提案『虫捕りの薦め』

地球上で確認されている生物は170万種以上で100万種以上が昆虫と言われています。昆虫は環境に応じて姿を変え、生き方に変化をもたせながら貪欲に生きています。ひたすらに子孫を残そうとする姿の美しさに人間も学ぶべき事が多いと常に感じています。今の季節だからこそ楽しむ事ができる虫捕りの提案を行います。


この仕事をしていると残念ながら虫が苦手という親御さんが一定数おられますが、お子さんと虫捕りに興じている間に克服されている方もおられます。ビジュアルが苦手という方も神秘的で尊い虫の世界や命の育みを知るとグッと虫との距離感が縮まります。虫に対しての見方が変わりこれまでにない価値観が生まれるのかもしれません。今回は教室に通う2代目の虫博士の生徒さんに写真提供いただきました。イキイキと目を爛々と輝かせじっと観察するその様子をご覧ください。

今回は子供の発達を3つの視点『虫発見の発達』『虫捕り』『虫の飼育』に分けて虫捕りの薦めを解説していきます。

1、虫発見の発達

さて子育てに於いて『虫に関心を持たせましょう』と私が常日頃から皆さんにお伝えしているのは子供の発達に良い影響を必ず与えるからです。

虫に関心を持ち行動するのは1歳のお誕生を迎え、よちよち歩きからとことこ歩きに移行した頃です。アリをじっと見つめて動かなくなったという話はよく耳にします。実はハイハイをする少し前から埃や小さなゴミを見つけては摘むということを乳児は繰り返します。その小さなものに関心よよせる発達の種まきの上にアリやカタツムリの観察が積まれ、視覚発達を中心としたじっと見ることと集中力が養われるのです。

そこで考えてみて下さい。お母様が虫嫌いであったり、虫に関心が無ければ子供を抱き上げてその場を離れる行動を起こすかもしれません。しかしお母様が虫が好きで知識があったら、子供の観察力に共感し言葉掛けも自ずと豊かなものになるでしょう。

母親の関心の違いである前者と後者の違いは子供の発達に大差をつけてしまいます。このことについて知らないと知っているでは対応が変わり、子供の重要な発達をしっかりと受け止め実践することがいかに大切であるのか押さえてほしいと考えます。

昆虫の存在は動物よりも身近で虫を見つけようと少し目を凝らすだけで何かしら見つける事ができます。1、2歳の子供には小さな虫をじっと観察させることをとことんさせます。虫を手に載せたり、虫を触らせようとすると虫の本能である逃避行動に驚いたり、虫が足でしがみ付いたりすることで怖い経験をさせることになり、かえって虫嫌いにさせてしまうので控えて下さい。

是非1歳から小さな虫に関心を持たせ発見することを楽しんで、観察する土台であるじっと見る事、そして集中してするという経験をたくさんさせて下さい。

2、虫捕りの醍醐味

子供が虫捕りを楽しむ事ができるのは早くても3歳です。初めての虫捕りは虫のすばしっこさに驚くことでしょう。そして捕まえようと必死になり、捕まえた時の喜びを味わうことで虫捕りに対する意欲が生まれ、もし捕まえられなくても今度こそ捕まえようと挑戦する力をつける事ができます。虫も必死で逃げる、だから子供も必死に捕まえようと思考しながら行動に至るのです。

子供達が虫を捕まえたら次にすることは観察です。この虫の名前は何だろう?どのような顔や姿をしているんだろう?色はどうかな?どうやって動くの?などと興味津々で見つめることになります。これがありのままを見つめる観察力になるのです。


同時に、図鑑を片手に種類や体の成り立ち、食べ物はなんだろう?羽をどうやっつて広げて飛ぶんだろう?と探究心はとめどなく湧き、図鑑と生きた昆虫の間で目を往復させながら観察と思考力を働かせて多くの学びと発見を繰り返していきます。このような経験を多く積ませることで様々な知識が上書きを繰り返し溢れる言葉として表面化し、一度知る喜びを知った子供はあらゆるジャンルにも興味を持ち出します。物知りだねと言われる人の共通点はこのような子供の頃の観察・思考・分析などが源になっている場合が多いものです。

生徒さんも最初は男児が憧れを持つ恐竜の世界や虫の世界にはまり(両方とも現在進行形です)、今は宇宙に興味を持ち出しています。夏休みのレッスンにも宇宙を取り入れる予定で彼の興味を広げるお手伝いを行う予定です。このように点であった興味や好奇心が一本の線になり子供の内面も知識も相乗効果で急激に成長するのです。

