提案『造形を愉しむ No.2 粘土造形』

前回2024年5月13日提案『造形を楽しむ No.1 泥水で遊ぶ』を記してまいりました。泥水で十分遊ぶことができたならば手が汚れることにも抵抗なく粘土造形を楽しむことができます。粘土造形の醍醐味は作り手側の気持ちの働きや手指の動きによって粘土を自由自在に操り粘土の形を変えることができることです。そして手を動かしているうちに無心になって思いのまま表現していたり、年度の触り心地の良さに溜まっていたフラストレーションが解消されたりもします。私が子供達に造形をさせるときに注視しているは、子供達がどのような思いで粘土と向き合っているかということです。

例えば強いものや大きなものに憧れを抱くことや戦いごっこが好きな場合には、粘土の扱いも少々乱暴になり叩いたり潰したり引っ張りぱり千切ったりします。このような行動は発達の延長線上にある場合が圧倒的に多いので心配はありませんが、お友達とのトラブルや躾上の課題を抱えていることがあれば、粘土造形に何かしらのシグナルが出てくることもあります。その場合には単に粘土造形の指導というわけにはいかないことになります。

また小さなものが好きな発達を迎えている場合には小さく丸めることだけを行ったり、秩序性が出てくるともの作りではなく単にちぎったものをぽんぽんと並べることに意識が向けられることもあります。そこで表現された子供達の発達や感情を読み取り対応することもまた必要といえます。


子供の置かれている発達段階を理解しておくことと心情や環境などを踏まえたことも考慮した上で造形を愉しむ心地よさや表現を獲得していくことができればと考えます。また粘土で鍛えたモータースキルは料理に活かすことができます。実際の包丁の扱いに抵抗がある場合には粘土を遊びで道具の扱いをとことん教えることもお勧めします。

今回は表現する上でどのようなモータースキルを使い愉しむことができるのかをみていきましょう。

1、切る

切ることは子供の憧れもあり包丁などを用いて野菜や果物などを切ってみたいとの気持ちが芽生えてくると粘土遊びを通して練習をすることができます。粘土セットに付属している粘土ベラなどを使用して切ることを促しましょう。本来粘土を扱う時には『2、引きちぎる』が初めに行う動作ですが、子供の脳育てに効果があがりやすい料理を頑張っておられる生徒さんが増えてきたため最初に取り上げています。



2、引きちぎる

引っ張って千切ることは親指と人差し指、中指の力が必要になります。粘土の伸びに楽しさを感じて繰り返すこともありますが、引きちぎることは瞬発的に力を指先に入れることができるので指先を鍛えることができます。我が家では小麦粉をこねて引きちぎるすいとんを作る場合によくさせていたモータースキルです。九州のだご汁、香川だんご汁、岩手のひっつみなどと呼び名はいろいろで昔からお手伝いとして引きちぎることが活かされています。粘土遊びをして指先を鍛えたら美味しいものをいただく実践も楽しむと良いでしょう。



3、叩いてひとつにする

引きちぎったものを寄せ集めてひとつにするためにトントンと軽く粘土ボードに叩き合わせます。粘土を袋から出したら必ずして粘土を柔らかくすることと手指の動きを無理なく進めるためのものです。



4、捏ねる、練る

紙粘土や小麦粘土、米粘土、寒天粘土などは捏ねる必要がありませんが、土粘土や油粘土、シリコン粘土などは紙粘土などに比べると硬いので捏ねる必要があります。捏ねるには指先だけではなく手全体で力を入れて柔らかし手に馴染むようにしていく必要があります。力のない1、2歳の子供には土粘土や油粘土、シリコン粘土は不向きかもしれませんので、紙粘土や小麦粘土、米粘土を使用しましょう。手に力を入れ捏ねることや練ることを繰り返すと粘土は段々と手に馴染んでくるようになり、扱いやすく造形しやすくなります。手指に力をつけることになるので是非とも行なってほしいモータースキルです。



5、丸める

この丸める動作は1歳の子供でも楽しくできる動作で、手の力を抜いて弱い力で触れる感覚動作が必要です。初めて丸める時には手を上下にし、片方の手のひらの中央を窪ませもう片方を山形にし大きめのビー玉を転がすような練習を行います。但し触れる調整ができなけれぎゅっぎゅっと加圧して潰してしまうこともあるので、そっと触れながら回す練習を行いましょう。粘土の大きさを変えて丸め比較遊びをしたり、大きさの違うものをたくさん丸めそれらを用いてくっつけた造形を楽しんでみるのも意外と面白いものができます。



6、摘む

摘む動作はいろいろな場面で行います。例えば小さなものを摘んで移動させる、汚れた洋服の一部を摘んでつまみ洗いをする、そして私も子供の頃にはつまみ食いと称した味見を楽しんだものです。塩ひとつまみなどという時には力を抜いて摘む、ボタンを摘んでホール穴に入れる、アルコールティッシュなどを容器から摘んで引き出す時には指先に力を入れる、靴紐を結ぶ時には力を抜いて摘んで動作を行うなどいろいろな摘むを経験してほしいと考えます。丸めたものをつまんで軽く押すと凹みができます。その凹みを利用した造形で花びらをイメージする造形や動物の耳を作るなどに活用できます。

日常生活には多くの摘む動作が溢れています。指先の感覚を研ぎ澄ますために粘土の材質を変えて楽しんでみましょう。



7、伸ばす

粘土を転がしながらどんどん伸ばしていくと子供たちは楽しそうに「やりたい、させて」と声をあげてきます。同じ箇所をこすりながら伸ばすので極端に細くなったり千切れたりしますが、このような経験を経て長く伸ばすためにはどうすれば良いのかを考え始めます。また繰り返すことにより均一に伸ばすことも学ぶことになります。伸ばしたものを造形に用いることで華やかさを得ることができるでしょう。この伸ばす動作をした作品を明日簡単工作記事にてアップしますのでご参考になさって下さい。



8、くっつける

子供達が粘土工作をすると各パーツを作ってくっつける手法をとります。この方法は比較的簡単に造形することができるのですが、上手にパーツ同士をくっつけるのに少々コツが必要になります。土粘土や油粘土は比較的指でなめしていく方法で接着することはできます。しかし紙粘土などは乾きが早いのでひび割れした場合はなるべく早く油を少しつけて伸ばしてみましょう。ただ100年均一の紙粘土はその方法でもひび割れを解消することはできない場合が多いように感じます。その方法でもくっつかない場合は木工ボンドなどで接着します。土粘土や油粘土、シリコン粘土には使用しないようにしましょう。



9、削る

これは陶芸をする方には一番納得のいく方法だと思います。しかし子供が作りたい対象物には向いていないことが多く、飾りをつける程度に使用する方法です。



10、捻り出し

この捻り出しを子供達に最終的に獲得してほしい手法です。大きな粘土の塊から押し出したり、引っ張るなどして形作っていきます。かなり器用でなければ難しいものですが失敗も少ない方法です。よって粘土遊びの回数を増やしてこなして捻り出しを獲得していきましょう。



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