絵本『たぬきの花よめ道中』
町田尚子さんの絵には目力があります。このたぬきの愛らしい表情に惹かれて手にしました。
福音館書店出版の『きつねのよめいり』のような切ない内容なのか、間逆のコメディ的なのか、町田尚子さんの絵なら怪談的内容か、はたまた私の予想を遥か超えてくるのか選択肢を幾つも思い浮かべながら中表紙を開きました。
信楽焼きのたぬきが愛想よく並んでいるようで見ているだけでほのぼのしてきますが、私の空想は信楽焼きに傾き縁起物のたぬきの置物を想像していました。「他を抜く」「太っ腹」「月夜の晩の狸の腹鼓」「たぬきばやし」「証城寺の狸囃子」・・・きっとめでたい物語のような気がして想像はより加速していきます。
予想的中を期待してページを読み進めると、花飾りをつけ小さなブーケを手にした一匹のたぬき。大都会の真ん中にお嫁に行くんだとか・・・大都会はたぬきにとってヘンピもヘンピ、僻地の最果ての地だとか。
森に住むたぬきからすれば都会は僻地なのかと妙に納得しましたが、待てよ、でも人里に住むたぬきも昔からいるぞと思いつつ読み進めました。
たぬきの住む森はどこであろうか?奥多摩、甲府か、千葉の印旛、茨城・栃木・・・どこだろう?
森のたぬきたちは人間に化けて大都会へと嫁入り道中の旅に出掛けます。初めての電車、乗換駅の構内で迷子にならぬよう、新宿か、渋谷か、東京駅が分からないが駅を出て人や車の往来に圧倒され・・・様々な経験をして目的地に到着します。
案内人の先導でついた嫁入り先。満月の美しい晩に、聖なるクヌギの小枝の下を通り人間の姿からたぬきの姿に変わり、手持ちちょうちんをぶら下げて静々と橋を渡ります。
どこかで見たような光景、「月見橋」みたいだな。そういえば皇居に住むたぬきがいることを昔記事で読んだ気がする。そういえば昭和天皇はたぬきの置物を集めていた記憶がおぼろげに・・・。皇居のたぬき一家に嫁ぐあさぎりさん、シンデレラストーリーなんだななんてことを思い巡らせたお話でした。
東京に自由に出掛けられるようになったときには、この絵本を思い出しながら二重橋を眺めてみよう。どこからかたぬき一家がすがたをひょこっと出してくれるかもしれない。
有楽町線桜田門3番出口から降りようか、それとも二重橋前駅2番出口がいいか、暫くは空想の世界で楽しんでみよう。
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