絵本『きょうのおやつは』
今週はケーキなどの甘いものにまつわる記事が目白押しなので絵本もスイーツ的なものを選択しようと書棚を眺めていると候補が続々と出てきました。その中で子供達の日常生活で鏡映像の学びとリンクしたこの作品を取り上げます。
この作品に唯一登場する猫の視線や仕草、表情の変化もとても愛くるしく見えます。子供が小さい頃の眼差しと猫の眼差しを重ねてみていたり、今は愛犬が料理中に見せる鼻腔を上にあげクンクンと香を確かめていることにだぶらせる描写があったりと鏡の無機質なキラキラ感に温かみも加わっています。
「きょうのおやつはにゃ〜にかな?」そう猫が言っているような表紙です。
さて絵本を日常的に読み聞かせをしていると見開きで読んだり見たりすることが当たり前なので、90度の角度で作品を楽しむ発想は大変面白いものです。作家の渡邉千夏は仕掛けの視覚伝達デザインをテーマにいくつかの作品を手掛けています。なぜこのような発想に至ったのかを伺いたいものです。
この絵本は上部分が鏡になり下部の絵を映し出すことで成立するこの絵本です。どのような角度で開くと正しく見えるのか、開きすぎると絵以外のものがどんどん映り込んでくる楽しさも変化する面白さにも気付くことができます。写真の卵が写っている上部は鏡部分で実際の色味はシルバーなのですが、自分自身が写り込まないように撮影すると白っぽくなってしまいました。見る角度や写す角度、光の加減でどのように変化するのかも楽しむことができます。
私が子供の頃は水たまりを見つけてはその水面を覗き込んでどのように映り込むかを楽しんだり、池や磯を覗き込んで生物を見ているとその映り込みの面白さを発見したり自然に学ぶ環境が身近にあったものですが、昨今は子供達のスケジュールも多忙でそのようなゆとりがほぼない状態です。かなり残念なことではありますが親がその自然から学ぶ環境を設定したり、このような絵本でおさえるしかないのでしょう。
この絵本の魅力に必ず子供たちは心を奪われます。ホットケーキを焼き上げ、さぁ食べようというまでの時系列を絵本化してあり、牛乳やシロップ紅茶の注がれる様子、ホットケーキ液のとろ〜んとした見た目、ホットケーキをひっくり返す場面はあたかも本物を見ているような感覚にさえ陥り、虚像が立体的に見える面白さ満載です。
子供の心を掴んで離さないこの作品を是非一度味わってみませんか。
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