提案『大きさを測る No.6時間』
時間という抽象的概念を子供に教えることは一足飛びにはできず年齢や発達段階に合わせて段階的に教えなければなりません。子供に時間の概念を教えるには年齢や発達段階に応じた工夫が必要です。抽象的な「時間」という概念を幼児や未就学児が理解しづらいく視覚的・体験的に教えることが重要になります。今回は時の概念の働き掛けを提案してまいります。
1、乳児期は朝・昼・晩の概念を
当教室では乳児期からお母様方に時間的概念の『朝・昼・夜』を言葉にしてお子さんに伝えることからスタートするよう取り組みをお願いしています。つまり朝目覚めたら「おはよう。もう朝だよ」「太陽が眩しいね。これをお昼っていうんだよ」「そろそろお外が暗くなってきたから夜だね。お休みの時間だよ」という具合です。子供に時間の感覚や時計の読み方を教える前には時間経過を日常生活と結びつけ、焦らず段階的に時間に関することを深めていくべきなのです。
2、1歳からは日々のルーティーンで時間を意識
抽象的な「時間」という概念は特に幼児や未就学児にとり理解しづらいものです。よって毎日その日の時間の流れを確認しながら日常のスケジュールに親しみ、時間を意識した言葉掛けを増やして意識させるように努めるようにします。
例えば、起床時には「朝だよ、おはよう。顔を洗ってうがいをして朝ごはんにしようか」
「太陽がお皿の一番高いところに来て眩しいね、だからお昼ご飯にしよう」
「お日様が西の空に沈んできたね、夕方だね。もうすぐお夕飯の時間だよ」
「お外は真っ暗だね。お風呂に入って、絵本を読んで寝ようかな」と1日の大まかなルーティーンを繰り返すことで視覚的・体験的に「時間の流れ」を感覚的に学びとるように働き掛けを行います。
3、時系列(順番)を教える
絵本には年齢相応若しくは発達に即したどうにもをお願いしていますが、絵本「はらぺこあおむし」は胎教若しくは出産直後から読みかせををお願いしています。その理由は思考力や先を読む力をこの絵本の反復で構築させること、そして時間軸を育てることです。「まず何を食べ」「その後に」「最後に」などと曜日ごとに食べたものを時間軸を表す言葉で順番を理解していくことをお願いしています。
「まず」「その後」「最後に」など時間軸の言葉を強調した働き掛けを行いましょう。
4、時の言葉No.1「今、〜の前、後で」を教える
3歳児に合った「時間の教え方」は2歳児の1日のルーティーンと時間の理解を引き続き行いながら、時間を表す言葉「今、前、後で」の理解習得から始めます。子供にとって「今」や「〜の前」は比較的理解できる場合が多いのですが、「後で」は時間的幅が広く受け止め方も個人差が大きい言葉です。例えば子供に「後でね」と伝えると要求が強い場合は「後で」と言われても数秒は待つかもしれませんが待てないことがよくあります。また親子で大きな時間軸のずれがあることもあるでしょう。ここではその場合の対処法は記しませんが、「今、〜の前、後で」以外にも「さっき」「前に」「次に」などの語彙を繰り返し使って時間軸を育てるようにしましょう。「〜した後に、〜するよ」と声掛けするのも良いでしょう。
5、時の言葉No.2「昨日・今日・明日」
「1日の流れ」や「時系列(順番)」を覚えることをしたのちに、最初の時の言葉「今、〜の前、後で」を理解した後には次の時の言葉「昨日・今日・明日」への促しを行います。
「今日は幼稚園でお誕生日会があるね」「昨日はお遊戯会があったから今日が休みだね」「明日は遠足だけどお弁当に何を入れて欲しい?」などの一日を表す時の言葉を理解するための言葉を日常的に使うようにして理解を進めます。この時の言葉にはその他にも日付や日数、曜日(週間)、月、年などありますが今回は内容を省かせていただきます。
6、時間感覚を体感する
色々な時の言葉を学んだ後に行うのが時間の感覚の取組みです。先ずは短い時間の感覚である5分、10分を体験し時間の感覚を理解します。5分ってこれくらいの時間なんだということを理解させるためにキッチンタイマーなどをしようし「5分間で片付けしてみよう」「10分間だけ本を読んでみよう動画見よう」など時間と活動を結びつける取組みを行います。最初は短時間ですが徐々に分数を増やして1時間=60分の感覚まで取り組みを行います。
7、時計のおもちゃを導入する
子供達の学習の土台は全て遊びからスタートさせます。時計のおもちゃで遊び、数字の配置や長短針の針の動きを遊びながら仕組みがどのようになっているのかを学んでもらいます。針が自由に動かせるアナログ時計のおもちゃを使用し「今〇時だよ」と動かしながら遊び、前段で行った「朝は6時に起きるよ」「夜は8時に眠るんだよ」など1日の流れを時計の針を動かした時刻で表現してもらう遊びを楽しみます。
8、時計の学習を行う
時計には長短針の他に秒針もありますから時計の動きを仕組みとして学ぶことが必要になります。1時間=60分、1分=60秒を長短針の針の動きに即した時刻表現をしっかりと読み書きできるようにします。この針の動きをしっかりと学習しなければ長針少しずつ動くことを理解できないことになり、正確な時刻読みができないことが生じます。
つまりここでは「何時何分=これくらいの針の位置」というイメージで覚えさせ、正確な時刻読みに繋げるステップを踏むことになります。この学びが出てきて初めて時計の本を活用していただきます。
この時刻や時間の学習は時刻や時間を読む事は勿論、時間の単位、計算問題、時間換算、時差計算、文章問題さなどまざまなステップを踏んでいくことになります。
9、抽象的な時間の管理も少しずつ可能に
時間学習が進めば抽象的な時間の管理も少しずつ可能になり、用事でも計画を立てて自分だけのお休みの日の過ごし方を「時間割」や「予定」として計画を立てて今年の夏休みを実行した小学1年生がおられました。夏休みの宿題を自己管理で行うことで2週間で宿題を仕上げたといいます。よく話を聞いてみると「遊ぶための時間を確保したい」という思いから起こした行動だというので、よくぞブレずに実行できたものだと感心してしまいました。ここまで来れば目標を実現することや将来の夢に向かって自発行動ができるようになるでしょう。
小学生の生徒さんには学校の時間割に合わせて行動することや放課後の時間の使い方、ご自宅での過ごし方に時間缶入りを取り入れて実行して欲しいと思います。
10、時計や時間を表現した遊びを
子供達の学習は乳幼児期の遊びを土台にして進めていくのが本来の学習のスタイルなので、この学習が入ると時計に関する絵を描いたり、工作をしたり『紙コップの腕時計』(記事はこちら)、画家の描いた作品に時計を探すなど行い芸術に結びつけて教養を深めるなどすることをお勧めします。下の作品は藤田嗣治の『私の部屋、目覚まし時計のある静物』作品です。その他にサルバトーレ・ダリの『記憶の固執』やパブロ・ルイス・ピカソの『時計をつけた女性』などがあります。
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