提案『児童書に導くために』

この記事を書き出す前に児童書と絵本との違いを考えてみたいと思います。

絵本は圧倒的に文章よりも絵のインパクトが強く、作品によっては文章が全く無い作品もあります。また絵が文章を補い文章もまた絵を補い合いながら融合し、その効果により子供の理解を助け作品の世界へと誘なってくれます。一方児童書は挿絵はあるものの極僅かで文章を断片的に捉えただけの役割でしかありません。作品の内容を理解するには文章でということになります。圧倒的に文字の量が増え文章も複雑になり長文になり絵本のような視覚重視内容を理解することはできません。児童書では文字をすらすらと読みこなし、同時にその読んだ内容を即イメージ化し読み進めることが必要になる新たなハードルの高い扉を開けなければならないのです。

絵本から児童書に移行するためにはしっかりと作品を読みこなす言語能力と想像力が必要となります。よって児童書に移行できる年齢は小学校低学年と考えておけば間違いはないでしょう。しかし欲を言えば小学校入学前の年長児で児童書に移行しておけば、修学後の国語の授業にも余裕を持って臨むことができます。そのためにすべきことをこれから考えていきましょう。



1、文字を正しく読めるようにする

ひらがな、カタカナを確実に読めるようにし、1文字でも多く漢字を覚え意味を理解できるように努めさせましょう。なるべく1、2年生の漢字は早めに読み書きを進めておくことや辞書を引くということも身近な行動として獲得させておきたいものです。それが思うように進まない場合はせめて漢字にルビが振られているものを選んで与えることが必要です。そうすれば子供自身が自らの手で作品をとり読むことができるようになります。



2、朗読を多く聞かせ想像力を養う

本の文章や内容の理解を絵本は絵が手助けしてくれるため視覚重視の幼い子どもにとっては児童書よりも絵本が向いています。しかし本当の意味での文章読解に必要となるのは言葉を介した書物です。よっていずれは絵本から文章の多い児童書に移行しなければなりません。絵がなくても作品を理解できるようにするためには聴覚を活用した朗読を聞くことが適しています。耳から入る内容を想像し思い浮かべることができるようになるととても楽に読解が進んでいきます。我が家の場合は読み聞かせの場合はなるべく短めの初見作品を目を閉じて聞かせたり、文学作品を朗読で聞く機会を設けたり、一番多く取り組んでいたのが落語を聞くということでラジオを聞くということも大変良い方法だと考えています。何れにせよ視覚にとらわれずに耳にした言葉だけでその内容を理解しようとする想像力を磨くことが重要です。



3、想像を働かせるジャンルの種蒔きをする

ある程度耳から得た物語を理解することができたら多くのジャンルを幅広く理解する力を養うようにしましょう。例えばファンタジーな世界観を持つものや歴史的内容を指すもの、冒険的な話や自然科学や文化や伝統、芸術そして時代に即した内容などさまざまな作品に触れる機会を持たせておくことが必要です。私は絵本と児童書の間には大変定義が難しい幼年期特に5、6歳児の絵本をさらに児童書寄りに一歩踏み込んだ幼年童話期があると考えています。その定義は大変曖昧で定義付けが難しいこともあり何を持って一線を引くかが難しいのですが、日々子供達に触れているとその年齢に達した時に児童書へ移行することが最も重要であり、人生に読書というものを手にさせるか否かの際、間にいると感じています。だからこそ想像力を大いに働かせて思い浮かべることができるように多くのジャンルに手が出せる関心の種蒔きをしておくことが重要だと考えています。



4、童話を深く読み進める経験を多くさせる

はめての児童書は小分けにして読み進めることが肝要です。先にも記しましたが絵本と児童書では大きな違いがありすぎて一気に絵本の世界から児童書の高い頂には登ることができません。そこで5、6歳の子供には幼年の童話期という物事を深く考える時期に多くの童話を読み深い思考ができるようにすべき時期が必ずきます。その関所を超えて初めて児童書へと移行することが可能になるのです。人間の深い心理描写を感じ理解し、人間の本質を見抜いたりそこから現実に置き換えて物事を理解しようと思考し、人間とは何かを新たに発見したり理解し得ないものに気付いたりと深い位置付けで人間や他の生物、社会や世界ひいては宇宙、人類を理解しようとする思考的努力を獲得させるべきものであると考えています。童話の世界観から万んだことを現実に置き換えて考えることができるようになれば、児童書への理解はより一層進むことになり精神性の高さを獲得することができるでしょう。



5、好きな作品を場所を変えて何度も繰り返し読む

幼年童話期から児童書に移行できるか否かの瀬戸際の時には、好きな児童書を何度も読み返すことを場所を変えて実行します。なぜ場所を変えるかということですが子供の脳は多くの刺激を与えれば与えるほど良い結果を生み出します。我が家の子供たちは夏はエアコンの効いた一番涼しい特等席で、寒くなるとぬくぬくとできる暖房器具の前で、涼しさを感じる春はベランダで、秋になると夕暮れを感じる場所でと家の中でも季節や時間によって場所を転々としていました。すると繰り返していた作品にも新たな発見をするものです。これまでに見えていなかった扉がスッーと開くような感覚を味わうことができると話していました。好きな作品を場所を変えて読むことは一つの作品を深く掘り下げることになります。それがあれば必ず次の児童書を手に取ることにつながりやすくなります。似たようなジャンルの本に手を出すかもしれませんし、好きな本を書いた作家さんの作品を手にするかもしれません。愛読書を持つ喜びを獲得させておけば良いと考えます。

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