絵本『まーだだよ』

絵本を楽しむ方法は読み手や聞き手の捉え方で十人十色、その時間の過ごし方も千差万別。

当教室では情感溢れる心育てを意識しながら絵本を親子で楽しむようお願いをしています。生後間もなくから取組みをしている生徒さんで絵本に興味の無いお子さんはいませんが、絵本への働き掛けが弱い場合はどうしても絵本への関心が希薄です。

そのような場合どうしたらよいか迷われているお母様方のために、今回は1つの方法と作品をご紹介。

『絵本は楽しいものである』ていう概念を楽しいと思える遊びの延長線上におくだけでいいのです。今回取り上げるすずき出版の『まーだだよ』はかくれんぼの世界を描いた作品。親が「もういいかい?」と読めば、「まーだだよ」と応える言葉のやりとりでその絵本の世界を疑似体験させます。

では『まーだだよ』の世界観をお伝えしていきます。

ぶたの親子がかくれんぼをしていた2人の世界から、こぶたが隠れる場所を探しながら種を越えた生きものたちに出会い、やがてその遊びは出会った生きものたちも巻き込んだ集合遊びになります。

まるでお母さんと2人遊びをしていた1歳児が、支援センターや公園や屋内遊戯施設で同年齢の子に興味を持ち始める2歳、やがてお友達との関わりを深めて遊びだす3歳、そして子供達自らルールを決め集合遊びをする4歳児の成長を描いているような絵本です。

また隠れ場所を探して誰かに出会う小さな冒険記のようでもあり、そこから生み出される会話は相手に関心を持ち、優しい会話に溢れています。一緒にかくれんぼしよう、遊ぼうと誘い、またそれを受けて今これをしてるんだという子供達が自分の意見を言う初期のコミュニケーションが描かれ、その先にどのようなやりとりができるのかを想像しながら読む思考の余白が子供の成長に大切だなと感じる絵本でもあります。

ほんわかとした内容に加え、ひろかわさんの絵はなかなか日本の絵作家さんではお見かけしないタッチです。絵のどこを切り取っても柔らかい線描、かといって弱い線ではなく存在感溢れる立体描写、登場する生きものたちの生き生きとした表情と大胆なアングル、パステルの淡さと丁寧な光と影、そして風やその場の空気感を漂わせている臨場感がこの1冊に詰まっています。

私が子育て中に出会いたかった絵本です。きっとこの絵本を通して子の色々な表情を見て、声を聞いて心で感じて人生にまたとない喜びの時間を紡ぎ出せたのではないかと口惜しくなります。

こぶたになりきって草を掻き分けたり、穴をのぞいてみたり、お花畑にうずくまってみることのチャンスがほしい・・・影も形も無い孫との時間にこの楽しみを取っておくしかないかな。

絵本を読んでかくれんぼして、かくれんぼして絵本を読む。なんて幸せな時間なのでしょう。絵本を通して至福なひととき、瞬間をお過ごしください。

Baby教室シオ

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