提案『我慢の魅力』

私は長子なので「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい。」と言われ育ってきました。母は子供3人を育てることに毎日必死でそう投げ掛けたのだと思います。がしかし子供心に損な立場だなと思ったのも事実です。どんな経緯だったか覚えていませんが「我慢の一番になりなさい。」と祖母の言葉に気持ちの切替えができた経験を今はこの上なく幸せなことだったと思っています。私が『我慢の魅力』の虜になったはこの頃だったのかもしれません。

最初に述べておきましょう。『我慢の魅力』とは社会への適応能力、そして自らが究める道へのゆるぎない探求と努力です。

今は『我慢』という言葉をマイナスとして捉えることが多く、専門家の間でも『我慢』という言葉を使わず自制心や自己抑制、セルフコントロールなど言葉の置き換えが見受けられます。しかし私は敢えて自分の体験からお母様方には『我慢』という言葉を用いて話をします。古臭い表現かもしれませんが、我慢は躾と表裏一体であり冷静な親の対応が求められ、親の育てやすい事を強いるのではなく、子が成長していく上で社会へ適応する能力と物事に対する考え方を身に付けることに必要な心の鍛錬だと考えています。

この我慢の重要さに親が気付くのは小学校に入学してからだと思います。先ず宿題をするのに手を焼く場合は幼児期の苦手の克服や毎日何かを積重ねることへの我慢の不足、そして4、5月頃に担任の先生から何らかの指摘を受ける場合には社会性の我慢不足が関係しています。後々親子で苦労しないようにするためには『我慢の魅力』とは何かを確りと考え実践することにあります。

今回は『我慢』を強いることではなく、我慢を魅力として受取る方法を各年齢で説明し紐解いていきます。

その前に『我慢』とは何かからお話いたしましょう。我慢には2種類あります。1つめは『人による強制を強いられる我慢』2つめは『子自ら望むことの実現のための我慢』です。もうお分かりだと思いますが、世のお母様方はどうしても前者を子に強いてしまいます。がしかし後者へと導くことが子育てに於いて最善策。そのためには以下のことを心掛けましょう。

1、子が愛情を感じ育つ環境を作ること(自己主張ができるようにする)

2、美しい躾を確り行うこと(修正ありきの躾ほど苦しいものはない)

3、親がお手本を示すこと

4、子の話に耳を傾けて聞き、正しい判断を下す理性を持つこと(自己主張なのか、躾をしていない所からのわがままなのか、親の注意を引くためのわがままなのかを判断する)

『我慢』を幼児期までに身に付けた子は比較的どんなことも前向きに捉える力があります。そしてこの力は生涯大きく変わることはなく維持しています。これらは気質に関係なく育てることができることを覚えてほしいと思います。アメリカで行われた実験の追跡調査では我慢を獲得した子の社会性や学力が我慢できなかった子よりも高いことが明らかとなっています。

1、忍耐をもって目標達成ができる

2、自信に溢れ自己肯定感が育っている

3、自主性があり、前向きに物事を捉えることができる

4、社会性があり適応能力が高く、自立心がある

さてここからは年齢にあわせた大凡の導き方を記します。何事も小さい頃からの積みあげが重要なのは皆さんご存知だと思います。ただし過ぎ去った事を取返すことができるかどうかは個々の親御さんと子供の向き合い方が非常に重要になり、やや苦戦する対応となることを念頭に置き、適正な発達年齢と段階での対応が必要になります。


0歳・・・乳児に我慢ということの理解はできません。よって親が我慢という設定を作ります。この時期はとても可愛い頃なので、子が欲しいと言えばなんでも手渡したくなります。しかしある時期を迎えたとき、最近は何でも渡せという要求が多くなっていると気付きます。そうなる前に渡せるものとそうでないものを分けて対応します。何でも受入れていた親がある日突然拒みだしたと感じると子は納得がいくでしょうか。必ず小さな反乱を起します。物欲の我慢に近いものです。これはパパのものだから触れません、これはお友達のものだから返しましょうね、あれは危ないものだから触れませんよなどと明確な理由をつけた可不可の線引きで対応します。そしてその線引きの数は多過ぎてもだめなのです。0歳児は受入れの年齢です。親にはその適度さが求められます。


1歳・・・待つという我慢をさせます。その時に必要なのがテーブルと椅子。椅子に座り手を膝に乗せて数秒待つことからスタートさせていきます。これは躾であり、子が自己をコントロールする最初の取組みです。

そしてもう1つは子自ら選び行動することだけを優先させず、与えられることを受入れる「何でもやってみよう」という受入れの姿勢も同時に増やしていきます。

1歳児は色々な行動実験を行います。子が手にするものは所有者がいることを必ず伝えたり、触っていいものとそうでないものの区別、安全かそうでないかを親が伝え続けていきます。予め危険物の撤去や触られたくないものや場所にはそれなりの対応が必要です。何の対応もせずだめだと制止し続けると自己肯定感などが育たなくなります。1歳児は小さな科学者です。その特性を活かせるように環境設定は欠かせないことをお忘れなく。


