提案『造形を愉しむ No.1泥水遊び』

お母様方は子供が泥遊びをするのに抵抗があるかもしれません。そんな私も子供を持つまでは海に行ったわりに砂が足につくことやサンダルの中に入ってしまうこと、雨降り時の泥はねや泥が靴の底に付着するだけでも嫌悪感がありました。このことは「人は足元を見ればその人がわかる」と親に教えられたからかもしれませんが、いざ子供を持つと水溜りの中には入りたがる、泥の中でも平気で駆け回るなど自分自身の固定概念を180度覆されその行動を納得し受け入れるまでには時間がかかりました。

しかしその概念を覆された先には子供達の触覚に関する良質な刺激があるのです。ですから日々の生活で受け入れるのが大変であれば、思い切って汚れても良い日、良い機会を設けてほしいと考え今回はこの泥や泥水遊びの記事を記します。また泥遊びを通して子供達にどのような刺激を与え、それがどこに着地し能力を育てることができるのかを提案してまいります。

小さな子供達は水遊びが本当に好きで放っておけば何時間でも夢中になって遊びます。水遊びと泥水遊びは似ているように思えて実は思考的なものは似て非なるものです。水はさぁっと流れゆくものやチャプチャプと触覚に働きかける感覚を受けます。また砂であればさらさら・ざらざらとしそこに水を加えると湿り気が加わり砂が固まりますが、軽くさわればほろほろと崩れてしまいます。ではその対極にある泥遊びとはどのようなものでしょうか。

泥遊びとはその泥の水分がどの程度含まれるのかにより遊びの様相は大きく変わり、また受ける感覚も大きく異なります。子供達の思考力と発想力や想像力を大きく育て変化させることに繋げやすい遊びです。乳幼児期の子供にとってとても重要な感覚統合への働きかけがあります。自分の体の位置や動きそして筋肉や関節の運動を知る力の入れ具合を確認する固有覚、傾きやスピードを感じるバランス感覚を司る前庭覚、触れている場所やその強さを知る触覚を繋げていく感覚統合は遊びの中や日常の体験で獲得しなければならない重要な部分です。それが水遊びでも行えますが、泥遊びの方が水遊びよりも質が高いと考えています。

では具体的な方法を記してまいります。



1、土に砂が少し混じり水を多く含む泥水で遊ぶ

泥遊びとイメージするのが人それぞれだともいますが、田んぼに入った経験のある方は泥の中に足が沈んでいく感覚を想像すると思いますが、足底に泥がないイメージをしてください。この泥水は水に泥の色をつけたものとお考えになるとよろしいでしょう。

水分を多く含む泥みず遊びは先ず汚れてもいいんだよと子供に教え、親も汚れることを受け入れる両者にとって決意する儀式でもあります。昨今はあまりにも汚れることに親御さんが敏感になり過ぎて、実は手に工作用の糊がつくのを拒絶するもいて感覚統合が十分に発揮できない状況に陥らせている場合があります。感覚統合がうまく働かないということのデメリットは大変重要で人生に必要な大きな忘れ物をしてしまうことになります。忘れ物ですから使いたい時に使えない、持っているべきものを持てていないことは損失になるわけです。ですから先ずは見た目から受け入れることが重要になり、汚れてもいいと自覚できればあとは水を得た魚のように楽しく遊べるようになります。

子供達にとって水溜りのピチャピチャとした感覚と同じように堪能することができ、親御さんにとってはお洗濯の心配や目・口・鼻の中に泥水が入るのではないかと大変気になる遊びであることは間違いがありませんが、それ以上に泥水が跳ねる様子を見て体験し実感し、自分自身がどのように泥水を扱うかでその泥水の変化を確認し学ぶことができます。我が子達は泥水を少なくした場合に内股と外股で歩いても泥はねはするか否か、爪先の泥水が跳ねる内股と踵の泥水が跳ねる外股という小さな発見のように見えて観察力をものすごく発揮する学びをしていました。またこの遊びを通して雨降りにズボンの裾を汚さないように歩くことができるようにするには何てことも考えていました。このような発見ができるようになるにはそれなりの遊び回数が必要にもなりますが、子供なりに思考と観察をとことんすることができる遊びでもあるのです。

我が家ではベランダに小さめのプールを出してその中に陶芸ようの土を購入し水を多めに入れ、その土を手で溶かすところから行いました。あるお母様は陶芸用の土も気になるとして泥パックをご使用になった方もおられました。またそんなことは面倒だとして田植え経験に参加した生徒さんもおられました。いろいろな考え方はありますが、私はお母様が考え動くことが泥遊びにはまず重要なことと考えます。泥遊びは体調が思わしくない時、泥を口にしないようにしなければならない健康に直結することもありますが、人生100%のリスク回避なんてできません。リスク回避をできるだけ行いその上に積み上げるべきものを積み上げることが子供のためと考えます。泥水の経験は一度はしていただきたい遊びだと思います。



