提案『乳児の反復動作の意味』
原始反射の把握反射には私たちが想像している以上に多くの情報を得て、乳児なりに「これはなんだろう?」という皮膚から得た刺激を思考することを行うようになります。把握反射が消滅する生後3、4ヶ月が脳育ての第一段階になりますが、この反射を極めるか否かにより物事を理解する思考の質やスピードが違ってきます。また原始反射への働きかけをしたからそれで安心ではなく、その後の思考への刺激を反復させることで更に脳への情報と刺激を送ることになります。子供の脳は手から得た刺激をじっくり、ゆっくり処理します。生まれた直後からその情報処理と思考を繰り返せば、刺激の少ない中で育つ場合とはやはり思考の反復回数が大きく異なります。よって原始反射の取組みはかなり重要ですが、その後の子供の何度も同じ事を繰り返す反復動作をいかに行わせるかが重要といえます。今回はその反復行動の意味をお伝えします。
小さな子供たちが何度も何度も同じ事を繰り返している様子を見たことがおありになるでしょう。その繰り返しに気づいていないという方はもう少しお子さんを観察する時間を僅か数分でも良いので目を離さず観察してみて下さい。
今回はおもちゃを箱の中から何度も出し入れしたりを繰り返している様子を中心に話を進めていきますが、子供たちが根本的に何を楽しんでいるのか、自らの行動から何をどのように感じているのかなどについても話を進めます。
乳児から2歳前後までは特に同じ事を何度も何度も繰り返している行動をとります。一見同じ事をとているように大人は見てしまいますが、実は子供たちは別の視点で行動を堪能してい流場合が多いのです。
1、「これなあに?」のものを発見
初めて入れこを見たのであれば興味からその入れ子に手を伸ばして確認します。その入れこの手触り、重さ、固さ、香りなど物の自体の情報の他に、入れ子の中に手を入れて奥行きを、重ねて積めた積めない、入れ込んでものの大きさや入る入らないなど、その入れ子から行動を起こした場合に得る情報を付加して思考をし始めます。
また長らく遊んでいられる子とすぐに放り出してしまう子の違いは原始反射を受けた子供とそうでない子供の環境の違いやおもちゃが煩雑に置かれているのか、遊びに集中できる状態なのかなどその場所の状況にも左右されます。原始反射に働きかけをし他に越したことはありませんが、その機会を得られない場合でも手から得る経験をどのくらい積ませるかにより集中力や思考力、遊び時間に差が出てくるのでしっかりとさせることを意識することが重要です。
入れこの中に何かしらものが入っていれば更に「これはなんだろう?」と探究心を持って物に触れようとする意欲も育っていきます。
2、「あっ、できた」の達成感
子供自身からの行動でものを入れたり出したりするファーストコンタクトで「出すことができた」「入れることができた」と達成感を味わうことができたら何度も「できた」を確かめるための行動を繰り返します。この時に褒めてあげることも共感力を育てることになり、思う存分親子で楽しい時間を送るようにしましょう。またこの共感力を求める段階を通り過ぎると集中力を伸ばすために、子供自身が褒められることを求めず黙々と繰り返し遊ぶようになります。この時にはどのように遊んでいるのかを確りと観察するだけで十分です。すると何をどのように感じているのかを見極めることもできます。逆に子供が求めていないのに褒めることを行えば集中していることを中断させることにもなるので注意しましょう。
3、「次は、こうなるんじゃないかな?」の予測
同じ行動を繰り返すことにより成功体験から「次はこうなるだろう」という予測を立てて行動します。するとその遊びを安心して行うことができ、繰り返すことで勤勉に物事に取組む土台を知らず知らずの内に培いつつあります。幼児期になると忍耐力を試される場面が多々ありますが、何度も同じ事を繰り返す経験を持っている子は反復行動と共にに忍耐力を備えています。その一方反復行動の経験が希薄だとどうしても忍耐力に欠けてしまい、根気よく取り組めなかったり、すぐに諦めてします投げ出してしまうこともできないことをできるようにしようとするチャレンジ精神も育たないこともあります。また数年後に学習がスタートして見直しや確認が苦手な場合も予測の確かめというこの遊びが不足している可能性があります。
4、「こうしたらどうなる?」の実験の開始
同じ結果を得る経験を遊びを通して行った子供が次に何をするかというと、同じような遊びの中でも小さな変化を発見していきます。その変化を察知して「こうしたら同じような結果になるのかな?」「やっぱり同じになった」、「でもこうしたら同じになるのかな?」「あれっ?同じじゃない。も一回やってみよう。」「やっぱり違うな?どうしてなのかな?」などと科学者と同じ脳の使い方をしているのではないだろうかと研究者たちがその証明を進めていると言われています。実際に子供たちの行動を注意深くみていると正にそうであろうと実感しています。
これは私の経験値で感じる事ですが、乳児期のこの反復遊びを繰り返している子供達の理解力や情報処理をするスピード力を大人が感じるのは学習が進んでからです。親御さんが一度物事を伝えたらすぐに理解してくれると感じる場合は乳児の頃に反復行動をしつこい位していたお子さんで、一方何度も同じことを伝えても理解が難しいなと感じる場合には、この乳児期の反復遊びが希薄な場合が多く、ものの理解力にも深く関係していることは間違い無いと感じます。
5、自らの好奇心を満たしながら遊び着地点を考える
遊び方にもさまざまです。大人しく出し入れを楽しんでいる子供もいれば、乱暴にものの出し入れをしている子もいます。それぞれ好きな遊び方はあるものですが、ものを乱暴に扱う壊す勢いの子供達の共通点は大きな刺激を得たいという欲求が関係している場合が強いと言えます。大きな音の刺激や大きなものの動きを楽しみたいというダイナミックさをどう捉えるかということになります。このような遊びをしてもお片付けに誘導したり、物には心がある事を伝えて優しく扱う心を育てることに着地させるようにすることも重要だと考えます。
また乳児は建設的な遊びではなく、自らの手・目・耳・口・鼻からの五感から得られる情報を頼りに自発的に脳をフル回転させて好奇心を満たしながら実験をしています。その道を通ったのちに大人が考えているような遊びに移行することができるのです。ですから好奇心を満たしながら遊ぶということが十分に行えたかどうかが、その子供のものの捉え方や考え方などに深く影響していくのです。どうぞ乳児期の反復遊びをたくさんできる環境を整えて、建設的な遊びをさせようとするのではなく、子供の本能に沿った好奇心を満たす遊びを促して下さい。
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