提案『鉄棒遊び No.2』
今回の記事は『鉄棒遊び No.1』(記事はこちら)を受けての内容となっています。鉄棒遊びにとって重要な「鉄棒を握る握力があること」、「体を支える腕の力があること」、「鉄棒の技を繰り出す身体の使い方が理解できているか」、「ご家庭での取り組み方」「ボディイメージの養い方」の5つの観点から記事を記してまいります。
1、握力
① 鉄棒運動では握力が基礎になる
鉄棒を握って身体を支えるためには自分の体重がかかっても鉄棒を離さない力が必要です。つまり握力がなければ鉄棒遊びは始まらないということです。鉄棒運動は静的(ぶら下がり)と動的(回転や懸垂)の両方で手指や前腕を酷使することになり、鉄棒を極めると自然に握力トレーニングになります。そのトレーニングは生後直後から原始反射の手掌把握反射への働きかけで確実に養われ、原始反射が消失したその後にもモータースキルを鍛えることにより器用さの獲得と同時に握力を徐々につけていくことになります。
② それぞれの年齢に合った鉄棒遊びでの握力の鍛え方
乳児・・・原始反射の把握反射に働きかける
1歳・・・鉄棒にぶら下がり、体重の重さを感じる経験をさせる
2歳・・・鉄棒にぶら下がる時間をのばし、お尻を持ち上げ、体を前後に揺らす
3歳以降・・・鉄棒にぶら下がり足を使い大きく前後に身体を振る、左右に身体を揺らす、懸垂を繰り返し行う
2、腕・肩・背中の力
① 腕・肩・背中の力が必要になる
鉄棒には握力に加えて体を支える腕の力が必要になり、筋肉を的確に使うことが必要です。まず上腕二頭筋(力こぶの筋肉)は鉄棒を「引き寄せる」動作で懸垂や逆上がりなどに使われる筋肉です。特に逆上がりや懸垂では体を鉄棒に近づけるために強く働きます。また上腕三頭筋(腕の裏側の筋肉)は鉄棒で体を押し出す動作(腕立て伏せや倒立など)で必要です。肩・背中の筋肉(広背筋・僧帽筋・三角筋など)は鉄棒では腕だけでなく、肩甲骨を引き寄せる動作が多く背中の力も非常に大切です。
② それぞれの年齢に合った鍛え方
乳児・・・仰向けで寝ている状態から把握反射を利用し親の指をしっかり握らせ、軽く引き上げる動作を無理なく行う。またずり這いやハイハイをたくさんさせる
1歳・・・はいはいをできるだけ長く行わせ、背筋を伸ばして鉄棒にまっすぐにしぶら下がる
2歳・・・爪先立ちができる鉄棒の高さでぶら下がり徐々に秒数を伸ばす、親が身体を支え上下させ懸垂のコツを掴ませる
3歳・・・ぶら下がったまま、体を前後左右に揺らす、懸垂ができるようにする
4歳・・・あごを鉄棒に近づけるようにし少し腕を曲げ3秒キープからスタートする、体を鉄棒に近づけるように逆上がりをさせる
5歳以降・・・腕立て伏せ を行い肘をしっかり伸ばす曲げるトレーニングも行う、足抜き回り(軽い前まわり)を行う
3、体幹の連動
① 体幹との連動
鉄棒運動では、重力に対して身体を支えたり、回転したりする際に常に身体の軸意識が必要になり、鉄棒の技を繰り出す時には体の使い方が理解できているかが鍵を握ります。握力 と腕力 に加えて体幹の連動が必要になりということです。つまり握力だけ強くても、腕・肩・背中の筋肉が発達していても体を上手く使えなければ鉄棒の技はできません。反対に体幹や腕力が強くても握力が足りなければ技を維持できません。従って鉄棒の上達には『握力 』『腕・肩・背中の力 』『体幹の連動』が三位一体とならなければ鉄棒の上達には繋がらないのです。ちなみに原始反射に働きかけを行なった1歳の生徒さんは何も働きかけを行なっていない1歳児とは格段に違いが見受けられます。現師範さに働きかけを行えば歩き出し手間もない1歳児でも三位一体の力が備わっているのです。その様子がわかる記事が記事はこちらです。
② それぞれの年齢に合った鍛え方
乳児・・・ギャラン反射に働きかけを行います。体のマッサージを通してボディイメージを作り、ずり這いやハイハイをたくさん行わせる
1歳・・・掴まり立ちや歩行をたくさん行わせる、歩行自体が安定してくると凸凹道、砂利道、傾斜のある道とさまざまな形状の場所を歩かせバランスをとらせる
2歳・・・鉄棒以外の全身運動も心がける、鉄棒ではぶら下がりながら足を前後に振る、腕の力を使いながらお尻を上げる
3歳・・・ぶら下がりながら前後に加え、左右にも振るように練習しその秒数も増やす、懸垂や前回りなどを行う
4歳以降・・・お腹を引き締めて体幹がブレないように技を繰り出す、うんていにもチャレンジする
4、家庭で鉄棒遊びと能力の開花
①乳児の場合
乳児期の鉄棒遊びは容易に行うことができます。例えば首座りをした乳児はお父様やお母様の指を握らせ引き上げるように起こすことができます。その時には必ず乳児の体を支えるもう一人のサポート人が必要です。
② 1歳児の場合
ご家庭内容のジャングルジムを使用する方法もあります。我が家ではホームセンターでしっかりとした木材やパイプを購入し、握らせて親が引き上げ子供に自らの身体の重みを感じてもらうことから始めました。公園にお散歩に行く度に鉄棒にぶら下がることを促し、その秒数をのばすようにしました。昨今は公園での遊具撤去が進んでいるのでご家庭で屋内用の鉄棒を購入される方も多いようです。
③ 2歳の場合
我が家では1歳半頃に家庭用鉄棒を購入し、いつでもその取り組みができるよう設置し『握力』『腕・肩・背中の力』『体幹の連動』を意識した働きかけを行いました。家庭内容鉄棒は安全基準を満たしている製品(SGマークなど)を選び、高さ調整がしやすく、しっかり固定できるタイプを選ぶと良いでしょう。
実は子供達に我慢力や物事を頑張ってやり抜く方法について縄跳びをお勧めしていますが、縄跳びよりもお勧めなのがこの鉄棒遊びです。前回の記事にも記しましたが、身体を動かしてボディイメージを養うこの鉄棒遊びは、やがて図形力に必要なメンタルローテーションにも良い影響を与えます。よって縄跳びよりも子供の能力を引き出す効果は抜群なのです。よって2歳以降は鉄棒遊びを強化することをお勧めします。しかし縄跳びと違いいつでもどこでも縄一本あればできるというものでもないことが、鉄棒遊びに力を入れることが難しい要因になっています。がしかし縄跳びよりも効果が高い遊びであることを理解してほしいと考えます。
5、ボディイメージを養う
鉄棒の動きは地面から離れて回転したり、逆さになったりと日常生活ではあまりしない姿勢が多いです。そのためボディイメージがしっかりしていると動きをスムーズにでき、恐怖感が減り、正しいフォームを身につけやすいという効果があります。ボディイメージを育てるための方法として、模範演技や動画を見て体の動きを頭でイメージしたり、実際に鉄棒で回る前に動作をマットや床の上で行ってみたり、腕で支える感覚、足を引きつける感覚など体の感覚を意識して動く練習を行うようにします。
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