絵本『ドガと小さなバレリーナ』
今回は私が好きなフランスの印象画家エドガー・ドガとバレリーナの関わりを作品にした絵本を取り上げます。エドガー・ドガは本名をエドガー・ド・ガスといい、貴族であることを表す(ド)を隠すかのように名前を改名し、同じ時代を生きたルノワールやモネが入場できなかった劇場や競馬場の様子を描くことができた裕福層の生まれでした。
この場面は絵本の中の一場面ですが実はドガが描いた作品をそのまま表現してあります。貧しい踊り子マリーとのエピソードが描かれている作品ですが、実はドガは視力が衰え絵の具での表現が難しくなってからはパステルを使用しました。そんなパステル調の淡い世界がこの作品に漂っています。
無骨で偏屈で人嫌いなドガが踊り子マリーに出す注文に苦慮し、ドガの怒りがどこからやってくるのかを理解したマリーとの交流は心温まる内容が綴られています。
ほとんど目が見えない状況になってからドガがそれでも描くことに執着し、手を用いて踊り子マリーを制作した実話の物語です。
その踊り子の髪に結ばれているピンクのリボンの意味も記されていますので絵本と実際の彫刻とをリンクさせて楽しむことができる絵本構成になっています。
14歳の踊り子マリーの悲しい境遇や諦めなければならなかったプリンシパルの夢、そして画家として重要な視力を失っていくドガの絶望とそれでも尚自分の成せることを成そうと必死に足掻きもがき作品を生み出すド姿が描かれており、一つの作品が生まれるまでのことの深さを知ることができます。
一人の画家とそのモデルの心の交流を端のしてほしい絵本です。
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