絵本『ねことことり」
第28回日本絵本賞を受賞したこの作品は、現実世界では捕食動物と非捕食動物の関係にある猫と小鳥が互いを思い合い歩み寄りながら友情を育んでいく物語です。立場を超えて交渉を続ければ互いを尊重した良い関係が作れるはずだということを教えてくれています。
作品を手にとればこの作品の美しい表紙に目を奪われ、ページを次々と捲ると更にハッと息を呑む緻密な自然描写が目に飛び込んできます。絵を眺めているだけでもその長閑な風景に癒され原風景の残る場所へ足を運びたくなります。
物語は猫はこぶしの枝を縛って出荷するのが仕事、そしてそのこぶしの枝でしか巣作りができない小鳥(ルリビタキ?)が譲ってほしいと訪ねて来て交渉します。植物が咲き乱れ自然豊かに見える場所であってもこぶしの枝が見つからないというのです。猫は生活がかかっている仕事であり、小鳥は種の保存がかかる仕事です。自然豊かな描写の中にも環境破壊が進んでいるのかと頭をよぎります。そして猫はその小鳥を受け入れ互いに必要なものを分かち合いながら日々を過ごしていたにもかかわらず、ある日パタリと小鳥が姿を見せなくなってしまいます。
猫の気持ちになってみたり、小鳥の立場になって考えを巡らせて作品を楽しんんでほしいと思います。共存共栄とは何か、譲り合うとは何か、相手を慮るとは、感謝を届けるとは、種を超えた友情とは、自然破壊とは、環境保全とは、今私たちにできることとは・・・色々な角度で物事を捉え想像することができる作品です。
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