2、トロッとした泥水

水分を多く含んだピチャピチャの泥水よりも土の量を増やして、ケーキのスポンジを焼く時のようなトロッとした泥水は子達に大きな刺激を与えました。泥水を足でピチャピチャと踏み鳴らすように跳ねさせて遊んでいた子達が、今度は手で掬い取ってとろっとろ〜と喜んでいたかと思えば、手でかき回して波紋を作って何か投げ込むものはないかと発想を膨らませていました。そのとろっとろ〜の泥水がチョコレートファウンテンに見えてきたと舐める真似をして遊んでいたり、「ココアです。チョコレードリンクはいかがですか?」と遊んでいたことが思い出されます。またチョコレートファウンテンのように流れるようにしたいと無理難題をいうので、お風呂場から腰掛け椅子と洗面器と桶を持ち出した記憶があります。ホテルのビュッフェに行く度に見ていたチョコレートファウンテンを思い出しての行動だったのですが、チョコレートを食さない子でも視覚に働きかけるものの印象の強さを実感しました。

水のさぁっと流れる感覚や泥水のピチャピチャとした感覚とは違う手や足に纏わり付くトロッとした感覚はどこでも体験できるものではありません。泥温泉などに入ると全身でその感覚を味うことができますが、日常にその感覚を求めることは難しいので泥遊びを通してこの感覚刺激を受けると病みつきになります。病みつきになるということは脳に良質の刺激を送ることができ何度もやりたがります。その要望に応える前向きに受け入れる自信があるか、ははたまた諦めて受け入れる覚悟が必要のケースもあるかもしれませんが、私の体験から言うと一度目よりも二度目の方が子供達は生き生きとしています。二度目に経験させた時には目は爛々と輝き、手首まで入れたかと思いきや腕まで入れニヤニヤとし、終いには全身で泥水に浸かることも躊躇なく行っていました。こうなるであろうと予測を立てて腹を括りさせたので「やっぱり、そうなるよね・・・」と半笑いした記憶があります。ベランダも窓も壁もどこもかしこも泥だらけにはなりましたが、その子達の笑顔は私の一生の宝になり、私の半笑いも良い思い出です。今ではまだ見ぬ孫にもさせるぞ、させるべきだと考えています。



3、硬めの泥あそびをする

子供にとって先の1、2の泥水あそびがあまりにも楽し過ぎて硬めの泥で何かを作るぞとなると最初はそう楽しそうには見えませんでした。そこでありとあらゆるものを導入することにしたのです。スコップやバケツ、プリン容器、空き瓶や缶などあらゆる材質のものを準備し道具使用に移行し、泥を推し固め山を作ったりその中を掘り乗り物のおもちゃを走らせたり、山と山の間に溝を掘り水を流し川に見立てたり、シンデレラ城やモンサンミッシェルなどの建築物を作ったり、ローマのコロッセをに似たものを作り闘牛させたりと親子で作るということを夏休みに行いました。小さなお子さんだとおままごとや泥団子などを作ってお店屋さんごっこなどの遊びもできるでしょう。4、5歳になると社会的なものを見せていくことが必要になるので住んでいる我が町を作ったり、旅行した場所を再現したり、空想の世界を表現して遊ぶということも良いでしょう。いずれにしても感覚統合を十分にやり切った後は、もの作りに結びつけることを私は目標にしていたので好きなものを作らせる、自由な発想で表現できるように協力は惜しみませんでした。例えばエルメスのカップが必要と言われれば代用できるものを探し渡すものの、それではダメだと子に言われたら理由を尋ねその理由に納得できたら与えました。時にはバカラのグラスが必要と言われれば、こっそり主人が大切にしているバカラを・・・子供にとってはわかるはずのない価値のものですから最も簡単に要求してくるのでしょうが、そこに正当な理由が説明できれば本物を渡して使用させてもいいと思うのです。今ならバカラの価値も理解でき驚愕の事実に目を見開いてもいますが、本当に必要な理由を見出せるよう考えプチプレゼンができることの方がバカラの価値よりも尊いものだと考えています。



我が家ではベランダのビニールプールでの泥水遊びや泥遊びは夏に行うもので、それ以外の季節は家の中で粘土などを使用した造形遊びに結び付けました。一夏で1〜3の遊びを行うので秋の粘土遊びは泥水遊びをしたい気持ちを抑えつつ、新たなステージの造形のイメージを膨らませる季節でもありました。子供にとって大きな刺激や良質な刺激を受けた遊びは強烈に印象に残るので忘れさせるのが大変ではありますが、やはり泥水遊びや泥遊びは季節や天気を選んで遊ぶことになるのだと諦めることも子供にとっては必要な学びです。

本来は自然の中から学びを獲得する方がベストなのですが、現代はそのような環境を作り出すのも難しいので、親からアプローチしていかなくては子供自身で学びを発見していくことはできません。冒頭に子供の発達に重要な感覚統合はぜひさせなければならないものであり、これからの人生を切り開くためには子供の能力を磨くことも必要になります。その遊びの一つが上記の泥遊びです。是非とも勇気を振り絞ってこの夏泥水遊びに挑戦してみてはいかがでしょうか。

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