絵本『イワシ』
今回取り上げるのは福音館書店のかがくのとも2013で出版され、その後ハードカバーになった絵本です。まるでレオ=レオニ作の『スイミー』に似たお話と評価する方もいますが、この作品はスイミーが物語性に特化している位置付けとは異なり、イワシの生態やイワシがどのように自然界で生きているのか捕食と捕食者との関係性をリアルに描き、イワシの子がシラスであることを子供達が知るきっかけになり自然科学や理科的内容、生活に密着した三方向からの捉え方ができる作品です。
イワシが群れを作り口を大きく開けてプランクトンを食べていたかと思えば、海上からそのイワシ目掛けてものすごいスピードでイワシを狙う生き物、海中の中で彼らを狙うものなど危険がいっぱいです。イワシの最大の特徴である秩序を乱さず美しい大きな姿を作り泳ぎ回る姿は士族間で遊泳するイワシの群れを実感できる圧巻の作品とも言えます。
『スイミー』のように物語性も重視し小学校低学年の国語の教科書に何度も取り上げられる作品も読解力をつけるには優れた作品ですが、自然界の海の中で繰り広げられているイワシという小さな魚がどのように生きているのかを知ることは、我々人間との関わりを知ることになり、昨今の地球温暖化でイワシの稚魚が減っていることも含めて地球規模での何が起こっているのかを知る自然科学や環境問題を考える必要性が出てきます。先日も中学受験を終えたご父兄の時事問題に関する質問がありましたが、幼い頃からそのベースを作るのにこのような作品は幼児期から読ませるべきだと考えます。それは中学受験のためにと申し上げているのではなく、私たち人間の暮らしと密接に関わっているから知るべきだ、考えるべきだと考えているからです。その幼少期からあらゆる視点で物事を考えることができるようになるための作品として福音館書店の『こどものとも』や『かがくのとも』は良質な作品であると思います。
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