2歳・・・かなり自我が出てきます。自分の思い通りに事を進めようとしたり、それが叶わないとわかるとわがままを言ったりする行動に出ます。その場合は話を聞き適切な対応を行いますが、気持ちのコントロールができない場合はその場を離れたり、気分転換をはかります。感情の爆発の刺激により言動が悪化するとジレンマに陥ります。できるだけ癇癪という感情は身につけさせないようにします。一度身につけた癇癪はどんなに成長して分別があるような年齢にでもふとした瞬間に出てしまうものです。幼児期の育ちというものは何十年たっても奥底に眠っているのです。

また新しいことへ挑戦する経験をさせ、なるべく成功するようなサポートを行い物事を受入れる心のキャパシティーを広げましょう。これは積極性と関係しており、未知なるものへの挑戦が目標達成へ子を導く原動力になります。できないことに挑戦する子に育てるか、直ぐに諦めてしま子にするかは親のサポートにかかっています。


3歳・・・3歳前後で『我慢の芽』がではじめます。遊びの中でできないことをやり続ける学びをするのがこの頃。早い子では2歳半からその片鱗が見え出します。

また自我の芽生えもあるため子供の話に耳を傾け要求を聞いた上で適切な対応を行います。子供が望むことが許されない場合、人のせいにして事を収める事を絶対にしてはいけません。最も重要なのは、なぜダメなのかと丁寧に理由を説明することにあります。また親の都合でコロコロと対応を変えることも避けなくてはなりません。と同時に親は少しの許容範囲を持っておくことも重要です。例えば遊びを切上げられない場合、切上げるかあげないかではなく、遊びを回数で捉えさせます。「あと1回にする?それとも3回?」と対応しあっさりと実行させる方向へ導きます。絶対に教えてはならないのが『もう1回』これは永遠に続くので要注意です。

またできないことに挑戦するためにスモールステップで取組みを進めます。難しいことに挑戦する自力の学びを少しずつ経験させ自信をつけさせます。


4、5歳・・・社会のルールや決め事が分かる年齢です。自分の行動が周りにどのような影響を与えるのか理解できるようになる年齢です。ただしその経験をさせておかなければ6、7歳になっても自己主張というアクセルを踏み続けることがあります。わがままを主張しない場合であっても第三者的に思考させることが何よりも重要です。相手の立場を理解したり、思い通りに行かないことを理解し自己主張という感情にブレーキをかけることができるようになり、思いやりを育むまたとない絶好の年齢なのです。

また自ら我慢して努力する糸口を見つける年齢でもあります。少し負荷を掛けて達成させ、また先よりも少し大きな負荷を掛けて挑戦させる成長が著しい年齢でもあります。息切れしないように上手に導くためには温かな親の眼差しと心が満たされる言葉がとても必要になります。当たり前にやるべきことを淡々とこなしていると親は勘違いしがちですが、そういうときこそ思いをのせた言葉が必要になるのです。


6、7歳・・・ある程度の社会性を身に付けています。自らの努力や自制心がどのような結果をもたらすかも理解できます。よって少し先の出来事を想像させながら自分の目的や理想を実現できるように導きます。

学習面については頑張りの評価が必要です。できなかったことができるようになったことを認められるだけで満足できる子、頑張りの対価を求める子、目標達成を自ら設定する子様々です。とくに勉強を強いている場合は物やお金を対価に求めます。たとえ勉強をを強いていても目標の実現へと切替えができるよう具体的にその頑張りを言葉で評価してあげましょう。自ら目標を設定できない、実行性に難がある場合は気に掛けてあげることが重要なのです。ご褒美は温かで適切且つ具体的な誉め言葉(認める言葉)が望ましいといえます。


8歳以降・・・弁が立つようになり大人の行動の矛盾にも気付き始めます。頭ごなしの我慢を強いることは返って自己否定の道へと歩ませるため、自身の気持ちをコントロールできるように促します。

子が自身の満足や達成感、ひいては幸福だと感じることができるようにするためには、自身を向上させるための我慢とやり続ける努力の実行性が鍵をを握ります。この前向きな我慢は強い意志や忍耐の形成と挑戦することへのあくなき探求に繋がります。自信の感情をコントロールしながらアクセルとブレーキを上手に使い分ける人に成長するために是非獲得してほしいと切に願います。我慢をさせることには2種類という話をしましたが、可哀想な我慢をさせるのか、前向きな我慢をさせるのかは親御さんの手腕によるものが大きいことを自覚していただきたいと思います。『我慢の魅力』の先には幸福感が待っていると断言しておきます。

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