私たち親ができることは子供の興味や好奇心を育てる環境を整えてあげることです。そのためには苦手なものであっても受け入れる事が必要だと感じます。また虫取りは男児のためのものではありません。女児であっても虫に触れる経験をさせるべきだと考えます。私が虫好きなのも父が連れて行ってくれた自然に触れる経験が根底にあります。それを土台に我が子育てにも活かせたように思います。

そして母が種蒔きをしてくれた音楽や美術もまた私の子育てに活かされました。我が子が虫捕りをした後にその姿を描かせ工作させ、童謡で虫の替え歌を作ったり、詩を書いたりと自由な発想で豊かな広がりを表現させることができました。虫捕りをいろいろな形に変化させる事ができるのも夏の醍醐味であり夏休みの時間的余裕かもしれません。

虫捕りで重視したことは捕まえたら必ずリリースすることです。無闇矢鱈に家に持ち帰らないこともその虫が生きている環境を保持するという重要な考え方です。しかし探究心と調べ学習が進み虫の命に責任が持てそうな段階に入ると飼育することを子供は望みます。これもある程度必要なことなので必ず元いた場所に返すという前提の下行います。子供に認識させるのはやはり自然界を壊さないということで、その自然の崩壊は必ず私たち人間の生活にも直結する地球的問題だと教えることも親の責任かと考えます。

3、虫の飼育の醍醐味

虫の飼育は5、6歳が適しています。私も経験があるのですが、虫を飼育するには食べ物となる生きた虫を与えるという自然の厳しい一面を直視しなければならない洗礼も受けます。その弱肉強食や命をいただくことの意味をしっかりと理解出来るのがその年齢です。

小さな昆虫の世界から学ぶ生命の尊さや自然界の摂理を知り実体験することは、子供達が自らの命を見つめ直す機会を得て命の尊厳に気付き、延いては自分以外の命を尊重することにも繋がる重要な学びなのです。

昨今はカブトムシやクワガタ、鈴虫などが夏になると販売されるようにもなり、育て卵を産ませて幼虫から成虫にするために責任もって虫の世話している生徒さんもいらっしゃいますし、カマキリを飼育しそのために草原でバッタを捕獲している子もいます。彼らの話を聞いていると責任を持って飼育し、命についても確りとした意見があること誇らしく思います。

カマキリを飼育している生徒さんとは、カマキリが水に飛び込む理由となるハリガネムシについて深い話ができ、虫の世界が子供の成長をこんなにも大きく逞しくさせるんだと実感でき嬉しくなりました。


虫と子供の発達の関係性を3つの視点から述べてきましたが、意気込んで行う必要はありません。庭やご近所の身近な場所から虫探しを無理なく始め、公園や遊歩道、幼稚園や学校の行き帰りや散歩の途中に虫の住む環境に目を向けたりしながら、休日に少し遠出して田舎や野原や雑木林、花畑、川など自然の中に身を置いて探してみるのも良いでしょう。

我が家にはいろいろな虫が住んでいます。先日の台風前にはなぜかトノサマバッタが風に吹かれて飛んできたのか数えてみたら7匹。今朝も朝の6時前からセミが鳴き始め、カナブンがブンブンと庭を飛び回り、アゲハ蝶が優雅に飛んでいます。観察をしたいというのであれば可能な限り我が家でのリリース限定で捕獲しておきます。遠慮なく申し出て下さい。

虫捕りの醍醐味は虫の世界から人間が何を学ぶ事ができるだろうかだと考えています。

自分の弱さや強さを知り、戦い方や身の守り方、環境に適応する能力の高さ、生き抜くことの貪欲さ、子孫を残すために命を全うすることなど現代人が忘れたものが虫の世界には凝縮されているように思うのです。

また知れば知るほどまだまだ知らない事があったのかと新たな発見に高揚する自分がいます。この高揚感を小さな虫取り名人の子供達が味わっているのですからそれは物凄い成長を遂げるのは当然だと実感します。この成長を男女問わず子供達には経験してほしいと考えます。

今朝我が家の愛犬がキバレンギョウにいるセミに向かって吠えていたので、昔取った杵柄でセミを手掴みしてしまいました。セミはメスよりも捕まえることが難しいのでこのオスの腹のベストを見ると「ヤッター」と朝から達成感で満たされ童心に戻りました。

子供達が自然界と一体化できる経験がこの沖縄には溢れています。是非とも今年の夏は虫捕りで充実した時間を過ごしていただきたいと思います。

Baby教室シオ

ほんものの学び。今必要な学び。乳児期から就学期までを総合プロデュースする沖縄初の乳児のためのベビー教室です。