提案『脳が最も効果的に学ぶのは失敗No.2』

前回の記事は人間は失敗を繰り返しながら消去法で正解に辿り着くこと、そして失敗の修正は理論的実践が好ましいことをアナウンスしましたが、今回はその失敗ということに焦点を当て、効果的な失敗、残念な失敗、失敗を更に活かす熟考、そして小さなアクシデントに対応すること4つの柱で話を進めてまいります。

この記事の序文としてこれまで子供達の失敗がどのように捉えられているのかを考えてみましょう。

現在も子供達は間違いや失敗をしないようにと家庭教育や学校教育を受けて育っています。学校教育では成績をつけなければならないためテストや課題提出、実技などを評価するための点数付けは避けては通れませんが、家庭教育や習い事においても失敗やミスはいけないものとして子供達は受け止めている傾向にあります。本来は間違いやミスをした場合には宝物としてそこから学ぶべきことをしっかりと考えさせる教育が重要で、子供自身にその間違いやミスをどのように改善し克服するのかを指南しなければなりません。しかし現状は的確な指南がなされず子供達が同じ間違いやミスを繰り返し遅々として改善しない状況が見受けられこともあります。人生を左右する事案での失敗は避けて通りたいものですが、日々の生活の中での失敗ほど尊いものはありません。しかし日々子供たちと接していると何度も同じ間違いをする子、問題をあらゆる方法で確かめ失敗をし繰り返し解法を学びとる子、失敗をしないように確りと考え2度と同じ間違いをしない子、失敗に心折れてやる気を失う子、失敗をしたがらず決まった方法以外での学びをしたがらない子、失敗にすら気付かない子と様々なタイプの失敗があります。そのような子供達に触れる中で優秀な子供たちが実践しているのが、失敗を恐れずに一つの問題に対して幾つかの方法で挑み、失敗をバネにして解決策を見出し同じ間違いはしないことです。これは発展応用問題に取組むためにはどうしても必要不可欠なものです。是非幼い頃から遊びや工作、料理、お手伝いなど勉強以外のことで実践するようにしてください。

それではここから脳研究を元に説明してまいります。

これまでの脳研究ではやる気ホルモンと呼ばれる従来のドーパミンが成功体験や期待以上の報酬などで増加し脳が活性化されることは知られていましたが、同時に逆に失敗を繰り返すことで従来のドーパミンの活動が低下することも判明していました。しかし昨今の脳研究では新型のドーパミンが発見され、実は失敗をすると脳の発達を促すことが判っており、質の良い失敗でその新型ドーパミンが増加することが判明しています。海外ではこの研究結果を子供たちに伝え、間違った時にこそ脳が活性化し理解が深まるものであるとし学校教育に取り入れ成果を出しているそうです。そう考えると世界的に有名な偉人の中にも失敗を繰り返し成功に辿り着いている人物は多く昔から行っていたと考えられます。今回はさらにこの研究を踏まえて失敗にも質があることを認識していただき、お子さんがどのような失敗をしているのか、その失敗は効果的学習に活かせるのかどうか、失敗の質を上げるのはどうすべきかなど子育てに取り入れてください。




1、残念な失敗

失敗にも効果的と残念な結果をもたらす失敗があることをお伝えしました。多くのお子さんの失敗はこの残念な失敗が多いことに気づいている親御さんは少ないものです。例えば同じミスを繰り返しなかなか修正ができない場合がその残念な失敗に分類されます。反復練習をすればどうにか習得できると勘違いされている親御さんも多く、的確な指導がないまま反復練習を子供達はさせられるので練習自体を拒むようになります。先ず幼い子供は失敗についてはミスに繋がっているのかわからない場合が多いものです。よって何も考えずに場当たり的に実行し失敗し、何がいけないのかよく分からないまま親御さんのジャッジを受けるのです。

つまり何かに気付いたり熟考したりすることが全くなく失敗を繰り返すのがこの残念な失敗です。また失敗してもいいやという投げやりも残念な失敗に繋がりやすいものです。今まさにひらがな、カタカナ、漢字、算数などの学習をしている子供達の中にも同じ間違いを何度も繰り返している場合がありますが、みすみす賢くなるチャンスを逃しています。どのようにしたら失敗するのかを気付かせ考えさせる事が残念な失敗から脱出する方法であり、成功の手本を見せることも解決方法でもあります。

