉えやすいという一因でしょう。



4、感性と情緒を育てる

童謡は日本の豊かな自然や風土、伝統や日常生活などから生まれたものであるとも言えます。日本人ならではの美意識が童謡にも息づいており、その美意識は日本人の心が自然と繋がっている事は明らかです。西欧諸国の文化が導入され国際的な交流があっても自然と調和することをよしとしている文化を持ち、自然と人間との距離が曖昧だからこそ生まれてくる繊細さを持っています。その感性が童謡にも反映されているため歌詞の中にそして歌の中に抒情を求めているのです。その抒情が生活の中に密着し、季節の移ろいと共に伝統行事などが童謡という形になり歌い継がれ、独特の和みや温かさ、癒し、切なさ、儚さ、哀愁などの感情が精神を安定させ情緒を育てるのです。

特に親が子供に童謡を歌い聴かせることで日本人独特の感性に直接働きかけることができ、日本人独特の感性が確立されると言われています。日本人の吐出したところは欧米諸国の文化を取り入れつつもにほん独自の美意識を変えず新しい文化と融合する精神性です。それが当てはまります。100年以上も前の童謡はやはり古いものですが、それを古臭いと受け止めず情感を刺激するものとして捉え歌え繋いでいるのです。日本人の中には各国が羨ましがる程の感性や抒情を育てるマインドが遺伝子レベルで備わっているのではないだろうかとさえ思うのです。だからこそ童謡を心で感じることができるのではないでしょうか。だからこそ合理主義や日々の雑踏からかけ離れた次元で童謡を味わい心を清らかにする時間が必要なのだと思うのです。そしてその最高のツールが童謡であり、それを享受できるタイミングは乳幼児期であることを親は認識すべきであると考えます。



5、歌詞を覚える力がつく

簡単なフレーズの繰り返しで短めの童謡を多く歌えるようにすることは、覚えるという糸口をきっかけに記憶力を磨くことに繋がる可能性があります。子供の頃の記憶力は驚くほど良質なもので覚えるスピードも早く、覚えたことを長期記憶として残せることも可能です。大人が子供の頃に覚えた童謡を忘れずに歌うことができるのは、子供の頃の記憶の質が深く関係しているからなのです。乳児期から2歳ぐらいまでは童謡をたくさん歌ってあげ聴かせることを心掛け、3歳児から5歳までに多くの歌を歌えるようにすることが記憶力の土台を作るようにすることが望ましいと言えます。

教室では童謡を先ず多く覚え歌えるようにし、その後に詩や俳句、短歌など多くの文学を覚えることを勧めています。その手始めとして多くの童謡を覚え歌って下さい。


『むしのこえ』は秋の鳴く虫の歌ですが、昨今は「まつむしってチンチロって鳴んだね。」「鈴虫はリンリンなんだ。」というように歌から虫の鳴き声に耳を傾けて聞くということを学ぶ子が圧倒的に多いように思います。それは自然が身近になくなったという残念な意味を示すものですが、それでも童謡を歌うことによって関心が鈴虫を飼う経験をした子供もいます。そのような童謡との接点も必要なことだと思います。

乳児から幼児にかけての童謡との接点は幼い頃にしかできない期限付きの取組みであり、日本人ならではの感性や情緒を育むチャンスが童謡にはあります。どんなに学習が秀でていても心で何かを感じることができないというのは、人生を心豊かに生きることとは真逆に位置することだと思うのです。想像豊かに人生を生ききることをこれからの子供達には是非手に入れてほしいものの一つです。

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