なんとなく考えもせず成り行き任せ、投げやり、失敗後の熟考がなされないということがないように効果的な失敗へと繋げられるようにご家庭でご指導ください。




2、効果的な失敗

親御さんが最も関心のあるのがこの効果的な失敗とは何かということでしょう。

私たち哺乳類は消去法で正解を出していく動物であることを前回の『脳が最も効果的に学ぶのは失敗 No.1』にて述べましたが、我々の脳は失敗し後悔したり、痛い思いをしたり、どうにか答えを導き出そうとすればその晩の眠っている間に失敗に使用した関係回路の閾値を上げ、失敗した回に神経信号を行きにくくさせ不必要な情報は捨て、必要なことは残すということを繰り返すとされています。実験ではじっくりと考え成功するよりも、じっくり考えて失敗をする方が脳が活発に動いているそうです。つまり単に成功したということよりも「なぜ失敗に至ったのだろうか」「どこの段階でミスが生じたのであろうか」と思考し熟考することにより脳が成功したよりも更に活発に動き学習を促進するというのです。あれこれと推測し考えを巡らせ失敗を繰り返しなかなか正解や成功に辿り着けないということが重要だというのです。

つまり脳に最も効果的に働きかける失敗は、多種多様な方法で失敗や間違いを繰り返し、なかなか成功に辿りつかない失敗が効果的な失敗と言えるのです。10回ミスをするなら毎回違う方法でミスをするということが良いということになります。




3、失敗は熟考すべきである

先にも記しましたが失敗をした時に必ず熟考し直すことが重要です。子供達の中には失敗したら直ぐにチャレンジし同じ失敗を繰り返す子がいます。それよりもその時に明確に修正箇所が理解できている方が修正や訂正がに結びつくので同じミスや失敗は起こさないのです。しかし何の考えも持たずただ失敗したから直ぐに実行することは失敗の大元がわからずに実行しているのですから、失敗の確率も減らせませんし同じ失敗を繰り返すことになります。

つまり効果的な失敗においても残念な失敗においてもなぜ失敗したのかを考えることが必要ということです。

失敗をし熟考している場合はフリーズし微動だにしないことが多いのでそのような時には声を掛けず静観した方がよいでしょう。どこが間違っているのかを見直し確認していたり、これから先どうすれば良いのかを考えることが重要です。失敗した時にこそ最高の取り戻しができるエクササイズです。私たちの脳には天文学的回路があり、その回路を使用し失敗から得たことは確実に脳の働きにフィードバックされ、失敗した回路には電気信号が流れなくなり、成功すると新たな回路が確立されます。我々が失敗を消去して成功に辿り着く最大のポイントは熟考するです。




4、小さなアクシデントを活かす

小さな子供たちは毎日の生活の中や遊びの中で小さなアクシデントや細やかな未成功を経験し自分自身でできることを増やしていきます。親御さんは失敗をさせたくないがために成功の早道を教える方が圧倒的に多いものですが、実はそれでは子供達は失敗に対する免疫が作られず失敗する度に心折れる子もいますし、成功しか受け付けないという頑なさで成長と共に融通が効かず壁に当たることもあります。そして幼い頃の失敗時には必ず親が思考の種まきをしなければなりません。「Aの方法でやるとできなかったんだね。でもBやCの方法もあるよ。やってみたらどう?」という具合に幾つかの選択肢を与えて子供自身に実践させることが重要です。もうここまでの内容をお読みくださっているのでお分かりだと思いますが、何度失敗したってやり直せばいいんだ、そして思考を巡らせて実行してみよう。そしてその実行の選択肢は幾つあったっていいんだ。失敗を楽しみながら成功に辿り着くことが脳の活動を最大限に引き出すことになるということであり、それを幼い頃からとことん実行してきたら質の良い失敗で効果的に学ぶことができるようになるのです。それが親の関わり方です。

またここで付け加えておきますが子供の中には自分自身がうまくできなかったことを他人のせいにする場合があります。自らの失敗は自らが刈り取るということ=人のせいにしない(誰のせいでもない)ということを言い聞かさなければなりません。なぜなら失敗を自分自身で認めないと失敗したことが脳の中で記録として残らないので成長するチャンスは生まれないのです。別の見方をすると人の失敗を見て自分の失敗のことのように受け取ると脳が成長するチャンスを得るのです。『人を以って鑑と為す』小さな子供たちにも必要な事です。



トーマス・エジソンは「私は失敗はしていない。うまくいかないことを10000通りのやり方を見つけただけだ」そしてビル・ゲイツは「成功を祝うことはいいことだが、失敗の教訓を心に留めておくことのほうが大事だ。」先人もそして現代の成功者の言葉からも失敗の重要性を残していることから、失敗は決してマイナスでも悪いことでも避けるべきでも恥じるべきことではないのです。「失敗ってこんなに楽しくて素敵なことなんだよ。さぁどんどんチャレンジしてみよう。失敗を恐れないで。」と子供達に教え伝えることができればなんて素敵なんだでしょう。このように教育が変われば日本の子供達はどこ分野でも活躍できる人材が出てくるのではないかと思うのです。そうあってほしい沖縄から・・・切に願うばかりです。

次回の2025年2月10日の提案記事は『脳が最も効果的に学ぶのは失敗 No.3』では失敗をさせるべきタイミングや失敗だけで子供は成長するのかを記事にしてまいります。

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